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笑顔の連鎖が生まれる「子ども食堂」を応援しよう!

東海村の民間団体として唯一の子ども食堂「はぐもぐ」は2022年夏に発足したばかりのボランティア団体が運営しています。
今回の取材では、活動内容やボランティアならではの苦労、子どもたちへの思い、そして理想とする子ども食堂のあり方を語っていただきました。

今回の取材に協力してくれた、左から三浦さん、団体の会長でただ一人の男性会員でもある根本さん、副会長の山川さん、寺門さん。笑顔の絶えない皆さんです。

きっかけは子ども食堂の「ボランティア養成講座」

「2018年11月に『東海村社会福祉協議会』(以下社協)主催のこの講座を聞きに行きました」

まず、会長の根本伸次(ねもと・しんじ)さんが団体設立までを語ってくれました。

根本さんはご自身が住んでいる地域の民生委員(2022年11月末ご勇退)。高齢化が進んでいるこの地域で、高齢者対象の食堂の立ち上げも当時進めていて、子ども食堂にも興味があったそう。
講座自体のフォローアップは2022年初夏まで30回弱開かれ、それに参加している中で社協の手から離れて子ども食堂運営のボランティア団体として独立することを後押しされて、どうすれば形になるのか悩みながらも独立を決意したとのこと。
副会長の山川さんも、講座に参加しながらも子ども食堂の立ち上げは課題が多く、実現せずに終わるのではないか、といつも思っていたそうです。

しかしながら皆さんの情熱と努力が実を結び2022年7月31日に団体を設立、当初40名ほどだった参加者は17名に減りましたが、何とかスタートを切ることができました。

2022年12月に東海村の石神コミュニティセンターで開催した子ども食堂の調理の様子。料理上手の皆さんが手際よく作業を進めていて動きに無駄がありません。お見事!!

「はぐもぐ」に込めた思い、子どもたちが落ち着ける場所を目指して

次に独立後の活動拠点と活動内容について根本さんに伺いました。

「現在の東海村観光協会長が子ども食堂に理解があり場所を貸していただきました。ただ、他の団体さんと共有しています」

「今はまだ回数は少ないけれど数か月に1回、村内のコミュニティセンターを回りテイクアウトで販売、そのほか社協からの要請があればイベントなどに出店もしています。当面の目標はこの場所で子どもたちに食事をしてもらうことです」

続いて山川さんが子ども食堂への強い思いを語ってくれました。

「この日は子ども食堂をやっているから行こう!と子どもたちに思ってもらえる、好きなものを私たちが作ってあげられる、そんな落ち着ける場所にするのが一番だと考えています」
一緒に取材を受けてくれた三浦さん、寺門さんが大きくうなずきました。

「はぐもぐ」は山川さんが名付け親。「母親が優しくハグをするように子どもたちを慈しみたい。ご飯をもぐもぐ食べて元気に家に帰ってもらいたい」そういう気持ちが込められているそう。

この日のお弁当のメインはチキンピカタ。そのほかのおかずもすべて手作りで彩りもよく愛情もいっぱいです。80食を約2時間で作りました。

お金がない!今は皆さんの寄付が頼りです!!

ボランティアだと運営資金を集めるのに苦労するのではないかと考えてしまいますが、実際はどうなのでしょうか。

「販売価格は1食200円と決めています。資金は一人2000円の年会費、社協には助成金の申請をしています」と根本さん。
また、収入としては個人やライオンズクラブ、観光協会などの団体から寄付もあり、総額では10万円を超えたとのこと。

寄付はお金だけではなく、知り合いの農家さんからは野菜、社協からは米の寄付など現物もあるそうで、皆さん口をそろえて「本当にありがたい話ですね」とおっしゃいます。
ただ、肉やテイクアウト用の容器、不足分の野菜なども購入しなければなりません。

「物価高なのでオーバーした分は寄付金や助成金を当てています。お金がなくても来年3月までは200円で販売したい。寄付が頼りです」

団体の発起人でもあり代表でもある根本さんをはじめ、皆さんは多くの寄付に感謝しつつもまだまだ資金が不足しているこの状況について、いろいろ思いを巡らせていました。

食材の寄付についても、ジレンマがあるといいます。
寄付をしてくれる人を探さないといけない一方で、提供者が見つかったとしてもすでに告知している料理にその食材が適していないということも起きています。寄付をいただくのに食材が無駄になってしまうというジレンマは運営として難しいところ。このあたりは善意の気持ちを受け取りつつも、寄付者にも活動を十分に伝えて理解していただく関係をつくらないといけないと考えているようです。

