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It’s the single lifeとは?21

〇〇:はぁ…はぁ…
くそ…なんで出ねぇんだよ…!!

日もすっかり暮れ、月明かりがおぼろげに街を照らすなか

行き交う人の好奇の目など気にもせず、もてる全力を使い足を回す

〇〇:頼むから…何事もないでくれ…

遡ること数十分前

〇〇:は!?いねぇ!!
どこ行った!?

いつの間に消えやがった…
てか、マジで誰なんだよあれ…

〇〇:話の内容からするに、乃木坂の関係者っぽいけど…
いろいろ濁しすぎだろ…
いきなり現れて、いきなり消えて…
ん?

先程まで明らかに誰かが座っていた痕跡はある

そしてなにより

〇〇:あの人、なんかメモ忘れてるし。

…いや待て待て。
今どきこんな紙切れでメモ残すか?
なによりさっきの人が忘れていくとか想像がつかないし…

〇〇:つまり…

恐る恐る手を伸ばし、紙切れに書かれた文字が視認できるように近づける

そこには

「ここは奢ってあげる。
それより早く義妹ちゃんのところ行ったほうがいいと思うよ?」

〇〇:…

手に取ったメモを握りつぶすように拳を握る

それはメモに書かれていた内容に嫌な未来が想像出来てしまうから

または走り出すために力を込めたから

はたまたその両方か

和:ふぅ。今日もいい湯だ。

一日の疲れを流すようにシャワーを浴びる

この家に来てから毎日湯船は欠かさずはっている

水道代が〜ガス代が〜
ってお義兄ちゃんが言ってたけど、これだけは譲れない

和:今日は〜柚子の香りにしよ。

市販の入浴剤も入れちゃったりなんかして。

まぁしょうがない。
他の匂いで誤魔化さないと、お義兄ちゃんがお義兄ちゃんを保てなくなる可能性大だから。

和:それはそれで…フフフ。
明日は入浴剤なしにしよう。
ふぅ〜それにしても、あの男はまた浮気をしよってからに。

アルノから来たLINEのメッセージ

今思い出してもアイムハングリー。

中西L:〇〇と映画デートナウ。
専属マネ有能ワズ。
今度は彼氏として来たいウィル。

和:…なにあの腹立つLINE!!
ナウとかワズとかウィルとか!!
あんたは生粋の日本人だろ!!
てか、いつの間に呼び捨て!?

浴室に自分の声がこうも跳ね返ってくるのはなんだか虚しい

虚しさと苛立ちとちょっぴりの焦り

和:…まずいまずい。
昨日は強がりで余裕見せつけたけど…
よくよく考えてアルノって超強敵じゃん…
さっちゃんも満更じゃないし…

これは…
鞭打ち作戦だけじゃまずい気がする…

和:ここ最近で充分鞭は与えたし…
いまこそ飴の使い時か…
飴を渡す前に今日のことはちゃんと躾けるけど…よし。

何かを決断したように、和は湯船から立ち上がり浴室を後にする

和:フフフ〜ン。フ〜ン。フフ〜ン。

鼻歌を奏でながらドライヤー手にする

髪が長いとドライヤーも大変だなぁ。
まぁお義兄ちゃんがロングヘアー好きだしなぁ。

和:…こんな健気な彼女がいるのになんて男だ。

もはや関係性を当たり前のように間違えているが、そんなの気にもせずに

和:てか、まだ帰って来ないのかな。
…はっ!!まさかアルノと…

ガチャン

噂をすればなんとやら…
よし。まずはとびっきりに躾けてやる。

ドライヤーしていた手を止め、廊下へと繋がる扉に手をかける

和:…お義兄ちゃん。
なにか私に言うことは…

〇〇:和!!

和:!?

扉を開けながら声を発していたこともあり、〇〇の表情は彼女には見えていない

それでも、その声色だけで只事じゃないことを察する

和:お、お義兄…ちゃ…

恐る恐る廊下に姿を現し、義兄に視線を向ける

よりも早く

和:!?

突如身体に走った衝撃

衝撃にしてはあまりにも柔らかく、暖かいものだった

和:お、お、お義兄ちゃん!?
急に抱きついてきてどうし…

〇〇:なんともないか!?
なんか変なことされたり起こったりしてないか!?

