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犬のクソみたいなオンラインゲームの外交の話

 くだらねえ…。

 くだらねえと思いながらも、つい時間を使ってやってしまうのがオンラインゲーム、そのゲームに人が関わって軍団(ギルド)ができる以上、人の扱いに慣れた海千山千が集うのが軍団同士の外交の場、ということなんですよ。

 そして、ゲームが詰まらなくなり、閉塞感が高まると、それまでアクティブだった人たちが引退し、活気のあった軍団は戦力が不足して限界集落のようになる… それがオンラインゲームの宿命であります。やり甲斐と引退の隣りあわせ、それが村ゲーム(村ゲ)であるならば、私たちはなぜ外交に力を注ぐのでしょう。ただでさえ、現実社会の人間関係や組織勤めはストレスフルなのに。

 無関係の人も騒動に巻き込まれている人も、先に三行まとめを書いておくよ。より詳しく知りたい人は本文を読んでね。

<語句の説明>
三國志覇道
… この記事で取り扱うオンラインゲーム。村ゲ。コーエーテクモ製。
コーエー株主会… 私が団長をしている、9鯖全体で21位ぐらいの中堅窃盗団。元「孫権親衛隊」
都市… 本作品の重要拠点。高いランク順にSS、S、A、B、Cとある。
長期イベント… 三國志覇道で現在行われている微妙な仕様の長期イベント。中堅以下の軍団に出番がなさ過ぎて引退者多数。現在解放されている最高ランクはA都市まで。
巴蜀… 長期イベントのために割り振られた軍団が所属する勢力の一つ。残りはもちろん曹魏と孫呉。
とらきち氏… コーエー株主会の主力にして宿将(廃課金)。のち、巴蜀勢力の外交代表となり、コーエー株主会にA都市をもたらす。
<三行で説明>
・私が『三國志覇道』を引退しかかったため、私の代わりに「コーエー株主会」の外交、ひいては巴蜀の外交代表として宿将・とらきち氏が立ち、私が好き放題彼のやりたいようにやらせていた。
・とらきち氏が外交代表として成果を挙げ、コーエー株主会はA都市を確保でき、とらきち氏主導で呉蜀同盟が成立した。
・ところが、とらきち氏は策を練り、引退を装って公には連絡を絶ち、巴蜀軍団を混乱させ、一部を魏蜀同盟として成立させて、魏(赤兎馬、RAVENS、ZENITH、桃園結義など)VS呉(天武、天翔・飛翔旧ノア連合など)の二大対立にしようとした。そして私はお詫びの旅へ――

 ということで、私が団長を率いている『三國志覇道』9鯖の軍団「孫権親衛隊」は、このたび運営が仕込んだクソのような長期イベントの割り振りで無惨にも巴蜀に振り分けられ、軍団アイコンが劉備さんになってるのに軍団名は「孫権親衛隊」という間抜けな事態となりました。どうしてくれるんだコーエーテクモ。少しは配慮しろ。

 ということで、どう転んでも優遇されることを期待して軍団名を「コーエー株主会」という神々しい名は体を表す文字列に変更したんですよ。我が巴蜀にコーエー株主会あり。どうだ、格好いいだろう。

 とはいえ『三國志覇道』もサービス開始から半年以上経過し、昨夜も生放送があったようですがゲーム性を抜本的に改善されるようなアップデートは発表されませんでした。我が9鯖トップ団体「赤兎馬」を率いたノブタン大先生もついに一足先に引退を発表、9鯖界隈にノブタンロスが発生しました。

引退するノブタン氏や鯖のみんなと記念撮影できたのはいい思い出です。


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 他方、私もなんだかんだリアルが忙しいのでゲームどころではなく、日々の泥棒行為もそこまで熱心にできる状況になくなってしまったため、もはやこれまでかとリアル親戚にアカウントを渡して冷温停止となりフェードアウト気味の引退をしていたわけですね。

 しかししかし、そこは結束は固い泥棒集団「コーエー株主会」、女神と崇める襟川恵子大先生の迫力ある画像が掲げられたDISCORDで団員たちからの熱い慰留の声がこだまし、私は蘇った… 名ばかり団長、面倒くさいことはすべて部下に放り投げ、問題が起きたら誰よりも先に現地に駆け付け土下座する要員として。

 というか、マジ忙しいのでほんと引退しようとアプリ削除まで終えていたところからの復活なので、気分的に完全にしおしおしていたため、先週は移動時間も使いながら泥棒行為に精を出していました。せっせせっせ。しかし往年のスコアにはまったく届かず、12,000止まりと、衰えを実感せずにはいられないのでした。