また、運営するにあたっての問題は資金のことだけではありません。活動が始まったばかりなので、様々な壁にぶつかっていました。

具体的には、
・独立して全ての活動を自力でやらなければならないのにわからないことが多い
・人手不足。例えば、チラシの配布時、食材を運ぶ際やテント設営時の力仕事など
・知名度アップの方法。現在はまだ関係者が多く、もっと多くの人に活動を知って欲しい

やはり相当な苦労と多くの手間がこれからもかかりそうです。

販売開始前から並ぶ人もいて80食がほぼ1時間で完売。クリスマスに近いこともあり、この日は子どもたちにお菓子のプレゼントも。子どもたちの喜ぶ笑顔がたまりません!

うれしいことはみんなの笑顔。そしてこれからの目標は……

それでも皆さんとても明るいのです!!取材中も生き生きとして笑顔が絶えません。聞けば皆さんは他のボランティアを掛け持ちしていて、いつも何事にも精力的に活動されているご様子でした。

そんな皆さんに、子ども食堂を運営するうえで心がけていることや、うれしいと感じることを聞いてみました。

「苦しいかもしれないけれど、笑顔で楽しく。スタッフ同士で考え方が違ったとしても優しく、仲良く」「配ったチラシを見て来てくれたらうれしいし、実際すぐに売り切れる。そしておいしかったよと笑顔で言ってもらえると2倍も3倍もうれしくなります」

皆さんが心がけていることが利用する人たちにも伝わって、笑顔の連鎖が生まれているようです。

最後に、これからの目標や理想を伺いました。
「飲食店で売れ残った食品を必要とする家庭が受け取ることができる事業を社協が行っているので、それに登録している家庭やひとり親で頑張っている家庭に、子ども食堂の『割引券』等を配布することも考えています」と根本さん。

「今はテイクアウトだけなので誰でも利用できますが、ゆくゆくはひとり親家庭や両親が働いていて一緒に食事ができない家庭の子どもたちと一緒に食事をしたり話しをしたりできるようにしたいです。年を取っている暇はないですね」と、理想の子ども食堂について皆さん元気いっぱいの笑顔で語ってくれました。

まだまだ課題はたくさんあるはずですが、理想の子ども食堂がすぐ近くの未来に実現できる、そう思わせる圧倒的なパワーと情熱を今回取材した皆さんから感じました。
この記事を目にして応援してくれる人が増えると、彼らの新たな力になることは間違いなさそうです。

あっという間に後片付けも完了して休憩の時間です。皆さんやり終えた充実感とともにほっとした様子。食材は無駄にならないように使ったり、次回まで保管したりします。

取材先データ
こども食堂はぐもぐ
お問い合わせ先:029-282-8885


▼取材・執筆担当者

塩田ひとみ/インタビュー・執筆・写真
茨城県東海村出身、在住。
2022年夏に社会人生活のほぼすべてを過ごしていた東京から東海村にUターン。
昔から変わらない東海村の奥深い魅力を再発見しつつ、今の東海村の魅力や関わっている人のパワーを感じたい、という思いで「T-project/スマホクリエイターズLab.」に参加。東海村といえば「原子力」、だけではなく農業はもちろんのこと、移住や観光などにも可能性があるのでは、と日々妄想中。

柴田亮子/インタビュー
静岡出身、ひたちなか市在住。ライター/編集者と子育て支援センターの広報スタッフを兼業。茨城といえば、納豆と水戸黄門…大好きな干し芋だけを楽しみに、地元から移住してきて早10年。縁あって茨城県内の隠れた魅力を発信するショートトリップの企画・運営に携わり、茨城の奥深さに魅了される。まだまだ知らない茨城を知りたい!魅力を伝えたい。いろんな人と繋がりたい…と「T-project/スマホクリエイターズLab.」に隣町より参加中。


藤田慎司/写真

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