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【オフィスラブ27選】恋をキリトル140字の物語 3

オフィスラブ 27選

◇1
ビルのひさしで雨宿り。
主任が飛び込んできた。
「これはやまんな。タクシー呼ぶか。ついでだからウチくる?」
「はい」
即答した後真っ赤になる。
ついでって何よ。行く理由なんてないじゃん。
だけど萎れた子犬みたいな神妙さで隣のシートに乗り込みます。
こんなチャンス逃せない。
あなたの心射止めたい。

◇2
ポチを探して5時間経過。
公園で部長とポチを発見。
部長の膝から飛び降りて尻尾ふって私に飛びつくポチ。
「なんだお前の犬か。連れて帰ろうかと思ってたとこだ」
「散歩の途中で首輪抜けちゃって」
「逃げ出したのか。やんちゃだな」
目を細めてポチを撫でる。
鬼と呼ばれる彼の優しい眼差しに心臓とくん。

◇3
「いかん。在庫が減らん」
ぶつぶつ文房具を片付ける主任。
「手伝います」
横に立つ私にぎょっとした顔。
「必要ない」
「遠慮しなくていいですから。ああっ!」
手前の箱に手を伸ばした瞬間
箱のタワーが一気に崩れ今までの作業が水の泡。
「お前は疫病神か」
「いいえ恋の女神です」
呆れ顔にごめんねのキス。

◇4
火事で焼け出され愕然としてたら
「うち来るか?」
と鬼上司。
「主任私の事好きなんですか?」
「は?」
「だって普通そこまでしないでしょ」
「まーな。お前はいつも話が早い」
ため息の後ににやりと笑う。
「もういっそ、籍入れる?性格もお互い知り尽くしてるし」
怖いけど本当は好き。
災い転じて恋となす。

◇5
泣きながら飛び込んだ喫茶店で主任と遭遇。
「どうした?」
「失礼します」
心配そうな彼を振り切って洗面所で処置し涙を拭く。
「座れ」
出ていくと主任が隣の席をポンポンと叩く。
「嫌な事あった?」
「いや、その…」
コンタクトズレてメイク崩れた顔を見られたくなかっただけなんて
言えないような空気感。

◇6
かつての部下に街中で遭遇。
「お久しぶりです!元気ですか?」
子犬みたいにじゃれつく感じが変わらない。
可愛いくて気立がよくて私の自慢の部下だった。
「今更ですけど俺、先輩の事好きだったんですよ。告白しようと決意した時には時既に遅しで」
そうか。まだ知らないんだ。
彼とはとっくに別れた事を。

◇7
職場の上司
新人OLは話しかけると赤くなり声が上ずる。
ありゃ俺に惚れてるな。
全然好みじゃないけどさ。
「あの子男性恐怖症なんだって。親父さんがヤバかったらしい」
マジか。なんつーか、騙された気分。
潤んだ目は俺じゃなくて男そのものにむけられてるわけ?
悔しくて宗旨替え。
食事に行こうぜ。治してやるから。

◇8
「誰にでもいい顔をしてアイツ絶対遊んでますよ」
同期が主任に耳打ちしてた。
女子にも男子にも嫌われて私は本当に人間ウケ悪い。
昔からそう。慣れてるし。
だから主任が何言おうと平気だし。
「牽制下手くそ過ぎんだよ。諦めろ。お前は俺に勝てねーよ」
勘違いしちゃダメと思いつつ高鳴る鼓動止まらない。

◇9
愛されて育ったお前だから側に置くと癒された。
弱くて脆いお前だから俺の傷を忘れていられた。
甘やかして笑わせたかった。
ずっと一緒にいたかった。
独立するって言った時の、馬鹿みたいな泣き顔が忘れられない。
元気でいるか?戦ってるか?幸せか…?
墓場まで持ってくこの思い。
俺はお前に惚れていた。

◇10
「まだ居たのか?」
「貴方こそ」
「俺は交渉長引いただけ。なんだよこれ。お前の仕事じゃねーだろ。また押し付けられたのか?」
「私がやった方が早いから」
「アイツらお前を便利な道具としか思ってねーぞ」
「いいのよ。それで」
「…」
「道具でいいの。誰かのお役に立ててれば」
「悲しい事言うなよバカ」

◇11
時代遅れとは思うんだけど
頭の中は食欲と性欲でいっぱいのゴリラみたいな男が好き。
そういうとショックに固まった彼。
「俺…全然違うやん。ゴリっぽさ、1ミリもないやん」
「は?あんた 何言うてんの?」
逞しい体にむさ苦しい顔面。
ドラミング似合いそうな厚い胸板。
もうどこからどう見てもゴリラやん。

◇12
38度の熱でダウン。
明日の会議までに治さなきゃ鬼の主任に怒られちゃう。
夕方彼から電話があった。
「調子はどうだ?」
「明日までには治します」
「お前はもう欠席にしてる。食いもん置いたから調子いい時に食べろよ。じゃ」
ドアの前には膨らんだコンビニの袋。
意外すぎてまたまた熱が上がっちゃいそう。

◇13
「せっかく可愛いんだからもっとニコニコすればいいのに。男は結局あざとい女が好きなのよ」
経理の彼女が詰められてる。
余計なアドバイスしないで欲しいな。
ライバル増えると困るんだ。
あざとさなんていらないよ。
素直で優しい君が好き。
メガネをとると更に可愛い。
ああ好きだ。
秘密の社内恋愛進行中。

