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北タイ留学音楽事情

こちらの記事は、ねぽびアドベントカレンダー2023(https://t.co/fMNz63okjQ)に寄せるものです。

こんにちは!私は今、タイ北部の都市•チェンマイにいます。AIMSプログラムという、政府•大学主導の東南アジア圏交換留学プログラムを利用して滞在を始め、はや1ヶ月になりました。
この記事では、そんな北タイでの音楽話でも。

1.日常に紛れ込む音楽たち

タイ北部最大都市だからなのか、屋台文化の発展故なのか、チェンマイでは毎日のようにどこかでなにかのステージ演奏や、路上で楽器を演奏して小銭稼ぎをしている方をちらほら見かけます。
おそらく盲目の、杖をついて屋台街を歌を歌いながら歩くおっちゃん。「奨学金くれ!」って板に書いてギター持ってサンデーマーケットで観光客相手に歌う制服JK。ハーモニカで人寄せをする宝くじ売り。古楽器弾きの老人会に中高生の民族音楽と舞踊。人通りの多い地区は特に、なにかの音楽によく出会う環境かもしれません。
その中でも興味深かったものがふたつ。

⚫︎朝晩に流れる国歌

タイでは朝8時と夕方18時に国歌が流れ、公共の場にいる者は動きを止め国王に敬意を表すことが法で定められています。近所ではあまり見たことがありませんが、サンデーマーケットに出た際に一度遭遇しました(著名な観光地だからかも)
注意を促す放送とともに、観光客以外はぴたりと止まり、曲が終わるとまた動き出す姿は圧巻。

⚫︎ビッグバンド/オケ編成で演奏するタイポップス

現在、留学先であるチェンマイ大学のwind & string club に入っています。トロンボーン吹いてます。わーい。既に2回舞台にも上がりました。ビッグバンド編成とオーケストラ編成の両方で演奏しています。
ジャズやクラシック曲も何曲か吹きましたが、基本的にはポップス。ボーカリストが6人ほどおり、歌謡曲やディズニーも演奏しました。
中にはごりごりのタイポップスも。古典的なものは特に、北部/東北部/中央部/南部と地域ごとに曲調や歌詞に差が見られるようです。
自分たちが演奏した中にも、エレキ仕様の伝統楽器•ピンの爆イケソロを組み込んだ曲もあります。

エレキピン。10歳の頃からじーちゃんに習って弾いてたらしい。かっけ〜

何曲か人気曲を演奏しましたが、どれも面白いんです。歌謡曲のようで、スカのファンクみのあるバック演奏。曲によって組み込まれるラップパート。シンセサイザーの印象的なフレーズ。
大衆食堂や道端のラジオから流れてくる曲タイ•ポップスの中にも同様の特徴のものがちらほら。タイ東北部(イサーン地域)の伝統音楽•モーラムの系譜を組む、ルークトゥンという大衆音楽ジャンルに当たります。タイ音楽市場で最も主要なジャンルらしい。すごい。MVを見ると、なんか踊るし歌うし金ピカでご機嫌。さいこ〜
部活仲間が教えてくれたヒップホップやロックバンドとモーラム歌手がコラボしたバチイケな曲や、アイドルポップスに古楽器要素を取り入れたものなど、なんか面白い曲がいっぱいあって楽しいです。
エレキピンの音がかなり好きなんですよね……現代の若者にタイの音楽や音階がどう受容され変化しているのかめちゃめちゃ気になるな……もう少し掘り下げようと思います。

↓演奏した中でもお気に入りの曲。キットゥントゥンルイライ、直訳すると”トゥンルイライ(タイ東北部の地名)が恋しい”

2.日本の”音楽レベル”の評判、高すぎん?