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 その間も、巴蜀は各軍団が頑張って攻略を繰り返し、筆頭の「わっしょい華炎」、「VERSACE」、「天武三国志」、「真梁山泊」、「希望の旗」、「豪放磊落」など主力軍団と、私ら戦闘と泥棒にしか興味のない「コーエー株主会」とでガッチリ組み合って、この三国時代を乗り切ろうと頑張っていたのであります。

 その「コーエー株主会」の主力であり、宿老であったとらきち氏が巴蜀連合の外交代表となって、巴蜀全体の勢力管理から都市攻防の作戦、さらには巴蜀全体の利益のために曹魏、孫呉との外交を一手に引き受けていたわけであります。

 そうしましたところ、あれよあれよという間に中堅軍団にすぎない「コーエー株主会」は巴蜀の重要なプレイヤーとなり、戦闘大好き集団として隙あらば槍もって攻撃する向こう見ずな泥棒として珍重されて、ゲーム内でそこそこ重要なAランクの都市「江陵」を確保するに至ります。おおすげえ、クズ武将が集まったゴミのような中堅軍団なのに、とらきち氏の精励で皆様のご理解を得てA都市まで確保できてしまったぞ。

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 さらには、戦力的にどう見ても上位の曹魏を敵とし、2位目の孫呉と同盟を組んで巴蜀もそこそこ頑張れる状態に漕ぎ着けます。さすがは外交代表、我らがとらきち氏よくやった。

 私も面倒くさいので、とらきち氏がそこまで活躍するのであれば、一切を任せるのが一番であると考えるようになります。合理的! 燃え尽きない程度に風を送りつつ、とらきち氏を信頼して邪魔をするまいということで、巴蜀の首脳陣チャットにすらも加入せず、同じく巴蜀に属して援軍や傭兵、人事交流としてやって来る巴蜀各軍団の皆さんが楽しく居心地よく遊べるよう腐心します。ようこそコーエー株主会へ。よく来たね、ゆっくりしていってね。

 この『三國志覇道』、ゲームルールは村ゲですが、とにかく仕様がヌルく、しかもシーズン目標が設定されていません。鯖のね、終わりがね、ないんですよ。普通、全部制覇して献帝を擁して玉璽を得たらその軍団の天下統一でシーズン終了とか、あるでしょ、普通そういうの。

 ないんですよ。これが。

 しかもね、例えば戦争に負けて、誰かに自分のお城を攻め落とされるじゃないですか。でも、倉庫の大きさと資源確保の技術レベルで設定された隠し資源量以上の溢れた資源を奪われるのと、お出かけしていた全部隊が無事壊滅するだけで、実害はほぼゼロに近いんですよね。

 負けても、実害がないんです。

 あるのは、アップサイドだけ。重要な各ランクの都市を落としたり、拠点を確保したり、武将のための武器や素材を集めたり、武将を強めるランクアップ素材を集めたり、戦争にリスクがない割に、リワードが概ね農民仕様になっているわけであります。

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 そうするとですね、「カンスト」した人から引退するんですよ。アクティブで、頑張ってやってきた、廃課金から引退していく。個人的に目標にしていたツトムッチ氏や雪の宿氏、華印氏があっさり引退したのはショックでした。私が旗揚げの頃から頼りにしていた二人の軍神・ラキシス・ゼリウス両氏も、情勢分析官兼指揮官として頼りにしていた中島鉄人氏も、雑用を押し付けていたすこる氏も、チャット仲間のりおん氏も、トオル氏もなべやき氏もひぐま氏も当初のメンバーはみんな引退してしまいました。

 それでも、残された私は涙を拭いて軍団を団長として率いるのです。窃盗団だけど。はっきり言って、泥棒しかやってこなかった。休戦貼ってない高レベル城を見かけたら片っ端から高順や夏侯惇が投石機ころころ引っ張って襲いに行く。何が楽しいって、それが楽しいんです。寝ているプレイヤーのお城の城門にぶち込まれる丸太。ドーーン。最高だ。私がやりたかったのはこれでございますぞ(by UC田豊)。

 ところが、そういう快適な泥棒ライフとは裏腹に、突然信頼しきって外交を任せていたとらきち氏が、突然軍団を脱退し、連絡を絶ちます。

 あー、これ謀反だよね。わかりますわかります。敵は本能寺にあり。この停滞したゲームで多数の引退者を出す、堕落した9鯖の現状をいまここで打破してみせる。なーんか仕掛けたそうにしてたから、燃え尽きた感出して引退の小芝居を打って、混乱したところで巴蜀を割ろうと思っているに違いない。

 ゆるゆると、連絡を取り合っていた他の軍団の皆さんからも、続々と情報が寄せられるようになります。もちろん、何も言わずに突然コーエー株主会を脱退したとらきち氏の行動を不審に思って連絡してくる人たちも多く、まずは私も「とらきち氏は引退したようです」とステートメントを流して動揺を抑えます。

