孫正義さんは検査キットではなくて、人工呼吸器を100万セットほどイタリアに寄付すればダイレクトに人を救えたんじゃないか(追記あり)
誰しも読み間違いというのはあって、例の孫正義さんの突然Twitterに出てきて「検査キット100万個プレゼント」が猛烈な逆風に見舞われていたわけですね。
そんな中、ラストマン・スタンディングばりに敢然と孫正義さん支持に回ったのは、みんな大好き茂木健一郎せんせです。60%当たる占い師より、100%外れる占い師のほうが有能というコンセプトを貫徹していて、ほれぼれするような一節でした。
で、たぶん孫正義さんは前回苦境のときにおきた9年前の福島第一原発事故という凄惨な問題に対して、突然「100億円寄付します」とブチ上げたわけですね。
結果として、これらの資金は直接の寄付というよりはソフトバンク(当時)のCSR事業として吸収されて、確かに一部のお金はきちんと現地に届いたけど寄付先は財団法人「東日本大震災復興支援財団」になってて、まあ善意は単なる善意では終わらない仕組みになっている、と言えます。
見てると、どこかで見たような人物が複数入っていますが、まあ見なかったことにしましょう。
その後、ソフトバンクは太陽光発電など自然エネルギー関連も含めた各種事業に進出することになりますが、当時の菅直人総理との間で蜜月に進められた「太陽光発電はキロワット当たり42円」という法外に高い金額での政策決定にいたり、そこでの最大の受益者こそ孫正義さんおよびソフトバンクであったことは言うまでもありません。
これで一息ついたわけではないでしょうが、日本国内でみずほFGなどから集めた借金や、ヤフージャパン(当時;現Zホールディングス)やソフトバンクモバイル(当時;現ソフトバンクKK)が稼ぎ出したキャッシュフローを元手に、世界での大鉄火場・新興市場に打って出て、ソフトバンクビジョンファンド(1号)を立ち上げ、2013年には米携帯キャリア3位のスプリントを買収。さらにはArm、UBER、OYOなど世界の有力ベンチャー企業の買収や投資に打って出て、これまた見事に散財しておるわけです。
そして、サウジアラビアの問題や中国・アリババとの深い関係なども懸念視され、アメリカ政府とは極めて悪い関係に陥りつつあるところで、コロナウイルス禍がどーんと出てきました。投資した株価を担保にして次の投資をするような大回転もありつつ、ただソフトバンクグループの資金繰りの根幹はこの辺の投資価値が高い状態をキープできることにあるのです。
だからこそ、ソフトバンクグループはあれだけ世界で戦っている風に見せながら、実際にはみずほFGを中心とした日本の銀行団に3,000億円の融資を打診しとるわけです。要は、派手なことをやっていながらキャッシュが回らなくなってきたので、博打の種銭を調達するために古女房扱いしているみずほさん以下日本の銀行に「おら、カネ貸してくれや。博打で倍にして返してやるからよ」って状態になっているんじゃないかと思います。表向きは、経営に失敗したWeWorkネタが前に出ていますが、つまり他のところはどこもソフトバンクにカネは貸さないってことですよ。
そこへコロナウイルスで世界的に証券市場がダウントレンド入りし、また、得意であった新興市場やベンチャー投資も「ISO(Initial Softbank Offer)」などと揶揄されるぐらい超割高で仕入れ続け、さらにはソフトバンクビジョンファンドの責任者であったミスラさん(Rajeev Misra; Mr.)のスキャンダルも飛び出し、もうゴチャゴチャになってるんですよね。
で、例によって困ったときにカネをばらまく作戦に出て、民忠を上げようという流れになります。思い返せば、ヤフーADSLではパラソル部隊が不要不急のモデムを配り、前述の福島第一原発では100億円寄付とぶち上げて租税回避も疑わせるスキームで事実上払うべき税金をばら撒いていたように見受けられます。
そして、今回の件では検査無料キットの配布ということで、いままさにソフトバンクグループが進めようとしている医療基盤プラットフォームという利益に直結する話は指摘されるべきだと思うんですよ。
もちろん、このNeXEHRSという仕組み自体は必要とされ、優れたものであるとは思いますけれども、要するに病院の医療基盤システムをソフトバンクのインフラのうえで完結させましょうというソフトバンクグループの商売に直結する話です。
ここには対抗馬として他のキャリアやベンダーも多数構想を打っている状態で、今後のデータ資本主義の根幹として「日本人の健康情報」はとても価値があると分かったうえでのプロジェクトであろうことは間違いないのです。
そこへ、検査キット100万個無料配布という打ち手が何を意味するかと言えば、また配布のための財団的なハコができ、ソフトバンクの息のかかった政財界・法曹界の面々が理事など役職につき、いかにもお墨付きを出しますという形で無料のキットが配られるにあたり、「ソフトバンクグループが推進する医療システムに準拠すること」とでも但し書きをされたらどうなるのか、という話です。
世の中にはタダはないのだけれども、毎度どさくさに紛れて自社に有利な事業を誘導するようなことがあるのだとすれば、それは政商であるという指弾や批判を受けるのも致し方ないんじゃないかと思うんですよね。
本当にソフトバンクが世界企業であって、この問題にビルゲイツさんなみに正面から人命を救おうという取り組みに資する企画をしたいなら、いままさに人命がどんどん失われていくイタリアに対して絶対的不足状態の人工呼吸器をたくさん送りますぐらいのことをしたほうがよかったんですよ。
でも、実際には「彼らの商売の近くで受益がありながら、慈善事業のように振る舞う」というプロセスになっちゃっているのは、もしも本当に善意でやっているならもったいないなと思うのです。しかも、検査キット配布ってみんな反対するようなネタで。
ソフトバンク広報も、メディアからの取材に対して「孫正義が個人的な考えではじめたこと」と回答していたようなので、孫正義さん一流の勘で決めたのだろうと思います。が、周りにそういう状況であると誰も助言をしていなかったのか、あるいはこれでやるぞと正義さんが思い込んで突っ走って誰も止められなかったのか分かりませんが、以前の孫正義さんの連戦連勝時のノッッている時期なら絶対にやらんような「完全はド外し」を今回やったというのは頭の中にメモっておきたいと思います。
老婆心ながら、ダイエーの呪いがソフトバンクに舞い降りないことを祈念してなりません。
(追記 18:05)
一部で、検査キット拡散を主張している面白医師・上昌広さんが取締役を務める、医薬企業「SBIファーマ」がソフトバンク系列なので、関係があるのではないか、という情報が流れていました。
ただし、これは企業情報にあるとおり、ソフトバンクグループではなく、元ソフトバンクの北尾吉孝さん率いるSBI社が株主であり、関係については留保したほうがいい情報だと思います。SBIホールディングスとは、旧社名「SoftBank Investment」の略でSBIと名乗っているだけで、ソフトバンクとSBIはスケベ椅子と電気椅子ぐらいの違いがあります。ご留意いただければと存じます。保留案件です。