[五等分の花嫁二次創作]五つ子と数学する話:因数分解編③ #ごとます

前回までのあらすじ

風太郎は四葉に因数分解の問題を解説した。しかし風太郎は四葉から予想外な質問を受けてしまい、逆に宿題を出されてしまう。


【風太郎の宿題】
因数分解をする理由を説明せよ。

「ししし!上杉さん、宿題忘れちゃダメですよー」
「四葉、お前にそれを言われる日が来るとはな」
「それでは!そろそろ帰らなきゃ」
「おい、待て」
「ヒェッ!」
「お前の悪目立ちリボンは掴みやすくて助かる。さっきも言ったよな?俺からもお前に宿題を出すぞ。ちょっと待ってろ」
「しれっと帰ろうと思ったのにー。さすが上杉さん、なんでもお見通しですね」
「サボろうとするな!」

【四葉の宿題】
(1)以下の、因数分解の公式を証明せよ。
$${a^2-b^2 = (a+b)(a-b)}$$
(2)以下の、指数法則の式を証明せよ。ただし、$${p,q}$$は正の整数とする。
$${a^p \cdot a^q = a^{(p+q)}}$$
$${(a^p)^q = a^{pq}}$$

「いいか、これは数学の基礎、大事なところだからな。しっかり復習しておけよ」
「はい!それでは」
「四葉、もう帰るのか?」
「はい!本当にそろそろ帰らないと。上杉さんももう帰りますか?」
「そうだな、そろそろいい時間だ」
「じゃあ、途中まで一緒に帰りましょー!」
「お、おう」


夕暮れの、学校からの帰り道。今日は、他の姉妹はバイトやら仕事やらで、四葉と二人での帰り道だ。
「因数分解をなぜやるかなんて、1ミリも考えたことがなかったな」
「まだ言ってるんですか?私に言われたのがよっぽど悔しかったんですねー」
「ち、ちげーよ。家庭教師として、生徒の質問に答えられないのは良くないからな。考えてるんだ。それにしても、四葉、お前がそんな深い質問をしてくるとは驚いた」
「えっへん!私もやればできるんです。それにしても、上杉さんにも分からないことがあるなんて、私も驚きました」
「それはそうだろ。この世の中には分からないことばっかりだ。お前らの考えてることもさっぱり分からん」
「上杉さんは鈍感ですからね!女の子の気持ちももっと分かるようになったほうがいいと思いますよ。それにしても、因数分解をなぜやるか…?というのは、因数分解の気持ちってところでしょうか。上杉さんは、因数分解の気持ちも分かるようになったほうがいいと思います!」
「うまいこと言ったつもりか」
「じゃあ、上杉さんここで。また明日!しっかり宿題やっておいてくださいねー!」
「おう、またな」


夕暮れのアパートの二階。部屋に夕日が差している。
「ただいまー」
「四葉、おかえり」
「あっ一花、もう帰ってたんだ、おかえり!」
「今日は仕事が早く終わったんだー。他のみんなはまだバイトみたい」
「そっかー。じゃあ私は先に宿題やっちゃおうかな」
「おっ、偉いねー。お姉さん誇らしいよ」
「上杉さんに追加で数学の宿題出されちゃったんだー。上杉さんの鬼!」
「鬼!なんて言う割に、楽しそうにしてるけどね」
「そうかな?」
「どんな宿題出されたの?」

【四葉の宿題】
(1)以下の、因数分解の公式を証明せよ。
$${a^2-b^2 = (a+b)(a-b)}$$
(2)以下の、指数法則の式を証明せよ。ただし、$${p,q}$$は正の整数とする。
$${a^p \cdot a^q = a^{(p+q)}}$$
$${(a^p)^q = a^{pq}}$$

「しょ、証明…?」
「四葉、目が回ってるよ」
「うーん、うーん」
「フータロー君も中々容赦ないなあ」
四葉の携帯が鳴る。
「あれ、上杉さんからメッセージだ」

【風太郎からのメッセージ】
さっき出した宿題だが、ちょっと四葉には難しかったかもな
(1)だが、左辺を展開して、右辺になることを確かめるんだ
(2)は、試しに、$${{p=2, q=3}}$$の場合を計算してみろ。これも、右辺を計算して確かに左辺と同じになることを確かめるんだ
じゃあな