和:いや、なにもないけど…

〇〇:ホントか!?

和:ほ、ほんとだって。
どうしたの…?そんなに慌てて…

〇〇:いや…ごめん…急に…

彼女の普段通りの様子から、〇〇はようやく抱きしめていた手を解く

〇〇:無事ならいいんだ。

和:…いやいや。
そっか。で、話し終わらないよ?

〇〇:…そっか。

とりあえず和の無事は確認取れたし、あとはあの人が誰か…

和:さらっとリビングに向かおうとしてるけど、逃がすと思う?
終わらないって言ったよね?

〇〇:…待て待て。
俺もまだ状況が理解できてないんだ。

和:そんな状態でアイドルに抱きついたわけ?

〇〇:アイドルって言ったって…和だし。

和:うわぁ。最低。
私だってアイドルだし、それ以前に女の子だし。急に抱きつかれて何も思わないと思う?

〇〇:いや、待て。
お前いつも寝る時勝手に…

和:お義兄ちゃん!!

!?

〇〇:な、なんだよ急に。

和:ん。

…何故この義妹は両手を広げてこちらを見つめてるんだ。

和:お義兄ちゃんに選択肢をあげる。

〇〇:…ほぅ。

和:一つはちゃんと全部説明すること。

…それは避けたいな。
俺ですらよく分かってないし、何より和もきっと何かしら関わってるはず。
なら、いたずらに混乱させたくないし…

〇〇:もう一つは?

和:だから。ん。

いや、ん。と言われても…

和:考えるな。感じろ。

〇〇:名言ってか…迷言だろ。

和:…少しは安心させてよ…

〇〇:…悪かったよ。ん、

和:いろいろ言いたいことあるし聞きたいこともあるけど…
おかえり。

〇〇:ん。ただいま。

とりあえず和が無事ならいいか。

〇〇:あのぉ…

和:なに?

〇〇:いや、そろそろ離れて?

和:嫌ならお義兄ちゃんから離れれいいじゃん。

まぁそれでいいなら遠慮なく…

〇〇:クッ…お前どんだけ力強…

和:あれ〜〜?
離れないってことはずっとこうしてたいってことだ。

〇〇:違う…お前の馬鹿力が…
いた!痛い痛い!!

和:愛は時として痛覚も刺激するんだよ。

〇〇:違う!!物理的にだ!!

和:お義兄ちゃんご飯は食べた?

〇〇:いや、まだだけど…

和:お腹へってる?

さっきカフェでコーヒー飲んだし。

〇〇:特段は空いてな…

和:じゃあ…寝室行こっか。

…はい?

彼の疑問など関係なく、二人はゼロ距離のまま移動を始める

〇〇:待て待て!!
俺まだ風呂にも入って…

和:大丈夫。
お義兄ちゃんの汗の匂いまで愛せる自信はあるから。

えぇぇ。シンプルに怖いんですけど…

〇〇:じゃなくて!!
和は和の部屋で寝れば…

和:無理無理。
もう私今すぐにでも一線超えたいもん。

なにを真顔で言ってくれてんだこのバカ。

〇〇:そんなことしたら俺はマネージャークビだ。

和:お義兄ちゃんが…
クビになっちゃう…

お?
寝室に行く動きが止まったぞ。
これはナイスな返しをした気が…

和:つまりメンバーに会えなくなる…
そうすればメンバーと浮気もしなくなる…

…はい?

和:私が独り占めできる…

…はいはい?

和:どうせお義兄ちゃんの収入なんて微々たるものだし…

…おい。

和:私が稼げれば誰にも邪魔されないんじゃ…

〇〇:あのぉ。和さん?
なんかすんごい怖い独り言がだだ漏れなんですけど…冗談ですよね?

和:お義兄ちゃん。

〇〇:…はい。

和:…優しくしてね?

〇〇待て待て待て!!
そういう貴様の力が全く優しくない!
無理矢理連れ込もうとし…痛い痛い!!

和:お義兄ちゃん。
今日が記念日になるね。

〇〇:紫色のオーラを見せるなぁぁ!!

和:乃木坂だもん。

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