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It’s the single lifeとは?18

〇〇:ふぁぁあ…

久しぶりの休日。
我ながらなかなか早く起きれた事に感心す…

ん?

横を向いたような体制。
俺は寝る時は決まってこの体制だ。

だからこそ…

〇〇:背中に温もりがある…

以前までなら考えられない状況

それでも分かる。
分かってしまう。

この温もりの犯人が。

〇〇:ったく。

和のやつ、また勝手に布団の中に入ってきやがったな。
別に嫌じゃないけど。
こういうのは男女である以上しっかりとするべきだ。

義理とは言え妹なら尚更。

〇〇:和。
毎回毎回、布団の中に勝手に入って…

くるな。

その3文字が出なかったのは、視覚から入った情報処理に全神経を向けたから

枕に埋もれて顔は見えない。
だが…

〇〇:明らかに髪の毛が短い…

和の特徴ですらある、黒神のロングヘアー。
それがどういうことか、違った可愛さを持ったショートヘアーに様変わりしている…

〇〇:まさか…
深夜のうちに切った…わけないよな…

だとすると…

考えられる最悪かつ現実的な可能性

嘘だろ…
たしかに昨日泊まるとか言ってたけど…
和と深夜でパーリナイとかふざけたこと言ってたけど…

〇〇:和がショートになってますように…
和がショートになってますように…
和がショートになってますように…
和がショートになってますように…

まるですがるように呪文を唱える

現実は無情にも

中西:んん…眩しい…

〇〇:…

なにしてん。このマルパンマン。

落ち着け俺。
今日の夜、確かに中西さんは和の部屋に行ったはず。

男子禁制ガールズルールとか理由のわからんこと言ってたし。

〇〇:なのに…何故ここにいる…

悩むのはとりあえず後だ。

今は最優先にしなければならないことがある。

それは

〇〇:証拠隠滅…
こんなところ和に見られたら、いよいよ俺の命は無いぞ…

頼むから起きてくれ。

揺すっても揺すっても、一向に起きる気配のない彼女

クソっ。
気持ちよさそうに寝やがって。

てか…

〇〇:なんて柔らかそうなほっぺなんだ…

明らかに丸みを帯びた頬
雪見だいふくのように白い肌

少しだけなら…

思考の働かない寝起き

目の前に眠る美少女

むしろ頬に人差し指だけ伸ばすのは、ある意味紳士的かもしれない

〇〇:うわっ。柔けぇ。
これ永遠に触れるな。

ムニムニと頬を何度かつつく

〇〇:てか、ここまでして起きないって…

中西:起きてますけど?

!?

人差し指を指され凹んだ頬

そこに反発力を加えるように微笑んだ笑み

〇〇:…おはようございます。

中西:気持ちいいですか?

〇〇:何がでしょうか。

中西:人差し指を指したまま言い逃れが出来ると思ってます?

〇〇:クッ…クソ…
やめろユビー。
勝手に人前で動くなってあれほど…

中西:それ右手に寄生するやつですから。
人差し指ピンポイントに寄生しませんから。

ですよね。知ってます。

中西:いいのかなぁ。
和にまた言っちゃおうかなぁ。

〇〇:中西さん…
つまり…俺に死ねって言うんですね?

中西:違いますよ。
一つ、私のお願い聞いてくれたら秘密にします。

お願い。

乃木坂メンバーのお願い。

5期生のお願い。

つまり…

〇〇:地獄に落ちろってことですね?

中西:…〇〇さん。失礼が過ぎると今すぐ叫びま…

〇〇:ごめんなさい。
嘘です。冗談です。
僕に出来ることならなんなりと。

中西:いい心掛けですね。
大丈夫です。簡単なことですから。

そういった何度も命の危機に巡り合ってきたんですが

中西:私のことアルノって呼んでください。

〇〇:…え?
それだけです…か?

中西:はい。簡単でしょ?

