カルメン

すきな踊り子さんが「カルメン」というショーをされる。
メルメのはず。事前に原作や映画などを見た。

なかでも、宝塚の「激情-ホセとカルメン-」がよかった。
99年の宙組初演版。原作をもとに、宝塚だからこそ描ける物語になっていた。

主人公は、男役トップの姿月あさとさん。

主人公ホセが愛に翻弄され、落ちるさまは男臭さや美学がある。
愛ゆえ不自由になる、不器用という名の純粋さ。
ホセはある種の求道者。男役トップの神性と苦悩を見る。

一方のカルメン。

原作ではファム・ファタールとされ、激情でも奔放さは変わらない。

しかし、宝塚のカルメンは、原作以上に魅力的。
ホセとカルメンがはじめて逢瀬をとげようとするシーンが心に残る。

軍の門限でやむなく帰投しようとするホセに、カルメンは叫ぶ。

「わたしとあんたは、違う種類の人間。違う夢を見てる。規則、規律、そればっかり。あんたに夢は必要ないの。例えば、そう、あんたは犬。狼はあたいさ。すきに走って、すきに叫んで、すきに鳴いて生きてるんだ。犬は狼のこころはわからないよ。狼のよろこびが、怒りがわからない。おとなしくしっぽを振っておいで。軍隊の塀の中で、とぼけた犬たちを一緒に」

原作はここまで激しくないが、なぜ宝塚は肉付けしたか。
なぜ自分は惹かれたか。

自分には、ホセ(男役トップ)とカルメン(娘役トップ)が現実世界の不自由さの象徴におもえた。
カルメンの叫びは、それらを破壊する、人間の本能的で自由な愛の賛歌のように。

男役と娘役。
宝塚スターと観客。
女性と女性。

激情のカルメンは偏見や差別、性別を超え、本能のまま生きる、純粋で止めることのできない恋や愛の象徴とおもわずにはいられない。
激しいが、いつわらない。だから、胸を打つ。

すきな踊り子さんの「カルメン」は、どうだったか。
カルメンが、そこにいた。

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