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It’s the single lifeとは?22

〇〇:…待て待て待て!!
だから痛いって!!

和:大丈夫。
もうすぐ気持ちよくなるから。

絶対だめだろ!!
その気持ちよさは!!

〇〇:和!!
わかった!!わかったから一回離せ!!

和:…今わかったって言ったからね?

くっ…
身動取れないことにはどうしょうもないし…

〇〇:とりあえず離せ。
俺達にはまだ会話という選択肢がある。

和:必要ない。
身体は素直だか…ら!!

!?

〇〇:おかしいだろ…
なんで現役アイドルが、成人男性を投げ飛ばすんだよ…

和:フフフ…
とうとうベットで寝る気になったね。

こいつ頭バグってんのか?
どう考えても貴様が無理矢理投げただろ。

〇〇:待て。
それは本当に越えちゃいけない一線だ。

和:そんなの試してみないとわからないじゃん。

〇〇:アホか?
試した時点で越えてんだよ。

和:じゃあいいじゃん。

〇〇:じゃあじゃない。よくない。

和:なんで?

〇〇:なんでって…

和:私、可愛くない?

〇〇:いや…可愛いけど…

和:ありがと。愛してる。

なにこのやり取り。

和:愛し合ってる二人が身体を交えるなんて普通のことじゃん。

〇〇:待て。
可愛いと言ったが愛してるとは…!?

大の字

その言葉のごとく、彼女は手足を広げてベットへダイブする

〇〇:ば、ばか!!

とっさに彼女を抱きしめる形で、どうにか受け止める

和:へへへ。
お義兄ちゃんが抱きついてきた。

頭わいてんのか?

和:ねぇ…お願い。

ゼロ距離で向けられたアイドルの上目遣い

〇〇:…ダメだ。

和:…分かった。
じゃあせめてこのままにさせて。

…致し方ないか。

〇〇:わかったよ…

和:フフ…
あ、まつげにゴミついてる。

〇〇:マジ?
布団の毛でもついたか。

和:取ってあげるから目瞑って。

〇〇:ん。サンキュ…

まつげに感触は一向になく

唯一感じたのは唇に触れる柔らかい感触

〇〇:はぁぁぁぁぁ!?
なにしてんの!?

和:え?なにってキッ…

〇〇:言うな!!

和:なんでよ。聞いてきたくせに。

こいつマジでバカか!?
俺があれだけ…

和:…よかった。

〇〇の怒声など気にもせず、彼女は安心したように彼の胸に頭を預ける

〇〇:…はぁ?

和:初めてをちゃんとお義兄ちゃんとできて。

シシシと

効果音が聞こえるような小悪魔的な笑みも

赤みがかった頬が儚さを演出する

〇〇:お前な…

和:嫌…だった?

〇〇:ずりぃだろその聞き方は。

和:嫌なら嫌って言ってよ。

〇〇:だから…
別に嫌じゃな…

言葉を遮るように、先程まで胸にあった顔が急接近する

そして

和:…良かった。

〇〇:…いやいやいや!!
よくないから!!

和:なんで?
キスなんて海外じゃ挨拶じゃん。

〇〇:じゃあお前はそんな軽い気持ちでキスするのか!?

和:ううん。
一回一回永遠の愛を誓ってしてるよ?

わぁぁ。
予想より遥かに二郎系な答えしないでぇ

〇〇:お前さぁ…
ホント後悔するぞ?

和:なんで?

本当に意味が分かってないように

純粋無垢なはてなを浮かべた表情

〇〇:だから言ってるだろ。
こういう初めてはちゃんと…

和:好きな人に出来たよ?
後悔の余地なくない?

和:お義兄ちゃんのこと好きだもん。
家族としても。異性としても。

〇〇:あのなぁ。
少しは俺の立場に立って考えてみろ。

和:なにが?

〇〇:義妹に異性として好きと言われて、複雑になるとは思わんかね?

