It’s the single lifeとは?31
〇〇:ついてしまった…
まだ時期的に日が沈みきることはなく
けれでも彼の心は完全に沈んでいた
遠藤:どうしたの?
そんな真剣な表情して。
一日で気付きあげたトップアイドルの隣という立ち位置
数時間前までは天国だと錯覚していた
が
〇〇:いや、冷静に考えて和に殺される気しかしなくって…
さっきから数分、いや数十秒毎に背筋に走る寒気
間違いない。奴だ。
遠藤:大丈夫だよ。
和ちゃんには私からLINE送ってるし。
それ。それです。
〇〇:ちなみに…
そのLINEの内容見せてもらえたりします?
遠藤:いいよ。はい。
エレベーターに乗りながら、彼女のスマホを受け取る
気軽にLINEを差し出すあたり、恐らく微塵も悪気はないのだろう
が
〇〇:…
終わった。死にました。
誤解しか産んでないよねこれ。
遠藤:ね。大丈夫でしょ?
〇〇:ハ、ハハ、ハハハ…
遠藤:…バカにしてる?
滅相もございません。
そんな心の余裕は死を前にした男にありません。
〇〇:さくらさん。
僕になにかあっても気にしないでくださいね。
遠藤:和ちゃんはそんな事しないもん。
〇〇:するんです。奴はするんです。
遠藤:…なんか自分だけ知ってるマウントみたい。
叶うのであれば知りたくないですよ。
自分が死ぬ確定演出なんて。
〇〇:はぁ…どうしたものか…
遠藤:大丈夫だって。
〇〇が私のこと守ってくれたのに変わりはないでしょ?
〇〇:それは…そうですけど…
遠藤:ありのままを話そうよ。
そしたら和ちゃんだって分かってくれるって。
〇〇:さくらさん…
そうだ。
今までの経験から嘘ズル誤魔化しは通用しないし、より危険になるだけだ
遠藤:まずは私から説明するから。
ほら、もうレッスン室ついたし。
…よし。
男〇〇覚悟を決めろ。
遠藤:和ちゃんどこだろう。
一通りレッスン室を見渡すが
遠藤:あれ。
まだ来てないのかな。
いつも早めに来てるのに。
〇〇:…
おかしい。そんなはずはない。
先程感じていた背筋の寒気が、今となっては全身に纏わりついている。
それはまるですぐ近くに…
「おはようございます。」
!?
全身に纏わりついた寒気だが、今もなお特に強く感じていた背筋
理由はいたってシンプル
遠藤:あ、和ちゃん。おはよ。
〇〇:…
どうする。考えろ。
すでに後方という圧倒的有利な立ち位置は取られている。
今できる行動は2つ
1つは膝へのダメージを度外視した空中半回転ジャンピング土下座
もう1つは信頼度高めの加速装置発動
遠藤:ごめんね昨日は。
〇〇:…
そうだ。何を恐れているのだ。
今はさくらさんがいる。
和:いえ。
どういった経緯で昨日はお義兄ちゃんを泊めてくださったんですか?
〇〇:ゴクリ…
いきなり本題。
でもこの質問はいいぞ。
これなら素直に答えれば…
遠藤:えっと…
素直に答えれば…
遠藤:う~んと…
素直に答え…
遠藤:なんというか…
素直に…
遠藤:〇〇と仲良くなりたくて…//
さくらさーーーーーーーん!!!
え!?
嘘でしょ!?
さっきあんな自信満々だったのに!?
なんで火事現場にさらにガソリンかけ続けるわけ!?
和:…そうですか。
遠藤:うん。
うん。じゃない!!
〇〇:さ、さくらさん…
昨日の出来事を…
遠藤:あ、そうだ。
ごめんごめん。昨日ね…
よしよし。
ここからなら修正も…
遠藤:本屋行って、カレー食べて、みたらし団子も食べたの。
うんうん。楽しかったねっ……
〇〇:って違う!!圧倒的に違う!!!
遠藤:違くないじゃん。行ったじゃん。
〇〇:行きましたけども!!
違くないけど違う!!
いま言ってほしいのは…
和:お義兄ちゃん。
〇〇:…はい。
和:変な遺言を残したくないなら黙ってて。
うわぁ。
もうこの世から旅立つの決定してますやん。
和:…さくらさん。私は…
「お。
さくに和ちゃんじゃん。おはよ。」
まるで空気を変えるように
透き通った声が響く
和:おはようございます。賀喜さん。
遠藤:かっきーおはよ。
賀喜:おはよ。
〇〇さんも…おはようございます。
〇〇:お、おはようございます…
神様。
そりゃないぜ。
もうあの世に行くのは確定してるんだろうけど、なにも生きているうちに地獄に落ちるとこまで確定させなくてもよくない?