◇14
叱られると思った。
「君は残って」と会議室。
ビクビクしてたら告白されて私は一瞬で固まった。
生真面目ドSな仕事人間。
まさか勤務中に口説くだなんて公私混同もいいとこだよ。
レアな貴方に胸がドキドキ。
きっとこれは恐怖心。
恋とは違う。絶対違う。
貴方と恋人になるかもなんて想像しただけで倒れそう。

◇15
恋愛経験ゼロなのバレちゃった。
いい歳して恥ずかしいったら。
年下部下君の恋バナに知ったかぶりしてアドバイスしてたらフィクションだって見抜かれてしまった。
ああああ穴掘って地球の裏側に逃亡したいよ。
きっと軽蔑されちゃった。
仲良くなれたと思ったのに。
相談役のポジション気にいってたのにな。

◇16
「主任が結婚?信じられない!」
フロアが朝からザワついてる。
一生結婚しないと豪語してた社内のエースがパートの事務員と婚約した。
11回振られてもめげなかった彼女に今や彼はぞっこんでOKとプロポーズは同時だったらしい。
私も本気で欲しがれば彼を射止められたのかな。
負け犬の妄想ひたすら虚しい。

◇17
「ドジだしダメだしバカだからいつも迷惑かけちゃってごめん
なさい」
自虐ネタっぽいけど結構本音。
OL生活4年目の冬。
全然向上しないビジネススキル。
「いーよ。別にそのまんまで。迷惑つっても大ウケして終わりだし。俺様という超有能のストレス解消してるから結果オーライ」
褒められて…るんだよね?

◇18
女よけの付き合いなのに部長は私を好きなふりがとてもうまい。
2人きりでいると可愛いを連発。
俺じゃダメかと何度も言う。
「契約ですよね?」
思い切って確認した。
「契約恋愛なんですよね?」
「は?」
キョトン顔に冷や汗たらり。
飲み屋の約束忘れてる?
とくん、と心臓が大きく震え本物の恋が今始まる。

◇19
首筋にキスマークつけてきた後輩に教育的指導。
「営業なんだから見えるところはやめなさい。激しい彼女って噂になってるわよ」
「女じゃねーっす。猫っすよ」
「誤魔化さなくていいわよ」
「ま、彼女みたいなもんっすけど」
キラキラ瞳でこう続ける。
「俺猫と結婚するっす」
勝手に言っとけ。ああ、可愛い。

◇20
「職場の同僚がどーだとか同じことばっか言ってんだよ。生産性のない無駄話ばっか。俺の時間給いくらだと思ってんだあの女」
「なんで付き合うんです?それこそ無駄じゃ…?」
「可愛いんだよ!」
「え?」
「同じとこでグルグルしてるのがもうたまらなく愛しいわけ!」
「…親分が幸せならそれでいいっす」

◇21
高嶺の花なんて言わないで。
ネタにしないで。
私のいない所で盛り上がらないで。
小柄でオッサンくさい人が好きなんだって
出会った時から言ってるのに
あなたは絶対信じない。
平行線なまま夏が来るよ。
恋の季節素通りするの?
焼けた肌で誘惑しちゃう。
夢の中まで追いかけて
あなたをきっと私だけのものに。

◇22
突然の雨で帰れなくなった。
「ウチ来る?すぐそこだから」
主任に誘われマンションへ。
シャワーを借りてトランプして日付変更線まで飲んで笑って。
「じゃ俺ソファで寝るね。お休みなさい」
本当に何もせずに1晩過ぎて
翌朝目覚めたら素敵な朝食並んでた。
ハムエッグを頬張りつつ紳士な主任にときめく私。

◇23
転職したばかりの彼女が
御局にいびられ落ち込んでいる。
震える肩を抱きしめ囁く。
「そんなとこ辞めて嫁に来いよ」
彼女は泣き濡れた目で俺を睨む。
「適当なこと言わないで。見損なったわ!」
彼女が部屋を出ていった後、俺は唇を噛み締めた。
今の、そんなにダメだった?
最高のタイミングだと思ったのに。

◇24
2人前はありそなナポリタン。
「手伝うよ」
とフォークをのばす主任。
会社に戻って少し咳き込むとのど飴くれた。
アイデアに詰まると椅子を寄せてブレストにつきあってくれる。
高い鼻にシャープな顎のライン。
端正な横顔にキュンとなる。
優しくした貴方が悪い。
今日からオフィスラブ(一方通行)始めます

◇25
‪緊張すると汗だくになるから
課長の近くに行くのが辛い。
ドキドキしすぎて怪しまれちゃうよ。
課長のことが好きだって。
薬指にキラリと光るシルバーの輪っか。
貴方を縛る契約のあかし。
あーあ。恋なんてやめたい。
でも止まらない。
不毛な恋なんてもういらない。
汗と一緒に流れちゃえ。
25の秘密の片想い。‬

◇26
暴走族上がりの目の鋭い新人君。
歓迎会ではニッコニコ。
カウンターでハチマキして
「俺動いてないと死んじまうんっス!」
とか言ってお酒作ってギャップにコロッとやられた私。
「正直に言いなさい。彼女いる?」
「半年前に別れたっス」
「じゃ私と付き合いなさい」
「了解っス!」
これが正しい権力行使。‬

◇27
一次会で帰ろうとしたら主任が追いかけてきた。
「ラーメン食ってく?」
「お腹空いてませんから」
「じゃ、餃子にしよう」
「え?」
有無を言わせず中華店。
「で、いつ彼氏と別れたの?」
突然爆弾ブッ込まれ笑顔がすっと消えてく私。
「やっぱりそうか。1人で泣くな。俺に慰めさせろ」
重なる手に濡れる頬。









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