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Shibata's EYE

日々雑感

順天堂大学と松下幸之助、そして宇宙

東京御茶ノ水駅にほど近い文京区本郷に順天堂大学があります。 順天堂大学といえば、ここ数年は優勝から遠ざかっていますがお正月恒例の箱根駅伝で何度も優勝をしている名門校。また数年前には天皇陛下の心臓手術をされた天野医師の所属大学としても有名です。 順天堂大学は今から180年近く前の1838年(天保9年)に開学した蘭方医学塾がその始まりです。もともとお医者さんの養成学校だったわけですね。 実は意外と知られていませんが、順天堂大学の付属病院は「順天堂病院」ではありません。「順天

明治神宮の森にて100年先、1000年先を思う

初詣では日本一の参拝者を誇る明治神宮。 境内は広大な森の中にあります。 実はこの明治神宮の森、わずか100年ほど前まではただの荒地です。 つまり人工的に作られた森なのです。 明治天皇が崩御された後、神宮を建設しようという機運が高まりを受けて造営が決まり、現在の場所が選ばれたのですが、荒地だったため鎮守の森を作る必要があったわけです。 はるか昔、ここは広葉樹の原生林が広がっていました。鎮守の森には杉が合っているという意見もあったようですが、この事業を任された林学博士の本多

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襟裳岬に見た!人事を尽くして天命を待つの事実

襟裳岬といえば「何もない春です〜♪」の歌でも有名な北海道の岬です。 ここはかつて豊かな原生林が広がっていましたが、伐採が進んで砂漠と化してしまいました。 海に流れ込んだ赤土が海を真っ赤に染め、魚や昆布の水揚げは激減。住人の生活は困窮し、また日本でも有数の強風地域のため砂が家まで入り込む過酷な環境。 種を蒔いても風で飛ばされ、苗を植えても枯れてしまう。それを海草を敷いて土を作り、土中の排水のために溝を掘り、1本1本クロマツを植えるという半世紀にわたる人々の闘い。 そして最後

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ポットスチルが物語るジャパニーズウィスキー余市の魅力

ニッカウヰスキー余市蒸溜所です。 昨年始めて訪れた際、強い思いによって夢は実現することを目の当たりにし、勇氣と氣付きをいただきました。 私にとって、ここは特別な場所となったのです。 前回は雪の中でしたが、今回は真っ青な秋の空の下。清々しい空気の中での訪問となりました。 「マッサン」は終わってしまいましたが、相変わらず人気は続いているようで多くの観光客で賑わっていました。 今回の一番の収穫は、前回見ることができなかった蒸留棟の内部を見ることができたことです。 蒸留棟には

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漆で未来は変えられる

NPOウルシネクスト理事長の漆とSDGsについてのコラム。公益財団法人 森林文化協会発行グリーン・パワー誌に寄稿した全11回の連載

ウルシの木の活用プロジェクト

日本で使われている漆の95%以上は中国からの輸入に頼っていますが、重要文化財の修復用などを中心に、国産漆の需要は急増しています。需給バランスがひっ迫する中、各地でウルシの木を植える活動が始まりましたが、一方で育ったウルシの木から漆を採取する漆掻き職人は全国でも30〜40人と少数で高齢化も進んでおり、このままではウルシの木はあっても人手がなく、漆の採取できないという状況が予想されます。 職人の育成も始まっていますが、漆掻きの仕事だけで生計を立てることが難しいという経済的課題が

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電気工事と津軽の馬鹿塗り

今年の夏も暑かった!もはやエアコンは快適に暮らすためのものというよりは、命を守るために必須なものとなりました。今年は在宅勤務の広がりや、10万円の定額給付金も後押しになってエアコン需要は例年以上に高まり、取付け業者さん達も大忙しだったようです。 青森県弘前市で電気工事業を営む高橋武敏さんもそのお一人ですが、実は高橋さんは電気工事のお仕事を通じて、漆や伝統工芸で暮らしを豊かにするとてもユニークな取り組みをしています。 弘前市といえば津軽塗が有名です。色漆を何重にも塗り重ね、

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日本の木の文化は心のよりどころ

漆といえば、多くの方はお椀や重箱といった「漆器」をイメージされるのではないかと思いますが、神社やお寺などの建造物にも多くの漆が使われてきました。 去る2020年8月19日、ご縁あって、私が代表を務めますNPO法人ウルシネクストは、有志と共に東京の浅草神社に今年採取した国産漆と漆染め抗菌マスクを奉納し、新型コロナウィルス感染症早期終息祈願祭を行いました。浅草神社は浅草寺の東側に位置し、毎年200万人もの人を集める三社祭で有名ですが、その社殿は総漆塗りによる権現造り風の木造建築

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コロナ禍から生まれたウルシの新活用

ウルシノキから漆を採取することを漆掻きといいます。漆掻きの方法は2種類あり、一つは夏〜秋の数ヶ月をかけて漆を採り尽くし、一年限りで伐採してしまう「殺し掻き」、もう一つは夏だけ採取し何年も採り続ける「養生掻き」です。 国産漆の7割を生産する岩手県をはじめとして日本では殺し掻きが主流です。そのため毎年数千本のウルシノキが伐採されていますが、それらは漆掻き職人さんが薪にしたり、オブジェとして使われたりする程度で極めて限定的な利用に留まっています。 ウルシノキの幹の中心部はとても

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