和:全く。
ただでさえ高スペックな義妹が、アイドルという肩書まで手に入れて迎えに来てくれた神展開にしか思えない。

こいつ…

和:今日はこれで我慢するよ。
でもこれからは…どんどん一線越えて行こうね。

〇〇:行こうねってウインクするな。
越えねぇから…って秒で寝やがった…
ったく。

自身の胸に頭を預け寝る義妹

その頭に手を置きながら

〇〇:とりあえず…
和のことはちゃんと守んねぇとな…

結局、あの人が誰で味方かも分からんし…

〇〇:はぁ…これからどうなることやら…

ーー

〇〇:おはようございます。

日々新しいことの出来事ばかりで正直疲れる

疲れるが

咲月:〇〇さん!
おはようございます!!

今日も推しが生きてる

それだけで我、無双なり。

〇〇:おはようございます。菅原さ…

咲月:〇〇さん?

おぅ…
何故か推しがメンヘラスキルを発動し始めるここ最近

それでも推し優勝

〇〇:おはよう。咲月ちゃん。

咲月:ですです!!
ちゃんと定着させてくださいね。

プクッと頬を膨らませるその仕草

ここはエデンですか?

中西:はい。
人の専属マネにちょっかい出さない。

咲月:うわ。でた。
専属マネマウント。

中西:事実だし。ね?〇〇。

咲月:はぁぁ!?
いつから呼び捨てなわけ!?

中西:それは…秘密。

咲月:なにその間!!
〇〇さんは私推しだし!!

中西:推しとか関係ないから。

〇〇:…

朝からバチバチと火花を立てているとこ申し訳ないが

この上なく気持ちが良い

あの乃木坂のメンバーだぞ?

やっぱ就活サボってみるもんだな。

〇〇:…いかんいかん。今は仕事中だ…
二人とも落ち着いてください。
今日は4期生の方達と合同レッスンですよね?

咲月中西:はい。

切り替えの早さから、乃木坂というグループはいい意味で上下関係がしっかりしてるのだろう

かくいう俺も緊張する…

だって5期生以外と初めて会うもん…

握手会は行ったことあるけど…

〇〇:落ち着け俺…
また変なことしたらクビになりかねんぞ…

首の皮一枚で繋がっている正社員というステータス

これを手放すわけにはいかない

そして

「おはようございます。」

レッスン室の扉が開き、数人が足並みをそろえて姿を現す

それだけで空気が締まるのを肌で感じる

〇〇:すげぇなぁ…

いい意味での緊張感

それを和ませるように、4期生の方々は自然に5期生とコミュニケーションを始める

とりあえず俺も挨拶を…

「あのぉ。」

!?

か細くもどこが芯のある声

そして間違えなく俺に向けて発せられた声

〇〇:ぼ、僕…ですか?

うわぁ。すげぇ。
本物だ。本物の…

「はい。たしか…あなた…」

〇〇:も、申し遅れました。
私、中西アルノの専属マネージャーになりました井上〇〇と言います。

「井上…」

〇〇:もしかしたらご存じかもしれませんが…
井上和の義兄になります。

「…」

めっちゃ見てくる。
すんごい視線向けられてる。

〇〇:あのぉ…
あなたは…遠藤さくらさん…ですよね?

遠藤:…

え?本人だよね?
こんな超絶可愛い小顔様が何人もいるわけないよね?

彼女は肯定も否定もすることなく、ゆっくりと彼との距離を詰める

大勢いるはずのレッスンルーム

それでも、まるで切り取られたような二人の空間

〇〇:あ、あのぉ…

怖い!!なんか怖い!!

てか、近い!!

近いのに顔小さい!!
顔小さいのに近い!!

普通ではあり得ない距離感

それでも彼は蛇に睨まれた蛙のように動くことが出来ずに

遠藤:私…

まるで息遣いも聞こえるほど、耳元でゆっくりと口を開く

〇〇:え、遠藤さ…

近すぎて良い匂いが…
てか、すっげぇ綺麗で惹き込まれそうで…

遠藤:あなたのこと大嫌いなんです。
今すぐここからいなくなってくれませんか?

底無しの暗闇のように真っ暗な瞳だ…

〇〇:え?

ごめん和。
お義兄ちゃん、お前のこと守れそうにねぇわ。

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