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野沢温泉外湯その二(長野県野沢温泉村)

仕事帰りに野沢温泉へ行く。遅い時間の帰路、23時まで開いているというのは有難い(一説には24時まで開いているという)。

共用の駐車場から歩く。いつもすぐに見つけられるのは秋葉の湯だが、ちょっと先を探してみようと思い、温泉街、というよりは宿と住宅地の中を歩く。

でもどうやら外湯のない方へ歩いてきてしまったようで、ぐるり一周して元の場所が見えてくる。じゃあこの三叉路を下に降りてみたら……と十王堂の湯を見つけた。

男湯は二階とある。公民館のような建物を二階へ上りステンレスの戸を開けると、何と直に浴室。壁に棚が設えてあり、靴と服を脱ぎ振り返れば十畳ほどの浴槽がある。こんな時間だが寝る前に来たのだろう地元の爺さんたちが三人、旅行客らしい若い人が三人(うち外国人が二人)が湯に浸かったり風呂の脇で頭や体を洗ったりしていた。

湯は白濁。硫黄の匂いがやや強い。つまり理想の温泉だと後で気づく。三分も入っていれば手足が痺れてくる高温は秋葉の湯と同じだが、疲れが湯に流れていくような強烈さがある。手が痺れたら出て涼み、また入るを三回繰り返して服を着た。

途中で入ってきた爺さんが何か紙を持って、眼鏡がなくて読めね、と言っている。先に入っていたもう少し若い爺さんはニコニコしているだけ。何度もそう言うので、読みましょうか? と声をかけると見せてくれる。何やら新年度の副区長が選ばれたようで、合否四人の名前を読むと、そうか〇〇は目立たねえからなと言う。若い爺さんと暫く誰がどうという話をしていた。

浴室を出る時に他人同士、おやすみなさいと言っている。外国人もムニャムニャと挨拶らしいことを言って出ていく。最後の三人、私は何て言おうか考えて有難うございましたと言ったら、先程の爺さんが有難うございましたと返事をしてくれた。どうやら彼が最後に鍵を閉める湯仲間の一人らしい。車へ戻る道で、あ、最高だったなあと嬉しさがこみ上げてきた。

#温泉

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