あぁ。そっか。
女神はここにいたのか。

〇〇:ありがとうございます。
アルノさん。

中西:やっぱり〇〇さんは馬鹿ですね。

…はい?

中西:私のお願いが聞けないんですか?

〇〇:いや…だから…いまアルノさんと…

中西:私は何と呼んでと言いました?

〇〇:アルノと呼べと。

中西:ですよね?

つまり…

〇〇:…アルノ。

中西:うん。あと敬語も外してね。

これはどういう風の吹き回しだ?
俺はなにか決定的な弱点でも握られるのか?

中西:そんな警戒しないで。
私はただ、専属マネージャーと仲良くなりたいんです。

そう言う彼女の顔には、嘘偽りなど微塵も感じさせない笑みが咲いていた

〇〇:…うん。じゃあアルノで。

中西:うん。よろしく〇〇。

人生ってホント分からんな。
つい最近までお先真っ暗だったのに、いつの間にかアイドルと呼び捨てで呼びあえる仲になるなんて。

中西:早速だけど、身体起こして〜。

〇〇:もう目醒めてるんだから自分で起きなよ。

中西:いいのかなぁ〜。

はい?

中西:私、自分で起き上がるのすんごーく時間かかるよ?

〇〇:それがなにか問題…

…あるな。問題アルノ。

中西:その間に和が来たら…

言葉を遮るように〇〇はベットから抜け出し、アルノに手を差し出す

〇〇:はい。起きるよ。

中西:ノンノン。

はい?

中西:片手じゃ心配で握れないなぁ。

え、マジ人間変わりすぎちゃう?
なにこのアマアマアイドル。

〇〇:あぁもう!
早く起きてくれ。

〇〇が両手を差し出す

中西:ほい。

中西はそれをガン無視し、彼の胸へと飛び込む

〇〇:ちょ!?なにし…

中西:ずっと背中向けて寝るんだもん。
専属マネージャーから元気もらいます。

…ダメだ。ニヤけるな俺。

…やべぇ…くっそ可愛い…
めっちゃいいニオイするし。

中西:ねぇ。

〇〇:ん?

クッ。なんて強い上目遣いなんだ…

中西:私推しになった?

〇〇:アルノ…

中西:フフ。じゃあ推し変ってこと…

〇〇:それは無理だ。
この世はさっちゃんしか勝たん。

中西:…今すぐ和呼んでいい?

〇〇:…推し増しで手を打ってくれ。

中西:しょうがないな。

中西は〇〇から離れ、扉へ手をかける

部屋を後にする直前

中西:いつか私単推しになってくれたら…
嬉しいな。

バタン

〇〇:え、可愛すぎん?
俺の担当アイドル可愛すぎん?

…いかんいかん。落ち着け。
こんなんじゃ仕事にならんぞ。

とりあえずリビング行くか。

〇〇:あれ。和まだ寝てんのかな。

リビングに入るなり、見慣れた義妹がいないことに瞬時に気付く

中西:…フフ。

…なんか笑ってるし。しかもあの笑い方…

中西:〇〇に届いてない?

〇〇:ん?なにが?

中西:これ。

中西は左手に持ったスマホを指差す

〇〇:届いてないって…
あ。LINE来てる。家にいるなら直接…

和L:愛しのあなたへ。

出だしから全力でミスってんな。

和L:急遽撮影が入ってしまい、あなたの愛する私は仕事に行きます。
私がいなくて心臓が張り裂けそうだとは思うけど、これを見て元気だしてね。

…すげぇなぁ。
朝から全力で自撮りしてるやん。

和L:追伸
帰ってきたときの選択は、ご飯でも、お風呂でもなく、お義兄ちゃんにします。

〇〇:なんか変なメッセージ来てた。

中西:なにが来てたかは知らないけど…

…忘れてた。
和がいないってことは…

中西:二人で楽しもうね。

…絶対間違いだけは犯すなよ。俺。

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