大学の部活で初めに出会ったのは、日本Lover なトランペット吹きの部長。見学に行ったときから「すごく上手い!」「君たちのレベルに自分たちは達していなくて申し訳ない」とえらく自虐的に言っている姿が印象的。さらには、「この大学知ってる?」「この高校知ってる?」と日本旅行時に道端で見たパフォーマンスの映像や、吹奏楽コンクールの動画をどんどん出して来ました。
タイでは中高での第二外国語の選択肢に日本語があることもあり、日本に良い印象や憧れ、高品質•高級なイメージを抱かれている印象ですが、彼は特に”日本の吹奏楽文化”オタク。毎年全日本吹奏楽コンクールを欠かさずチェックしてるらしい。すごい。

日本人はみんな楽器が上手いんだろう、音楽人口も多くて、幼少期から音楽に触れる機会も多い。タイではあまりメジャーな趣味ではないから、大学内の演奏人口もこれだけだし、ほとんど初心者。えっ自持ちYAMAHAなの⁉︎楽器はタイ人には高すぎてなかなかYAMAHAみたいなのは買えないよ……
いや日本でも人によるよ〜、とは言ったものの、事実ではあるのでしょう。音楽教育の差や、クラブ活動の活発さ、楽器の価値の違い。コーラスコンクールとかあるのかな……気になるので少し掘ってみようと思います。

3.癖が強いぜ!演奏機会

これまでに2回、ビッグバンドとオーケストラで1回ずつ演奏機会がありました。

1度目:3大学合同演奏会@ホテルのパーティー会場

タイ北部、東北部、中央部から集まった3大学シンポジウムの懇親会ディナーショーにて、ビッグバンド編成で演奏。校歌×2や各地域の人気歌謡曲、ジャズの有名曲を披露しました。
学長陣が主導する校歌合唱、旗儀礼、と曲順通りに進み、ディナー会場のBGMさながら演奏を続け。各地域ごとの人気歌謡曲ゾーンに突入したときでした。
それまで拍手もまばらだったのに、突如席を立ってステージ前で踊り出すおばさまおじさま(多分偉い人)たち。えっ。
バラード曲では学長が壇上に上がり熱唱、観客席はスマホのライトを点けて腕を振り、さながらライブ会場。えっ。

3大学の学長がなんか熱唱してる


そのまま曲順とかガン無視で、次々くるリクエストを聞いてコードを確認し、壇上で(たぶん偉い人)が熱唱し観客が爆沸きする生演奏カラオケ開始。えっえっ。
終盤は演奏側も観客も酔っ払って、みんなで踊る大団円。
これがタイの古典的なパーティースタイルだそうです。年寄りがやるやつ、みたいに少し冷めた目で見る友人もいました。
結構オフィシャルなパーティーでもやるんだね。

2度目:学部設立20周年パーティー@学部棟前

デジタル系学部の設立20周年パーティーにて、オケ編成で演奏。学部棟前の特設会場で行われる、教職員とその家族が招待される屋外晩餐会&何かの会でした。
タイのイベントではよく伝統衣装を着た男女のMCが登場し、お笑い芸人さながらに笑いをかっさらい場を盛り上げています。
彼らが登場するまで、自己紹介もなしに演奏が始まり、ぬるりと人が増え始め、第1部終わりと共にMCが私たちを紹介。トークショー。その後は教職員の表彰式のため無限に待ち、待ち、少し演奏、また待ち。曲の間のMCや曲紹介は一切なし。
リハーサルから切り替えもなく拍手なしでぬるりと始まり、ぬるりと休止し、ぬるりと再開し、曲が多すぎて尺が余り客がどんどん帰る中ぬるりと終わる。

表彰待ちが暇すぎてみんなスマホいじってた

初めは違和感を覚えたのですが、BGMとしてのバンドならその方がいいのかも。

総じて、タイでよく思う時間感覚のゆるさや段取りのなさをちょくちょく感じました。合奏17時からで人が揃ったのは19時とかザラにある。でもなんとかなるからすごいなあ。
なかなか見る機会のないイベントにも参加でき、よくしてくれる友人にも出会えて、部活に入ってよかったです。

4.まとめ

いやまあでも音楽っていいですね!大量の課題と言語の壁に苦しむ中、日々楽器と音楽に救われています。
言葉いらないし、演奏しているだけで居場所が生まれる。さいこ〜

タイの音楽事情を書くぞ!とだけ決めて書いてたら、ついついどんどん長くなっちゃった。
まあそんな感じで、タイでも音楽をたのしんでいます。

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