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「その旅先で知った言葉」

まだステイホームの前、知多半島の港町に出かける機会があった。ちょっとした仕事と、ゆっくりした観光と、その流れで地元漁業関係の人たちと昼食をいただいた。

細長い半島で、穏やかな浅瀬が目の前に広がるここは、イタリアになぞらえて「チタリア」の呼び名あり。港で水揚げされたばかりのピカピカ光るシーフードをたらふくご馳走になった。

本物の「海の男」たちと話す貴重な機会。あれやこれやと好奇心のままに質問していく。アナゴは目の周りが白いから「メジロ」が地元の通称だという薀蓄から、市場の誰々さんは魚捌き系YouTuberとコラボして今や自分も有名人という旬ネタまで、話は尽きない。

やがて話題はコストコのサーモンに。大きいのに安いですよね、ちゃんと美味しいし。あれって、プロの方から見てどうなんですか。そんな素朴な疑問をぶつけた私に、その「言葉」が跳ね返ってきた。

「あれはいい餌喰ってるな」。コストコのサーモンは、プロ目線でも美味い。養殖だけど、質がいい。それは「いい餌喰ってる魚」だと。ええっ、細胞レベルで味見るの!しかも時間もさかのぼってるし!私にとって明後日の方向から飛んできた言葉、きっと一生考えたって出て来ない言葉だった。

やっぱり本物の言葉は、本気で生きてる現場にしかない。楽しい時間とともに、自分の襟を正すために今もよく思い返す。ステイホーム明け、また新しい現場に出かけたい。頭でっかちな私の表現なんかふっとばす新しい言葉に出会いたいと思っている。

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