賀喜:なんの話してたの?
〇〇:…
めっちゃこっち見てる…
怖い…笑ってるのに…目が笑ってないよ…
和:…昨日義兄がさくらさんの…
賀喜:あ!そうだ!!
さく大丈夫だったの!?
遠藤:…え?
〇〇:…
まさか…
ここで昨日一緒に寝たことまで言って、和を殺人犯に仕立て上げるつもりじゃ…
賀喜:昨日の夜、ストーカーに襲われたって聞いて…
〇〇和:…え?
義兄妹が発した同じ言葉
それでも意味合いはそれぞれ違っていて
和:ど、どういうことですか!?
さくらさんが襲われたって!!
先程までの表情から一転
まるで取り乱したように声を発する
賀喜:私も「〇〇さん」から聞いたんだけど…
…はい?
賀喜:昨日、さくのことストーカーしてる人がナイフを持って襲ってきたって…
和:う、うそ…そんなことって…
でもさくらさんは…
賀喜:〇〇さんが一緒にいなかったら本当に危なかったと思う…
…あれ。なんか話の流れが…
和:さ、さくらさん!!
本当に大丈夫なんですか!?
遠藤:う、うん。
本当に怖かったし、もうダメだって思ったけど…
〇〇がすぐ駆けつけてくれて助けてくれたの。
和:お義兄ちゃんが…
遠藤:それでもやっぱり一人になるのは怖くて…
だから昨日は無理言って私の家に留泊まってもらったの。
ごめんね。和ちゃんのお義兄ちゃんなのに。
これは…どういう状況だ…?
和:…お義兄ちゃん。
…
〇〇:は、はい。
そうか。
とうとう死刑宣告がくだされるのか。
ありがとう。この世界。
どうか生まれ変わったらもっと平穏な…
和:お手柄すぎるよ!!
そうだよな。もう…
…
…
〇〇:…え?
和:え?じゃなくて!!
お義兄がいなかったら、さくらさんはここにいられなかったかもしれないってことでしょ!?
遠藤:うん。そうだね。
まぁたしかにかなり危ない状況ではあったけども…
和:まさか…お義兄ちゃんが…
さくらさんを守ってくれるなんて…
…おや?
和:さくらさんは私の推しだから…
おや?
和:もし、さくらさんに何かあったらなんて考えたら…
おや!?
和:お義兄ちゃん!!
本当にありがとね!!
おやおやおやおやおや!?
きっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁ!!
和:まさかさくらさんにそんな事があったなんてつゆ知らず…
とにかく!!さくらさんが無事でホントによかったです!!
遠藤:ありがと和ちゃん。
だから…〇〇のこと許してあげて。
和:はい。
昨日帰って来なかった件は不問にします。
…ッシャ!!
遠藤:良かった。
じゃあレッスン行こうか。
和:はい。
そう言いながら二人は〇〇から離れる
いや
離れようとする時
和:あ、そうだ。お義兄ちゃん。
どうした和よ。
そんな俺にしか聞こえない声で。
もう俺に怖いものはないぞ。
もう危機を乗り切って…
和:さくらさんがお義兄ちゃんのこと呼び捨てタメ口になってる件は、家でちゃーーんと聞くね。
…
〇〇:和さん。それには詳しいわけが…
和:さくらさん。
レッスン準備しましょ。
遠藤:うん。
あぁ…
せっかく乗り切ったと思ったのに…
〇〇:まぁでも…
呼び捨てタメ口くらいなら死にはしないか…
とにかく危なかった…
なんとか乗り越えられたのも…
…いや待てよ。
そもそもなんで乗り越えられたんだ?
俺の乗った船(さくら丸)はこう言ってはなんだが、明らかに泥船だった。
沈んでいく未来しかなかったはず。
話の流れが変わったのは…
賀喜:良かったですね。
和ちゃんに許してもらえて。
〇〇:…
忘れてた…
全然乗り切ってねぇじゃん…
いや、でも…
〇〇:た、助けてくれたん…ですよ…ね?
それしか考えられない。
だってそうじゃないとさっきの言動に賀喜さんのメリットがないし…
賀喜:もちろんですよ。
〇〇:か、賀喜さん…
そうか。
朝見たのは賀喜さんの皮を被った悪魔だ。
これこそ本来の…
賀喜:だって…
心の底から許せない相手は、ちゃんと自分の手で処分したいと思うじゃないですか。
…そっか。俺が間違ってたな。
眼の前にいるのは悪魔の皮を被った賀喜さんだ…
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