「上杉さん…エスパー!?私が宿題やろうとしたのをどっかから見てるみたい」
「怖いこと言わないでよ!さすがにそれは怖いよ。でもナイスタイミング。ヒントを見ながらちょっとやってみよっか」
「うん!まずは(1)から。右側、これを計算するんだよね」

$$
(a+b)(a-b)
$$

「四葉、計算できそう?」
「私に任せて!」
五分経過。
「うー…展開…?展開ってどうやるんだっけ…?」
「こうだよー。これは分かる?」

$$
(a+b)(a-b) = a(a-b) + b(a-b)
$$

「うーん?」
「えっとねえ、これはこういう公式を使ってるんだよ」

$$
A(B+C) = AB + AC
$$

「あ、これは見たことあるかも!」
「そうそう。この式に当てはめるとかっこを外せるんだよ。いまは$${A=a-b}$$、$${B=a}$$、$${C=b}$$だね」
「$${B}$$なのに$${a}$$にしていいの?でも、確かに…見比べてみるとそうかも」
「公式だからね。ともかく、こんな感じでかっこを外してみよう?今の公式を繰り返し使うんだ」

$$
(a+b)(a-b) = a(a-b) + b(a-b)\\=a^2 - ab + ba - b^2\\=a^2-b^2
$$

「最後に真ん中の二つの$${ab}$$は打ち消しあうね。これでできた」
「ほんとだ!できた!」
「これで解けたね。できたじゃん四葉!」
「ありがとう一花!」
「お姉さんに任せなさい」
「うへーあともう一問…。その前に一花、晩御飯食べない?」
「そうしよっか。私もお腹すいちゃった」


もうすでに外は暗くなっていた。二乃が作り置きしていてくれたおかずがテーブルの上に並ぶ。

「ししし、二乃の作ってくれるご飯はいつもおいしいね」
「そうだね」
「それにしても、ほんと一花は数学得意だよね」
「まあ他の科目よりは一応ね」
「あのね、一花は因数分解の気持ちって分かる?」
「えっ?因数分解の気持ち…?そんなこと考えたことなかったなー。フータロー君なら分かるんじゃない?」
「それがね今日因数分解の気持ちの話に上杉さんとなって、上杉さんってば分からなかったんだー。だから、上杉さんは女の子の気持ちだけじゃなくて因数分解の気持ちも分からないんですねって、言ってやったんだ」
「数学だったら、フータロー君にも分からないことは、私にも分からないな」
「そっかあ…。数学って難しいんだね」
四葉は晩御飯の最後の一口を口に運んだ。
「よし、ごちそうさま!」
「どうする?もう一問やる?」
「やる!一花、お願いします」


$${a^p \cdot a^q = a^{(p+q)}}$$

「フータロー君からのヒントというか問題によると、これを証明するんだね」

$${a^2 \cdot a^3 = a^{5}}$$

「なんかできそう!」
「これは左側を計算しよっか。$${a^2=a \cdot a}$$ってことだから…」
「こうかな?」

$$
a^2 \cdot a^3 = ( a \cdot a ) \cdot (a \cdot a \cdot a )\\= a \cdot a \cdot a \cdot a \cdot a \\ = a^5
$$

「おおおおお!これで右側と同じになったね」
「これで一つ目はOKかな。この調子で2つ目の式もやっちゃお」
「おー!」
「左側の$${{p=2, q=3}}$$の場合だから」

$$
(a^2)^3
$$

「だね。これは$${{a^2}}$$を3つ掛け合わせたってことだから」

$$
(a^2)^3 = a^2 \cdot a^2 \cdot a^2 \\ = a^{2 \cdot 3} \\ = a^6 
$$

「これで右側と一緒になったね」
「おーほんとだ!一花ありがとう!」
「どういたしましてー」
「上杉さんにも自慢しよっと!」

【四葉から風太郎へのメッセージ】
上杉さんからもらった宿題、上杉さんのヒントと一花のおかげで解けました!
私だってやればできるんです!
上杉さんも宿題忘れちゃだめですよー

「ししし」


上杉家。らいはと勇也と風太郎の三人の食卓。
風太郎は携帯を見ながら呟く。
「四葉…俺も宿題やらなくちゃな」
「風太郎、家では宿題の話は禁止だ!」
「ほんとどういう教育方針だよ。だいたい宿題は家でするものだろ」
「四葉さん!四葉さん元気?」
「ああ、今日も一緒に勉強してたんだ。相変わらずだぞ」
「久しぶりに四葉さんにも会いたいなー」
騒がしい上杉家の夜は更けてゆき、皆が寝静まった後が風太郎の勉強時間である。

次回へ続く


Special Thanks(参考文献)

  • 春場ねぎ「五等分の花嫁」

  • きさらぎひろし「やさしい高校数学(数学I・A)改訂版」

  • 結城浩「数学ガール」シリーズ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?