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It’s the single lifeとは?29

無音が支配する寝室

遠藤:…//

うるさい…うるさい…

自分の心臓の音が異様なほど大きく聞こえる。

いつも通りの寝室なのに…
〇〇さんがいるだけでこんなに違うんだ。

〇〇:…僕に出来ることならいくらでも。

そう言って頭の上に感じる少しの重みと、心地良い暖かみ

あぁそっか。
きっと私はもう…

遠藤:…おやすみなさい。

〇〇:はい。おやすみなさい。

ホント不思議な人だな。

和ちゃんが取られると思って勝手に嫌いになって。

仕方がなくて一緒に出かけて。

そこでもふざけてばっかりで。

それなのに…

もうこの気持ちに嘘はつけないな。

〇〇:ん、んん…

我ながら朝自然に起きれるようになったのは成長でしか無いな。

〇〇:あれ…ここは…

ぼやけた視界を取り戻そうと目を擦る

正確には擦ろうとする

〇〇:…そうだ…昨日…

胸元から感じるむず痒い空気が当たる感覚と、同じ人類かと思われるほどの整った小顔

〇〇:結局あのまま俺も寝ちゃったのか…

…冷静に考えてこの状況は非常にまずいな。
男〇〇の中の男の部分がさっきから男性ホルモン全快になろうとしてやがる。

〇〇:…フフ。
こう見ると幼い顔してるんだな。

こんなところ誰かに見られたら、俺の将来は無職かパチンカスの二択から、刑務所で刑務作業の一択に変わってしまう

だが、ここはさくらさんの家

つまり、そんなリスクは…

カシャ
カシャカシャ

〇〇:そうそう。
家の中だからカシャカシャ、シャッター音が聞こえるのも別に不思議じゃ…

〇〇:は?

待て待て待て待て待て!!

いま確実に後ろからシャッター音したよな!?

落ち着け俺。
冷静になるんだ。

この家はさくらさんの家、それは間違いない。

そして家主であるさくらさんは、いま俺の腕の中にいる。

…やべぇ。鼻血出そう。
え、いまの台詞はこの世の全さくらさんオタクの言いたい台詞ベスト1では?

あの遠藤さくらさんが俺の腕の中で気持ちよさそうに寝てるんだぞ!?

遠藤:ん…んん…

ヤバっ…起こしちゃっ…

遠藤:もっと…ギュッとして…

〇〇:…

あれ。
ユートピアってこんなところにあったっけ?間違えた。ここはエデンか。いやいやおったまげた。桃源郷って実在したんだな。

だが男〇〇。
ここは我慢だ。
ここで欲望のままに締め付けようものなら、一時の快楽で将来を棒に振るぞ。

遠藤:…いなくならないで…

はい、ここにいます。
ずっといます。もうここに就職しま…

カシャカシャ!!
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ…

〇〇:カシャカシャカシャうるさ…

「あ。起きてたんですね。
おはようございます。」

状況を整理しよう。

ここはさくらさんの家だ。

昨日は酒も飲んでないし間違えない。

そして家主のさくらさんは俺の腕の…

待て待て。
それだと同じ流れだ。

家主のさくらさんは眼の前にいる。

つまり。

〇〇:お、おはようございます。

〇〇:賀喜さん…

賀喜:おはようございます。
寝心地いいですか?

〇〇:良いか悪いかで言われたら答えに困ります…

賀喜:そんなに可愛いさくがいるのに?

〇〇:その点で言えば天国かと錯覚するほど心地良いです。

賀喜:いいんじゃないですか。

あなたのその目が笑ってない表情が地獄かと錯覚するほど心地良くないのです…

賀喜:とりあえず…

〇〇:死ぬ以外の選択肢だと大変助かります。

賀喜:あら残念。
いきなり本命をフラれちゃうとはビックリです。

…ヤバイヤバイヤバイ。
ここ数ヶ月で間違いなくトップ3に入るヤバさな気がする!!

〇〇:あの…
これは誤解で…

遠藤:んん…
〇〇さん…へへ…
嫌いなんか…うそですよ…

あぁさくらさん。
なんて天使な寝言なんだ。
信じますよ?信じていいんですよね?

賀喜:だ、そうですよ?

あぁさくらさん。
寝たフリですよね?
ホンとは起きてるんですよね?
起きてるって言って!!

〇〇:…ち、ちがうんです…
ほんとにこれは…

賀喜:さくは〜
私の大切な同期で相棒みたいな存在です。

〇〇:…存じ上げてます。

賀喜:和ちゃんは〜
私にとっても妹みたいに可愛い存在です。

〇〇:…義兄として嬉しい限りです。

賀喜:…

怖い…怖い…
無言の笑みで見てこないで…
お願いさくらさん…
いつまでも寝てないで起きて…

〇〇:…とりあえず…
こんな体制だと失礼なので、一度起き上がって…

賀喜:必要ないですよ。
私もう帰りますから。

…はい?

〇〇:か、帰る?

賀喜:えぇ。
私、さくの合鍵持ってて、たまにさくの部屋来て遊びに連れてったりしてるんですよ。

〇〇:なるほど…
じゃあ今日も…

賀喜:先約がいたので帰ります。

賀喜:あ、そうだそうだ。

寝室の扉に手をかけ、変わらずの笑みで振り向く

それはまるで

賀喜:…死ぬ方が楽な事も世の中にはあるみたいですよ。

ガチャン

ごめん。さくらさん。和。
俺本当の本当に終わったわ。

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