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It’s the single lifeとは?23

…よし。整理しよう。

いま眼の前には名実ともに、乃木坂の次世代の顔である遠藤さくらさんがいる

うん。超絶可愛い。

意味分からんくらい顔小さいし。

スタイル化け物なみにいいし。

なんか良い匂いするし。

ここまでは何一つおかしくない。

問題は…

〇〇:…え?
いま何て言いました?

よくよく考えてみろ。

初対面だぞ?
初対面の相手に、いきなり大嫌いなんでいなくなれなんて言うか?

いいや、言わないね。

こんな見るからに大人し良い子そうな子がそんなこと言うわけない。

遠藤:聞こえなかったんですか?

そうそう。
最近パチ屋の行き過ぎて耳が悪く…

遠藤:私、あなたのこと大嫌いで生理的に受け付けないんです。
コンマ1秒でも早く、この空間から消えてくれませんか?

…なってないな。

何ならさっきよりも悪意と敵意にみちみちてるね。

なんで?

いや、まじでなんで?

何一つ心当たりがないんだが。

それなのになんで俺半泣き状態まで追い込まれ…

「こら。さく。」

凍りついた二人の空気を壊すように

「いきなりなに言ってんの。」

遠藤:…かっきーには関係な…

賀喜:はぁ…
みたらし団子冷蔵庫に入れて…

遠藤:みたらし!?

まるで先程までの事などなかったように

彼女は颯爽と姿を消す

〇〇:…

呆気に取られてる彼を、現実に戻すように

賀喜:あのぉ。大丈夫ですか?

〇〇:はっ!?
さっきのは夢…なのか…?

きっとそうだ。そうに違いない。
そう思わないとメンタルがもたない。

賀喜:おーい。

!?

〇〇:あ、あなたは…

賀喜:あ、自己紹介まだでしたね。
私、賀喜遥香って言います。
4期生です。

〇〇:も、もちろん存じ上げてます!!
僕は…

賀喜:井上〇〇さんですよね?

…ほえ?

賀喜:噂で聞いてたんです。
和ちゃんのお義兄さんがスタッフさんになったって。

…なるほど。
そりゃあ会ったことはなくても、ある程度情報はいってるか。

〇〇:そ、そうだったんですね。
では改めて、井上〇〇と言います。
よろしくお願いします。

賀喜:よろしくお願いします。
和ちゃんも井上なので、〇〇さんでいいですか?

〇〇:も、もちろんです!!

何故だろう。
至って普通の挨拶なのに涙が出そうになる。
俺がオタクだからか?
そうだな。そうだよな。
さっきの出来事は夢だったんだから。

夢…だったよな…

賀喜:ちなみに、さっき一緒にいた子が同期の遠藤さくらちゃんです。

〇〇:お二人は仲が良いで有名ですもんね。

賀喜:そうなんです。
さくは優しい子なんですよ。

ほら見ろ。
優しい子なんだよ。

〇〇:ですよね。
そんな子が初対面の人に大嫌いなんて言うわけないですもんね。
ハハハ。

自分で言っててとんだ笑い話で…

賀喜:いや、言いますね。
〇〇さんには間違いなく。

〇〇:いや、言うんかーーーい!!

帰りたい…
咄嗟にツッコミ入れたが今すぐ帰りたい…
何だこの地獄みたいな空気は。

賀喜:関西弁結構上手ですね。

〇〇:ありがとうございます。
…じゃなくて!!
なんで!?優しい子なんですよね!?

賀喜:はい。
多分、害虫を殺すのも躊躇うくらい。

〇〇:…いやいやいや。
さっき余裕で僕のメンタル殺しに来てましたよ?
確実に息の根止めようとしてましたよ?

賀喜:なんならオーバーキルする勢いでしたね。

〇〇賀喜:ハハハ。

〇〇:だから何故!?

賀喜:まぁしょうがないですよ。
さくにとって〇〇さんは、危険因子なんです。

〇〇:…はい?

賀喜:先程お伝えしましたが、私達4期生なんです。

〇〇:ですね。

賀喜:〇〇さんの義妹の和ちゃんは5期生。
つまり、私達にとって初めての後輩なわけです。

〇〇:まぁそういうことになりますね。
でも、それとこれとは話が…

賀喜:大事なのはここからです。
さくはあの性格から、極端な人見知りなんです。
初対面の人とはなかなか打ち明けられないタイプなんです。

…打ち明けるどころか殺りに来てたからな。

賀喜:それでも彼女は、ちゃんとした先輩になりたいんです。
私達が先輩から色々助けてもらったように。
彼女もそうやって乃木坂を守りたいんです。

〇〇:あのぉ…
すっっっごく良い話をしてくださってて恐縮ですが…全然点と点が繋がらないです。

賀喜:ここから繋がるので安心してください。

いや、繋がっても安心は出来んのですが…

賀喜:そんな葛藤を持ったさくにとって、和ちゃんはまさに救世主なわけです。

…はい?

賀喜:和ちゃんがさく推しなのは知ってますか?

〇〇:はい。
嫌と言うほど熱弁されてます。

賀喜:人見知りでなかなか一歩を踏み出せないさくにとって、推しと言って慕ってくれる和ちゃんは天使なわけです。

あれが天使…
堕天使がもとは天使とはよく言ったものだ。

賀喜:つまりさくもまた、和ちゃんを好きなわけですよ。

〇〇:なるほど…

なんと言うか…
和もちゃんと可愛がってもらってるんだな。なんか安心するわ。

賀喜:そこで問題なのが〇〇さんです。

〇〇:はい?

賀喜:〇〇さん、和ちゃんに好意を寄せられてますよね?