 一般論ですが、村ゲでは全般的に次のようなゲームの流れを辿ります。

序盤:いくつか戦闘的な大手軍団が群雄割拠して、中堅以下の軍団や農民を養分にする
中盤:大手軍団の上位が下位の大手軍団を滅ぼし養分にする
終盤:残った大手軍団の上位プレイヤーが下位プレイヤーをキックし、上位プレイヤーだけが合流した軍団が成立して下位プレイヤーを養分にする
決着:この上位プレイヤーだけの軍団がサーバーを統一してシーズン優勝して終了

 問題は、先ほども申しましたように『三國志覇道』はシーズンはおろか大目標もはっきりせず、倒したプレイヤーは養分にならず、滅ばないでいつまでもその辺にいるのです。正直、これでは村ゲになりません。お気づきかと思いますが、攻められて負けて燃えたプレイヤーの損害がないということは、攻め勝って征服したプレイヤーにはリワード(褒賞)がないのです。

 それでも、本作品では「都市」というあまり価値のないリワードだけが出る仕組みがあります。この価値のないリワードを巡って、各軍団、各勢力は戦争を強いられるのです。引退者が出るのも仕方のないことだと思います。

 おそらく、とらきち氏が立場を賭けて取り組んでいるこの博打のような外交も、つまりは巴蜀が孫呉と同盟して対曹魏で争っている状態では9鯖がマンネリな状態に陥り引退者を増やすのではと危惧して、巴蜀の一部を割り、「曹魏&一部の巴蜀」VS「孫呉&一部の巴蜀」という二大大戦にしたいと考えたのでしょう。ゲームチェンジにより、一層ゲームのイベント性を流動化させて、中堅以下の軍団にも重要な都市を持てるようにし、引退者を減らして活気を取り戻させたいと考えたのではないかと思います。

 問題は、巴蜀はただでさえ戦力的には劣勢だったのにさらに分割され、魏につこうが呉に入ろうが「魏VS呉で得た分け前を頂戴する」立場に転落します。これは、とらきち氏が悪いのではなく、長期イベントの仕組み、仕様が悪いのです。さすがに何週間も引っ張れる村ゲ仕様じゃありません。なんでこんなのを長期イベントにしたんだよ。

 結果として、とらきち氏の電撃行方不明で混乱をきたしたあとで瞬く間にとらきち氏の企てが知れ渡ると、誰もが巴蜀の絶望的な不利を感じ、物凄い勢いで「コーエー株主会は何をしているのか」という話になり、引退を撤回して楽隠居をしていた団長のこの私が、皆様に超土下座をしなければならない状態に追い込まれてしまいます。

 また土下座すんのかよ。

 申し訳ねえ。ほんと申し訳ねえ。混乱させた理由は私にはないんだけど、責任はあるかもしれないからお詫びするほかございません。事態の収拾を図りつつ、お騒がせして本当に申し訳ございませんでしたという、なんというか、日常生活で私が日々体験していることをゲームにおいても今回も再び味わうことになるのでございます。

 まあ、こんなの見捨ててゲーム引退して逃げちゃえばいいじゃん、という意見もたくさん出るわけですけど、そこはねえ、滅亡の美学ってやつですよ。残された他のプレイヤーは、事情も知らずに時間を使い、課金をし、いきなり訪れた良く分からない問題に直面し、愕然とすることになります。そういう状況で、いくら引退を決めていたとはいえ私は世界を、プレイヤーを見捨てることはできない。滅ぶ~ 滅ぶ~ とか言いながら、劣勢の現状やバラバラになる同盟に対して、それでもまだ俺たちは頑張れる、やっていけるんだ、鉢巻き締め直して前を向いて行こう、そういう気持ちで、アテはないけど歩き続けてこそ人生だと思うんですよね。ただでは死なない。まだやっていける。みんなで力を合わせよう。いままで以上にイケるはずだ。そう信じて、生きていくんです。たとえ徐々にプレイヤーが減りゆく、衰亡が約束された世界だったとしても。

 そして、他の村ゲと違って、殺されても死なない、心が折れない限りいつまでも城はそこにある本作品は、外交で談合して上位を独占してリワードを稼ぐことが目的になります。しかしながら、そうした神々の争いもカンストという天井にぶつかると、黄昏が起き、そして引退へと転がっていきます。翻弄されても死、仕上がっても死、そういう環境の中で使う時間とカネにどのような価値を見出すかが、プレイヤーとしての真価だと思います。

 とらきち氏の外交的仕掛けはそこに大きな漬物石を投げ込む展開となったわけですが、ゲームとしての変化を求めて刺激的な環境づくりをすることで引退者を減らしたいという意味で、善意だったと認識しています。私は。

 とらきち氏には、ありがとう、ですよ。しばらく、引退できません。



神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント