お子様でも自称インフルエンサーでもわかるようになってほしい「医療広告ガイドライン」

キラ子です。最近マガジンのほうにかかりきりでしたが、たまには普通の記事も書きますよ。

序 怒りのキラ子

というのもですね、また近頃「医業若しくは歯科医業又病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」こと「医療広告ガイドライン」違反が、なんにも考えていない(自称)インフルエンサーによって目立つようになってきまして。

引き受けるほうも引き受けるほうですが、頼むほうも頼むほうだよ! 一体何を考えているんだ……!

あらためて言うに、私はキラ子……ちょっとだけ医療広告ガイドラインに詳しい女!! 
ただの派遣社員のコーダーがなぜ? と思われるかもしれませんが、キラ子はずーーーっと医療関係のWebサイトの制作や運用やそれにまつわるあれやこれやを支援する立場でした。医療機関のサイトを作ったり運用していく上で、ガイドラインは決して欠かせぬものです。
そういうことから離れ気味の今も、情報は追い続けております。もはやただの趣味ですね。国(厚生労働省)が主導してやっていることですので、今でも無償で情報は手に入ります。
というわけで改めて「医療広告ガイドラインとは何か」から、ガイドラインに抵触する悪い実例なども含めて解説します。これまであんまりよくわかってなかった医療関係者も、美容医療の情報発信をすればPV集まってウハウハなんじゃねえの? と軽い気持ちで考えているブロガーやアフィリエイターも、よっく目を見開いて読んでほしい気持ちです。

キラ子は法律については大学時代に法学ちょこっとかじっただけのほぼ素人ですが、2018年の改正から医療広告ガイドラインをひたすら読みつづけ、議論をし、弁護士から厚労省まで問い合わせて確認しながら複数の医療機関のWebサイトを最適化してゆくという地獄の作業をしこたまやったので、そんなに間違ったことは書きません〜。

以下、引用は明記のないかぎり「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」からとします。

ちなみにここでは美容医療などについてたくさん取り上げることになりますがキラ子、別に美容医療を否定する立場にはありません。ワクチンだって積極的にうっていきたい派です。
美容医療によってその人のQOLが上がるなら別にいいじゃありませんか。ですが、変な広告に惑わされて治療を受け、逆にQOLが下がってしまうのはよくないと思っています。そのためにも医療広告ガイドラインに則した適切な医療広告を! 関係者の皆様には! 御願いしたい次第でありますッッッ!

医療広告に該当するもの

「医療広告」といっても何のこっちゃな人が多いかもしれないのですが、医療広告ガイドラインでは「第2 広告規制の対象範囲−1 広告の定義」として下記が定められています。

① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

ガイドラインの改正により「医療広告」に該当する範囲が拡大しました。具体的には下記のものは全部広告とみなされます。(第2 広告規制の対象範囲−5 広告に該当する媒体の具体例)

法第6条の5第1項において「何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引する為の手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」とあるように、医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター(閲覧した人を誘引することを目的としてブログ等で紹介し、その成果に応じて報酬が支払われる広告を行う者をいう。以下同じ。)、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象とされるものである。
また、日本国内向けの広告であれば、外国人や海外の事業者等による広告(海外から発送されるダイレクトメールやEメール等)も規制の対象である。

お役所文書にありがちな言い回しをされていますが、もっと具体的にもちゃんと書かれています。要するに医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイターが特定の医療機関について言及する場合も医療広告とみなされます。例外はありません。また、海外にある医療機関であっても日本人向けに日本語で制作されたWebサイトも該当します。

ア チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
イ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
ウ 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
エ 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
オ 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの

アドバルーン!! 最近見ないなアドバルーン!!
……というのはさておき、要するに、我々が普段生活していて目にする「○○病院」と医療機関の名称をアピールしているものはほとんど広告と捉えてよさそうです。といいつつ次の「6 通常、医療に関する広告とは見なされないものの具体例」で除外されるものが明記されています。「学術論文、学術発表等(誘因性を伴わない場合に限る)」「新聞や雑誌等での記事(ただし記事風広告は除く)」「患者等が自ら掲載する体験談、手記等(ただし医療機関からの謝礼が発生しない、医療機関の身内ではない場合に限る)」「院内掲示、院内で配布するパンフレット等」「 医療機関の職員募集に関する広告」。
OKといいつつ但し書きが多いのがこのガイドラインをややこしくしているのですが、ここまではっきり書かなければすぐに法の穴を突こうとしたりダダ捏ねて守らない関係者が多いからですよ……。アドバルーンだって書いていなければ絶対アドバルーンを飛ばす人が出てくるのです、多分。

これらをざっくりまとめると、医療広告ではないものとは
・学会での研究発表や専門誌での学術論文
・新聞や雑誌から受けた取材記事(「この冬に流行っているインフルエンザの種類について語る医師の記事」、「○○という疾患の症状や治療法についてコメントする医師の記事」といったもの)
・患者自らの意志で無報酬で書いた体験談(闘病記や治療の感想等。口コミサイトも含む=医療広告ガイドラインに関するQ&A 2.医療広告ガイドライン第3部関係(禁止される広告)Q−2)
・医療機関の院内に掲示されたパンフレットやポスター
・医療機関の求人広告
ということですね。

ここまではまだわかりやすいんです。制限はちょっとうるさいけどなんだこんなものか、と思う方も多いでしょう。問題はここからです。

「第3 禁止される広告について−1 禁止の対象となる広告の内容」では下記の項目が禁止されています。以下ガイドライン上記項目より抜粋。

(1) 広告が可能とされていない事項の広告
(2) 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
(3) 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
(4) 誇大な広告(誇大広告)
(5) 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
(6) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
(7) 公序良俗に反する内容の広告
(8) その他

(1)〜(4)までは誰がどう見てもダメなことばかりですが、(8)その他って……。
といっても、補足はあります。「品位を損ねる内容の広告、他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告」。品位を損ねるというのは、下記のようなものが該当します。※noteの仕様で取り消し線が表現できないためここだけスクショです

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が、それよりももっと大事な項目がありますね。先程は広告してもよいことになっていた「患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談」がここでは禁止されています。どういうことなの……

省令第1条の9第1号に規定する「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」とは、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味するものであるが、こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められないものであること。
これは、患者の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない。
なお、個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しないこと。

禁止の中でダメと言ったりいいと言ったりしていてだいぶ情報が迷子です……。読み慣れていない人は混乱に陥りますが、よく読めば結論は出ています。

・医療機関のWebサイトの中に患者の体験談を掲載するのはNG。
・個人が治療の感想や経過、体験談などを自身のサイト(ブログ含む)やSNS、口コミサイトへ投稿するのはOK。ただしお金や何らかの利益提供を得て投稿するステマ(ステルスマーケティング)はNG。

スッキリですね。
……と思うじゃないですか。ここにまた罠があります。

医療広告には個人のサイトやSNSも含まれます。と、キラ子は冒頭で書きました。個人のサイトやSNSで利益を得るために医療機関を紹介したり、PRすることは、医療広告の範囲内では問題がありません。ただ、そうなると個人の体験談や治療の感想を載せることはできなくなっちゃうんですね! ややこしい!
するとどうなるかというと、Instagramなどを見ればわかるように、ふわーっとしたPRが溢れることになります。インフルエンサーと呼ばれる人たちが「○○クリニックへ行きました」とクリニックの前でポーズをとってるだけであったり、院長先生と2ショットを撮っているだけであったりします。
また、医療広告はあくまで来院を促す内容や治療についての宣伝に制限を設けているだけなので、「先生がイケメン/美人でした」「スタッフ皆さん優しかったです」「とても綺麗な院内でした」という、施設や接遇についての感想は問題ありません。
もっとも、PRを依頼している医療関係者からすれば集客(集患)のためにも治療の内容や感想に触れてほしいところでしょうが、それをすると「体験談」扱いとなり医療広告ガイドラインに抵触しちゃうんですよね。多くの広告代理店やPR会社は、そういったあたりも口うるさくインフルエンサーに言い含めているはずです。

問題となるのは、誘引性があるかどうか

それにしても、なぜここまでに「体験談」はややこしくなっているのでしょうか。
これも難しく考えることはありません。口コミに限らず、たとえば来院者アンケートをとったとしても、辛辣な感想やただの悪口、ネガティブなイメージを与えるコメントというものは何かしら出てくるものです。が、それらを素直に全部Webサイトに載せたいと思う医療関係者はそう多くはありません。できれば、治療を経て喜んだり感謝してくれている感想ばかりを載せたくなりますよね。しかしそれでは公平性を欠き、これから治療を受けようとする人を惑わせてしまうんです。
もちろん、本当によかったと言ってくれる人ばかりの医療機関もあるんでしょうけれども、第三者からみても本当にそうかどうかはわかりませんからね。

口コミサイトが許されているのは「特定の医療機関とは距離を置いた運営会社が運営しているから」ですし、利益提供をうけていない個人のサイト、SNSの運営者もまた医療機関に忖度をすることなく感想を述べられる立場だからです。
……といっても昨今、Googleなどにネガティブな口コミを投稿すると「訴えますよ」と医療機関名義で反論・恫喝する例も散見されるんですよね。あからさまに虚偽の悪い口コミが投稿された後、「あの口コミを消しますよ」という営業電話やDMが送られてくるといったイヤ〜な事例も存在するようです。こういった口コミの削除はサイト運営者に連絡する以外の手段がないのですが、Googleのような大きな運営会社が相手だとだいぶ手間がかかる話です。困ったもんですね……。

まっそんな口コミサイトの闇の話はさておき、体験談がここまでややこしい扱いを受けているのは、実際に医療機関を訪れた人、治療を受けた人の感想には価値があると考えられているからです。実際、口コミは良い内容であれ悪い内容であれこのご時世ではあっという間に広がります。ゆえに、ステマが横行してきたという事実もあるんですよね。「第2 広告規制の対象範囲ー2 実質的に広告と判断されるもの」の最後ではステマについても言及されています。

加えて、患者等に広告と気付かれないように行われる、いわゆるステルスマーケティング等についても、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなど、実質的には上記①及び②に示したいずれの要件も満たし、同様に広告として取り扱うことが適当な場合があるので十分な留意が必要である。

上記①及び②というのが例の「誘引性」「特定性」にあたります。ここだけ見るとステマは医療広告としてアリのように見えますが、医療広告として扱われるPR案件は体験談の掲載が禁じられています。「第1 広告規制の趣旨−2 基本的な考え方−(3) 広告可能な事項の基本的な考え方」では

医療に関する広告の規制については、法に基づく規定の他に、不当景品類及び不当表示防止法(昭和 37 年法律第 134 号。以下「景表法」という。)、医薬品医療機器等法等があり、これら他法令に違反する広告は、当該他法令に基づく指導・処分等の対象となり得るものである。法第6条の5等の規定に違反し、又は違反が疑われる広告は、これら広告等を規制する他法の規定に違反し、又は違反している可能性があり得るものである。

とあり、他の法令に違反すれば相応の処置をとると書かれています。景表法でも実質過剰なステマを禁じる「優良誤認表示の禁止」がありますから、これは「個人の感想です」などで言い逃れできるものではなく、結局ステマはどうあがいてもダメと言っているのと同じ、と考えて良さそうです。

……ということを踏まえると、下記のようなTwitter投稿は医療広告ガイドラインにおいてOKかNGかということは火を見るよりも明らかなのです!

