見出し画像

2024年春・東京に行ってきた話①(上野篇)


一.動機

 4月28日の日曜日、私は東京に行った。主な目的はM3 2024年春の参加であったが、そのついでに上野の科学博物館にも寄る事にした。
 実は半年前にも一度科博に行った事があるのだが、その時は空腹で気が狂いそうになっていた上、西洋美術館(科博のすぐ近くにある)に行く時間も取る必要があったので、あまり注意深く展示物を見る事が出来なかったのだ。今回は科博に行く前に、手提げ鞄の奥底でぺちゃんこになった(???)ランチパックを貪り、空腹の要素を潰しておいた。二度も同じ失敗はしない。

 M3会場でほぼボロ雑巾の様なランチパックを摂取したのち、電車やモノレールを乗り継いで上野駅に移動した。上野駅は広いので、出口が分からなくなって少し迷子になった。

二.ゲーセン

 上野駅に着いた後、先ずはゲームセンターに寄る事にした。上野駅周辺にはCHUNITHM(セガの人気音ゲー。筆者はこのゲームのレーティングを上げる事を第一目標にしている)を設置しているゲームセンターが2つある。それがタイトーステーション上野アメ横店とアドアーズ上野アメ横店である。いずれもアメ横の中にあるゲームセンターである。
 アメ横はまるで異世界の様であり、外国人がやたら多かったせいか、日本という感じはあまりしなかった。アメ横の門に設置された電光掲示板が胡散臭さを加速させていた。

 さて、上野駅から少し歩いて、タイトーステーション上野アメ横店に到着した。このゲームセンターには3Fに音ゲーコーナーがある。館内の階段から3Fに移動しようとすると、2Fのプリクラコーナーを突っ切る必要があり、そこでの目線が非常に痛いので、外の階段を使って3Fに行く事を推奨する。
 上野のタイトーにはCHUNITHMが1台しか無い。「都会のゲーセンにはCHUNITHMが10台くらいあるだろう!」という誇大した想像をしていた私は驚いた。大宮駅周辺のゲームセンターには何故かCHUNITHMが6台(タイトー)+9台(大宮ラクーン内のゲームセンター)あるので、感覚が麻痺していた。
 私が3Fに来た時には、既に先客が居た。多分中学生くらいの歳であろうか。ボカロや東方アレンジの楽曲を中心にプレイしていて、NEEDY GIRL OVERDOSEのマップを進めていた。その間やる事も無いので、私はTwitterをイジイジしていた。
 そこから暫く時間が経った。「そろそろこの子のプレイが終わるぐらいの時間かな」と思い顔を上げると、まだその子はCHUNITHMをやっている様だった。「そんなに長い曲やってたっけ?」と思い画面を見てみると、マップ選択をしている様だった。読者の中でCHUNITHMのシステムをご存知無い方も居ると思うので説明すると、CHUNITHMの1プレイは概ね「マップ選択」→「1曲目」→「2曲目」→「3曲目」→「総合リザルト(結果)の確認」といった順番で進行する。これを踏まえると、彼は私が裏で待っているにも関わらず、順番をこちらに譲る事無くCHUNITHMのプレイを続けたという事になる(連コ)。
 私の見立てでは、恐らく彼はこちらに気が付かなかったのでは無いかと思う。CHUNITHMをプレイし終わった後には、裏を見て列が出来ているかを確認するものであるが、その時の彼は母親と電話をしていたので(彼の声は甲高く、そこだけ何となく耳に残っている)、気を取られて裏をチェックするのを忘れたのだろう。不幸な事故である。連コ後暫くして彼の母親がやって来た。☆母親見守り音ゲープレイング☆の時間である。それにも関わらず脳漿炸裂ガールを選曲した彼の胆力には感服した。幾ら何でも逞し過ぎる。
 そのプレイの後に、やっと彼は私に順番を譲ってくれた。多分、本当にこちらに気が付いていなかったのだろう。

