ギルバート・グレイプ

同じ監督でもマイライフ・アズ・ア・ドッグより家族愛を感じ、最後は私も開放感と希望感を感じました。

次男なのに一家を支えざるを得ないギルバート。
24歳といえば普通の男性は遊び盛りな年齢ですが、表情も暗く、地元の個人店で働く毎日。
知的障がいがありかくれんぼが好きな17歳のアーニー。
引きこもりで肥満の母親からは私の太陽と呼ばれてはいるが、いつもギルバートが面倒をみている。
家事手伝いのエイミー、アルバイトをするエレンと姉妹もいるがアーニーに関しては全てギルバート頼み。

正直この時点で私はどこが家族愛なんだろうと思いました。
引きこもりの母親を食わせるためという意味では歪な家族愛だと思いますが、不謹慎ながらこの母親が死ねばみんな開放されるのにと苛立ちを覚えました。
(この母親役のダーレン・ケイツさんは本当に過食症でこの映画が初主演らしいです。若かった頃の写真も本人で2017年にお亡くなりになりました。)

話が逸れますが私の母親は病気で働いておらず、生活保護費を受けながら生活しています。生活保護費は足りない分を支給するため、当時高校生だった私はバイトで得たお金を家に入れていました。今も同じことをしながら生活していますが、あの頃は私が長女だし、しっかりと家に納めなければと思っていました。
ある夜、何でこんな家に頑張って得たお金を入れなけばならないのだろう。友達は進学するため親からお金を出してもらっているのに。どうして私が!とそんな考えで頭がいっぱいになった私は情けなくて赤ちゃんの様に大泣きしてしまいました。
今ではそれが生活保護者の決まりだし、好きで実家にいるのだからと割り切っていますが当時はまだ割り切れてなかったのです。
なのでギルバートの気持ちに感情移入してこの映画を見ていました。

アーニーは無邪気でやりたい事を感情のまま遊びます。
タンクの梯子を登った時は本当にヒヤリとしましたが、ギルバートが拡声器で優しく降りてくるように促した時は本当にほっとしました。
保安官達には最後にしますとギルバートは謝罪しますが私は絶対に登るなぁと思いました。
私だったらアーニーを強く叱るけど、ギルバートは強くは叱りませんでした。
大切なのはわかるけど、それでいいんかい!と突っ込みたくなりました。

その騒ぎを見ていたベッキー。
トレーラーが故障し、この小さな町に留まることになります。

私は一眼見てこの女性ならギルバートに風を運んでくれると思いました。
ベリーショートで前向き思考なベッキー。アーニーにも優しく接してくれる。私はだったから重度の知的がい者が間近に来たら身体が竦んでしまいます。
海外はそんな事は気にしないのでしょうか?肌の色は気にするのに。
でも私は映画の話だからベッキーが気さくな女性だと考えることにしました。

ギルバートとベッキーがよろしくやってる間、アーニーはまたタンクの梯子に登ってくれました。やっぱりなぁ。
ギルバートはこれで最後にしますからと保安官に必死に頼みますが、アーニーは楽しそうにパトカーに乗せられ留置所に連れて行かれました。
確かにアーニーは無邪気で可愛いけど、一度くらい痛い目を見た方が良いんじゃないかと正直思いました。

それを聞いた母親は怒り心頭、家族総出で警察署に乗り込みます。私は最初この母親が早く死ねば良いのにと、思っていましたが7年も引きこもり歩くのもやっとな状態で愛しの太陽を取り戻すため重い腰を上げた母親に初めて感動しました。
また話が逸れますが私は中学生の頃不登校児でずっと家に引きこもっていました。なので外に出るのがどんなに勇気がいるのか分かります。それに加えて母親は超肥満。警察署に出入りする際、大勢の人達に笑われますがそれでも母親はアーニーを連れ戻します。

ギルバートとベッキーが仲良くなるにつれ、ついに故障したトレーラーが治ります。
そんなにギルバートが好きならこの町に住めばいいのにと思いましたが、明日にはベッキーは町を出て行くと言います。
そんなことも知らないアーニーは18歳の誕生パーティをベッキーに招待します。

グレイプ家ではエイミーがケーキを用意しますが、アーニーはそれを台無しにしてしまいます。
ケーキがないとパーティにならない!ギルバートは商売敵の大型スーパーでケーキを購入します。
19ドル以上、映画公開の93年の1ドルは111円とありましたから2109円以上。お店を出た瞬間、ギルバートの雇い主とバッタリ会ってしまいます。私も後ろめたい気持ちになりました。

家に帰りギルバートはアーニーにケーキに絶対触れるなと注意しますが、案の定アーニーは摘み食いしてしまいます。
ギルバートは19ドル以上もしたんだぞと激怒し、アーニーに手を上げます。2109円すら高いと言うのですからギルバートの稼ぎってさぞ少ないんだろうなぁと思うと更にギルバートに同情しました。
それでもあの店しかアーニーを受け入れてできる仕事はそこしかないと考えると、田舎って良いだけじゃないんだなと思いました。
ギルバートは多分初めてアーニーに対そして怒りの感情をブチまけ、殴ったんだと感じました。
車に乗り込み優しいベッキーの元へ走らせます、ベッキーは泣いているギルバートを抱きしめたまま眠りました。

日が昇り、グレイプ家へ帰るとパーティは思っていた以上に盛り上がっていました。
アーニーって町では相当愛されていたのかなと少し以外にも思いました。
てっきり避けられてるのかと思っていた自分に居心地の悪さを感じました。
ギルバートは庭を歩きアーニーを探します。木登りが大好きなアーニーは僕を探してと言います。
ギルバートはいつもと変わらずその遊びに付き合ってあげます。アーニーが怖がっていたらどうなっていただろう、本当に良かったと思いました。

でもパーティには母親の姿がありません、ギルバートは紹介したい女性がいると話しますがなかなか首を縦に振りません。
でも、ギルバートはその女性は絶対にお母さんを笑ったりしないと、すると母親は意を決して会うと言いました。
ベッキーは初めて母親ボニーと対面します。
ボニーはベッキーを受け入れて別れます。
ベッキーは約束通りパーティを楽しみトレーラーで旅立って行きました。

パーティ後、ボニーはベットに横になり眠りにつきました。
この映画で最大の謎が何故ボニーは急死したのか?
力を使い果たしたのか?どうなんでしょうか?

巨漢で笑いものにされるのを酷く嫌がったボニー、その遺体をどうやって外に運びだすか。
残された子どもたちはボニーの気持ちを汲んで、家ごと火につけます。

いきなり家具を外に持ち出すので何をしているんだろうと思いましたが、火をつけるとは思っていなかったので、びっくりしました。
最初に感じた歪な家族愛が本当の家族愛に変わったシーンで感動しました。

それから1年後、長女のエイミーは就職、反抗期だったエレンは転校。

そしてギルバートとアーニーは冒頭のシーンと同じくトレーラーを待っていました。
ベッキーだ!アーニーが走りながらトレーラーに向かいます。決して広くはないトレーラー内、ギルバートとアーニーは乗り込み、旅立ちました。
ギルバートが初めて町から全てから解放されるところで映画は終わりました。

やっぱりベッキーは風を運んでくれた。
青空の下、銀色に輝くトレーラーが颯爽と走っていく。
本当に気持ちの良い終わり方でした。

レオ様の演技が真に迫り天才だと思いました。
ネットで調べたのですが、レオ様は実際に知的障がいをもつ人達と交流し、文章では省きましたが、水嫌いで泥だらけになるシーンでは実際にお風呂に入ってなかったそうです。
アーニーと同じ年頃だと書いてありましたが、思春期の男の子がここまでするのは本当に凄いと感服しました。
今では熊みたいな見た目だけど、美少年で天才でガラスの仮面かよ!と思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
本当に面白い映画でした!

93年の1ドルのくだりですが、学がないためネットで調べ、計算しました。
もし、違うよ間違っているよと教えてくださる方がいらっしゃいましたら、コメントなど頂けると嬉しいです。

#ギルバートグレイプ