「中華ファーウェイ社は何で悪いのか結局まだ分からない」という人への補助線

　私が毎月発行している有料メルマガ『人間迷路』で、前回ファーウェイ社を取り巻く問題についてのリンク集的まとめ記事をお送りしました。

The Book Project 夜間飛行 | 受信箱に本が届く

　そしたら、大変な好評で、もっと詳しく知りたいよ的な話を良く頂戴するんですよね。とはいえ、業務上知り得た公開情報ではない内容を有料とはいえ披露するわけにはいきませんので、概略や考察の部分はちょっと整理してお送りしたいと思っております（有料部分になりますが、ご了承ください）。『人間迷路』では、毎月3回ぐらいに渡って私の個人的な関心事や時事問題についての解説をお送りしております。ご関心のある方はぜひご購読賜れますと幸いです。

　また、中国脅威論の中核になる議論は、先日出版された『China 2049』でかなりの部分が抽象的ながら記述されています。日本語版も出ました。

China 2049

　原題は『The Hundred-Year Marathon』。中国の百年計画の意味であり、長期的視点に立って中国は国威高揚を目指し覇権国家になるべくアメリカほか世界を騙してきた、というニュアンスの本になっています。もちろん、原著者のPillsbury（ピルズベリー）さん自身も本件回顧録においてはある種の保身めいた「我々は中国に騙されていた」という文脈をドーンと骨子に置いているものですから、ある程度、米中間の諍いを知っている人にとっては「なるほど、だからアメリカは超党派の対中強硬派が出てきたのか」と理解ができる反面、日本からすれば「ほら、いわんこっちゃない」という話でもあるわけです。

Hundred-Year Marathon

　米中対立に至る情報は各分野・多岐にわたり、なかなか一筋縄で読み解くのもむつかしい世界ではあるのですが、ファーウェイ（HUAWEI、為華）社に関して言えばEE Timesでソフトバンクグループが買収した英ARM社に関する記事を補助線に読み解くことができます。

Huaweiを手放せなかったArm

　繰り返しになりますが、ARM社はソフトバンクグループで、3.3兆円で買収後の2016年から極端にEBITDA（Earnings before interest, tax, depreciation and amortization；税引き前経常利益）が減少しています。世の中ではWeWorkの大穴を見て孫正義さん大丈夫かって思っていたかと思いますが、こっちはこっちで大変なことになっています。それで、中国ファーウェイ社を主要顧客としたARM CHINA社が立ち上がるわけですけど、大変な安値で知的財産をARM CHINA社に移したと言われることになります。

https://www.eetindia.co.in/news/article/18050802-arm-transfers-ip-to-chinese-joint-venture

"Chinese organizations prefer to acquire technologies that have been fully developed by Chinese companies with this JV’s establishment, which will enable Arm-based semiconductor intellectual property to be tailored for the Chinese domestic ecosystem and makes a broader portfolio of technology accessible to Chinese partners for China market needs," the statement read.

　ARM社と言えば、相応にIoT時代の枢要なアーキテクチャを抱える会社であり、オープンなRISC-Vに押されて収益性を失いつつある状況で、これを中華が合弁で取りに行くぞとなるといろいろと気になることも出てきます。

ファーウェイのスマホを分解、消えた米国部品

　外形的に部品を見てすべてのアメリカ製部品がパージされたとは分からないわけですが、ファーウェイ社の活動を見ていると米中経済貿易摩擦が状況をより悪くすることをきちんと見越して、粛々と手を打っているという風にも見ることができます。アメリカがいまのファーウェイ社ほか中国系製造業の躍進を見て「しまった」と思うのもむべなるかなという印象はあります。まさかその片棒をソフトバンクグループが担いでしまったとは。

　ここから先は『人間迷路』で書いた記事に少しアップデートしたものをお送りするわけですが、国際政治にファーウェイ社が翻弄されているように見えるのは、やはり中国共産党・中国政府と、ファーウェイ社が（民主主義国の常識から見て圧倒的に）一体化している部分に原因があるように見受けられます。

　例えば、