下手くそ

 1回だけタイトーでCHUNITHMをやった後、2つ目のゲームセンター・アドアーズ上野アメ横店に移動した。建物の面積はタイトーと変わらないが、階数はアドアーズの方が多い(4F+地下1F)。音ゲーコーナーは最上階にある。登る時にはエスカレーターがあるので便利である。尚、何故か3F→4Fのエスカレーターは無かった。悲しい。
 アドアーズにはCHUNITHMが2台ある。タイトーより1台多い。尚、音ゲークソ強人(つよんちゅ)が割と多いので注意が必要である。実際、私が来た時にもレーティング17.00超えの化け物が2人居た(現在のCHUNITHMレーティングの理論値が17.43らしいので、相当強い事が分かる)。怖かったので1回だけプレイしてすぐ退散した。

三.科博(日本館)

 さて、ゲーセン2箇所でCHUNITHMをやった後、科博に向かった。科博とゲーセンは上野駅を挟んで概ね真反対の位置にあるので、膝へのダメージは相当なものであった。道中で階段が多かった記憶がある。
 科博には何度か行った事がある。最初に行ったのは中学の時だったと思う。その時の記憶はほぼほぼ無く、残っている記憶といえば地球館のレストランで班の他の子の野菜を代わりに食べてあげた事くらいしか無い。
 最初に日本館の展示を見て回った。日本館は古風な建築物であり、観察していて非常に楽しい。展示物は生物系のものが多いが、殆どの説明が易しく、私の様な高校で生物基礎に苦しんでいた人間でも問題無く読めるものが多い。

 印象に残ったのは「水力学的骨格」とクマの剥製である。「水力学的骨格」は水圧を利用して自身の身体に硬さを与えて体型を保つ方法である。言い回しが格好良い。後でGoogleで調べてみた所、水力学的骨格を応用したシステムの論文が大量に出てきた。クマの剥製は遠目から見ると可愛らしいが、いざ近くで見てみるとクマのサイズに驚く上、腕を見ると鋭利な爪が付いている。当然、「こいつに素手で勝てる訳無いな」という気持ちになる。科博に行く機会があったら見に行くと良い。

四.科博(地球館)

 日本館の展示をある程度見終わったので、次に地球館に入場した。地球館は比較的新しい建物であり、こちらも観察していて楽しい。展示物は恐竜の全身骨格など大規模なものが多く、種類も地球館の方が多い。但し、トイレの場所が人気の無い長い廊下を経た場所にあるので、行く時に非常に不安になる。この廊下で他人に奇襲されたらまず助からないだろう。
 1F・2Fには地球史や科学技術の展示がある。3Fには剥製の展示の他に実験室や子どもが遊ぶ用のスペースがある。自分に子どもが出来たら一度は訪れたいエリアである。
 地球館では、実は屋上に立ち入る事が出来る。屋上にはテラスが設置してあり、高所特有の強風がやたら吹き付ける事以外は和やかなムードが漂っている。

屋上。東京スカイツリーも見える。

 1~3Fの展示を見終わり、そろそろ帰ろうと思ってエレベーターに乗って、階数ボタンに目をやった所で、ある事に気が付いた。



「えっ……!? 地下あるの地球館って……!?!?!?」


 そう。実は地球館には地下があるのだ。尤も、普通の人はエスカレーターや案内から地下の存在くらいすぐ分かるだろうが、注意力の無い私は地下の存在に今の今まで全く気付いていなかったのである。そうなると、流石に素通りして帰るワケにいかず、エスカレーターに乗って1Fから移動する事にした。
 記憶に残っているのは地下3Fの展示である。地下3Fには物理学中心の展示が多くある。歴代日本人ノーベル賞のコーナーもあり、そこで梶田隆章氏の姿も確認した。弊学の偉人の一人である。展示物の説明は割と難しく、理解が大変であったが、大学で物理の科目を取るモチベーションは大いに湧いた。何とか頑張って卒業までに物理学の副専攻を取りたいという気になった。

五.ゲーセン(再)

 さて、科博の展示を見終わった後、急いでアドアーズに向かった。実は科博に居る最中、アドアーズに同学年の知り合いが襲来していたらしく、彼のツイートから判断するにまだアドアーズに居る様だった。折角だし一緒にCHUNITHMでもするか(マッチング)と思い、道中で軽い迷子になりつつアドアーズに到着した。2度目・約3時間振りのアドアーズである。以下、同学年の彼をTとおく。
 CHUNITHMのコーナーには既にT・他の音ゲークソ強人(つよんちゅ)が居て、そこに私が加わったので、計3人になった。ここで困ったのが、私とTが同時にCHUNITHMをプレイする時間が作れない可能性がある事である。この悪い予想は当たってしまい、最終的にCHUNITHMでTとマッチングをする事は出来なかった。唯一マッチングのチャンスがあったが、私がマッチングのやり方を全く分かっていなかったので、失敗に終わった。
 途中でもう一人の音ゲーマーがCHUNITHMコーナーに来た事でマッチング実施が絶望的になり、「CHUNITHMのマッチングは諦めてmaimai(別の音ゲー)に移動するか」という話になった。幸いmaimaiは2人プレイが非常にやりやすい仕様なので、無事にセッションする事が出来た。

FULL COMBOではあるが、精度が悪過ぎる

 maimaiプレイ後、アドアーズを後にし、Tと解散した。時間も20時を過ぎていたのでこのまま上野駅を出発して帰るだけである……



と、思われた。





六.スマホを拾いし我らが神聖なる長髪イケメンを讃えよ

 アドアーズを出て、Twitterの確認の為にスマホをバッグから取り出そうとした。しかし、幾ら探してもバッグにスマホが無い。「ズボンのポケットに入れてたっけ」と思いポケットを確認したが、そこにも無い。




スマホ、落とした……?????????



 まずい。非常にまずい。スマホが無いと色々と終わる。これはまずい。これ以上にまずい事はそうそう無い。私は急いでアドアーズに引き返し、エレベーターに入り、血走った目で4Fのボタンを押した。
 4Fに着いてすぐ、maimaiへの最短距離を早足で歩行した。自分が先程プレイした台を探してみたが、そこにスマホは無かった。そして、頭に最悪の可能性が過った。





もしかして、盗まれた……!?!?!?!?!?!?!?!?!??!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?!?!?!?!!?!?!




 流石にその可能性は無いであろうと信じたかった。しかしスマホは見つからない。スマホが無いという事は、即ち「死」を意味する。これはまずいと思い、下の階のインフォメーションセンターに駆け込み、店員さんに助けを求めた。

桐壺「すみません……3Fでスマホを失くしてしまったんですけど……(超絶早口)」
店員「この階でですか……?」
桐壺「えーと、……あっ違いました4Fです(超絶早口)」←階数をミス。かなり記憶が混濁している。
店員「スマホですか……えーと、スマホは……届いて…ないですね……」
桐壺「…そ、…そ、そうですか……………………………(終わった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ワイの人生、終了!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 来世はきっと住宅街を跋扈するクソ汚(お)ゴキブリでしょう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

 この様な感じで死を受け入れようとした、その時である。一人の長髪イケメンが颯爽とインフォメーションセンターに現れた。その手にはスマホ・ゲーム用のカード・学生証があった。驚いた事にいずれも私のものであった。
 私には、彼が仏に見えた。地獄で仏に会った様なものである。彼はスマホ類を私に手渡し、颯爽と去っていった。私はここ数年で一番心の籠もった「ありがとうございます……!!!!!!!!!」を言った。

 こうしてスマホも無事に見つかり、何とか上野駅から自宅に帰る事が出来た。帰りの電車で長髪イケメンの事を思い出したが、気持ちがある程度落ち着いたその時ですら、彼は記憶の中でしっかりイケメンの顔をしていた。顔がイケメンで心もイケメンなのだから、彼女が30人くらい居ても全くおかしくない。暫く彼に対する感謝で脳内は持ち切りだったが、程なくして、その日に炭酸飲料を3本飲んだ事に起因する激烈な胃痛に苦しむ事になった。大馬鹿である。
 皆さんも、スマホの紛失と炭酸飲料の飲み過ぎには気を付けよう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?