〇〇:いや、好意というか…
あれは狂気というか…

賀喜:とにかく。
さくからすれば〇〇さんは、自分の可愛がってる後輩兼推しに好意を寄せられてる憎き異性なわけです。

〇〇:えぇぇぇぇぇぇぇ…
そんな理不尽な…

賀喜:そうですか?
〇〇さん、乃木坂に推しはいらっしゃいます?

〇〇:はい。
生涯さっちゃ…んん…
菅原咲月さんが推しです。

賀喜:可愛いですよね咲月ちゃん。
じゃあ彼女で考えてください。

…なにを?

賀喜:〇〇さんは咲月ちゃん推しです。

〇〇:はい。

賀喜:そんな咲月ちゃんから、「私めっちゃ好きな人がいるんです!!」って言われました。

〇〇:グッ…

賀喜:しかも!!
その人が同じ仕事を始める!!と。

〇〇:グッ…グハッ…

賀喜:しかもしかも!!
その人とは絶賛同棲中だと!!

〇〇:グッ…グハッ…ガハッ…!!

賀喜:…どうですか?

〇〇:僕のHPは0です。
その相手を殺して僕も死にます…

賀喜:さくはいまその状態です。

〇〇:いや、でも…
さすがにそんな殺戮マシーンみたいなことは…

賀喜:しませんよ。
だから、せめてもの抵抗で〇〇さんを辞めさせようとしてるんだと思います。

賀喜は苦笑いをしながら話すが

〇〇:せめてもの抵抗って…
そんな可愛げな言葉で、人の職を奪わないでくださいよ…

賀喜:まぁさすがにさくの権限で辞めさせるなんてことは出来な…

彼女の言葉を遮るように

遠藤:かっきー!!

賀喜:あ。戻ってきちゃいましたね。

賀喜が悠長に話しているなか

〇〇:…

遠藤:…ガルルル…

嘘ですやん…
あんなわかり易く威嚇するとかある?

賀喜:こら。威嚇しないの。

遠藤:だってぇ…

賀喜:〇〇さんはいい人だよ。

賀喜さん…
まだあって数分なのに…
そんな僕のことを庇って…

賀喜:よくは知らんけど。

遠藤:ガルルル…

〇〇:…

頼むからしっかりと最後まで手懐けてくれ。

そこに

まるで神様のいたずらのようなタイミングで

「あ。お義兄ちゃんだ。」

この声…
てか、その台詞を言うってことは…

和:あれ?
賀喜さんとさくらさん?

〇〇:和…

助けを求めるか…?
いや、待て待て。
こいつはそもそも遠藤さんのこの現状を知って…

和:さくらさんさくらさん!!
この人が前話してた私のお義兄ちゃん券彼氏です!!

〇〇:…

馬鹿か?
馬鹿なのか?
助けるどころか、誰が死刑宣告をしろと言った?

遠藤:…

先程までの威嚇をしてた表情から一変

遠藤はこれでもかとアイドルスマイルを浮かべ、〇〇の隣に立つ

遠藤:うん。知ってるよ。
さっき少し話してたんだ。

あれ?
思ったよりなんともな…!?

〇〇:いってぇぇぇぇ!!

突然背中に走った肉を抉られるような激痛

正確には肉は抉られてはいないが

〇〇:…

嘘だろ…
この人なに一つ躊躇いなく俺の背中引き千切る勢いで抓ってきやがった…

和:ど、どうしたの?

遠藤:どうしたんだろうね。
なにもないのにね。

まるでそう言えと言わんばかりの視線…

〇〇:ご、ごめん。
急に静電気が走って…

和:なんだぁ。
ビックリさせないでよ。

義妹よ。
俺のほうがビックリしてるんだ。
許してくれ。

和:それよりさくらさん!!
お義兄ちゃんカッコよくないですか!?

遠藤:…そうだねぇ。

〇〇:…

和やめて…
お願いだから…
あなたの憧れの先輩、えげつないくらい今抓ってるから…
それ以上刺激しないで…

遠藤:ねぇ和ちゃん。

和:はい?

遠藤:お義兄さんのどこが魅力なの?

和:そうですねぇ。
言い出したらごまんとありますが…

痛い…

和:まずはカッコイイです。

痛い痛い…

和:あと優しいです。

痛い痛い痛い…

和:あとはあとは私の色んな事を知ってます。

痛い痛い痛い痛い…!!

和:あとは…

〇〇:もうやめて!!
和!!そういうのはあんまり人前で言うものじゃないぞ!!

そして俺の背中の肉が本格的に狩り取られるから!!

和:まぁなにはともあれ、ぜひこれから義兄のこともよろしくお願いします。

深々と頭を下げる彼女はとても誠意的だが

遠藤:よろしく…ねぇ…

〇〇:…

怖い。怖いよ。
顔は笑ってるのに、目がゴミを見る目をしてるんだよ…

そこに

九条:あ、〇〇君いた!!

〇〇:く、九条さん!!

もうこの際なんでもいい!!
この場を逃げれるならなんでも…

九条:あぁそこにいて!!

〇〇:…はい?
いや、ここは…

遠藤:…

地獄なんですよね~…

九条:よかった。遠藤もいた。

遠藤:はい?

九条:明日の撮影なんだけどさ、ちょっとスタッフの人員不足で…
申し訳ないけど〇〇君つけるから色々面倒見てあげてくれる?

はい?

〇〇:ま、ま、ま、ま、ま、ま、待ってくださ…

遠藤:いいですよ。

〇〇:…は、はい?

遠藤:仲良くしましょうねぇ。
〇、〇、さ、ん。

〇〇:…

九条さん。
僕が遠藤さんに見てもらえるのは面倒じゃなくて、死に際の顔になりそうです。

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