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忘れようとしても…

 だいぶ昔の話。ある方に送るメールに「昨日のことは、もう終わったこと。忘れましょう」と打って返信しようとしましたが、ふと指を止めました。
 「そんなこと、もう忘れてしまいましょう」と言われても、簡単に忘れられないから、いつまでも悩んだり、クヨクヨしたりしているわけでして...。
 「忘れる」という行為は「恋におちる、眠りにおちる」と同様に、「いつのまにか、そういう状態になっている」現象であって、自らの意志で、なんとかできるものではない。「覚える」という行為は、覚えようという意志があればできますが、「忘れる」は意図的にはできません。
 「このことは、忘れましょう」と言われたら、「忘れなきゃ」という気持ちがプレッシャーにもなり、かえって忘れられなくなります。

 作家の宇野千代さんは、このあたりの「心の綾」を、次のフレーズで見事に突いてくれています。「忘れたければ、新しく別の何かを始めなさい」。

 「何か新しいことを始める」。これなら、自らの意志でやれます。新しいことに夢中のときは、悩みのことなど(忘れようとしなくても)忘れているものです。
 ただ、「夢中になる」のは、先ほどの「恋におちる」と同様にいつのまにかそうなっているのであって、意図的に夢中になることはできません。だから、たくさんの新しいことにトライして、夢中になれるものに出くわす幸運を待ちましょう。

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