あなたのPR案件、それ医療広告ですよ

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キラ子、久々にすごいPRを見てしまいました! 「3D歯型スキャン」自体は治療とはいえないものですが、クリニックへの誘導リンクが貼られた上で何やら個人の感想を述べられています。そう、医療広告ガイドラインにおける体験談という扱いですね。しかも書かなきゃわかんないのにわざわざ#PRをつけてしまったがために、誘引性のある医療広告だと自ら明らかにしてガイドライン違反をおかしているのです。あれだけ血液クレンジングで揉め倒したのに、まだこんなことをやっているとは……。ちなみにこの「3D歯型スキャン」は新R25でも大々的に取り上げられており(魚拓)、どう見ても記事風広告ですありがとうございます。いい加減にしろよ、新R25

歯科広告ではこんなものも話題になりました。否。キラ子が話題にしました。

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医療広告ガイドラインを堂々と無視する「SNSマーケター」。自らガイドラインを踏み越えて行くなんてまともなマーケターなら躊躇うところ、アクセル全開です。すごいですね。子供がやることだからといって大目に見られるわけがありません。30%オフというのも「品位を損ねる内容の広告」でばっちりアウト。

まあ、こういうことを書くとこの人たち、「他の人だって違反してるのに私だけ攻撃してくるなんてヒドい!」と言いだして、何なら開示請求までしてくるらしいんですよね〜。ですのでキラ子はもちろん他の事例についても言及していきます。

症例写真(ビフォーアフター)の掲載や未承認医薬品による治療の広告と限定解除

実際のところ、これまでSNSでも一部の美容整形ドクターによるガイドラインを無視した情報発信の事例はいくらでもあったんです……。特に貴様だ、Instagram
Instagramはオシャレ画像を載せやすいSNSです。先に医療広告ガイドラインとの兼ね合いから、InstagramではフワッとしたPR案件が発生すると書きましたが、実際「# 美容皮膚科」などのハッシュタグで検索すると、医療広告ガイドラインを一切無視した# PR案件がわんさか出てくるのです。

美容医療と言われるものの多くは、健康保険がきかない「自由診療」という扱いになっています。つまり、厚生労働省が承認していない治療です。自由診療では診療点数などの制約がないため、医師自身が自由に治療の料金を決めることができます。同じ治療でもクリニックによって料金の差が著しいのはそのためです。
別に厚労省が承認していない治療であっても、日本においてそれを禁じる法はないんです。なんだかんだいって医師免許は強いですよ。禁忌とされる治療や著しい健康被害が報告される治療は専門学会での自主規制やその申請を受けた厚労省による注意喚起がやっと、というところです。

で、医療広告ガイドラインでの自由診療の扱いがどうなっているかというと、実は広告することが禁じられています。「(1) 広告が可能とされていない事項の広告−第3 禁止される広告について−1 禁止の対象となる広告の内容」の【具体例】にもばっちり出てくるのです。

未承認医薬品(海外の医薬品やいわゆる健康食品等)による治療の内容
→治療の方法については、広告告示で認められた保険診療で可能なものや医薬品医療機器等法で承認された医薬品による治療等に限定されており、未承認医薬品による治療は、広告可能な事項ではない。

これにより、ほとんどの自由診療が広告NGになってしまいました(ここでは美容医療の話ばかり取り上げていますが、一部のがん治療や再生医療もあてはまります)。
とはいえ、巷には多くの美容医療の広告が溢れていますよね? そこで出てくるのが「限定解除」です。

「第4 広告可能事項の限定解除の要件等−1 基本的な考え方」から抜粋しますと

患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考え方から、規則第1条の9の2に規定する要件を満たした場合、そうした広告可能事項の限定を解除し、他の事項を広告することができる(以下「広告可能事項の限定解除」という。)。なお、こうした広告可能事項以外の事項についても、法第6条の5第2項及び規則第1条の9に定める広告の内容及び方法の基準に適合するとともに、その内容が虚偽にわたってはならない。

しかし、これらの広告を無条件で禁止してしまうと、その治療を求めている人に適切な情報が届かなくなってしまいます。そのため一定の条件下を満たした場合は自由診療の広告をしても良いよ、といっているのです。

「第4 広告可能事項の限定解除の要件等−2 広告可能事項の限定解除の具体的な要件」では、

広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合とする。
ただし、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限る。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

とはっきり書かれています。つまり自由診療の広告は、上記4点を満たしてやっと広告が可能になるのです。
またこの限定解除には、広告が禁止されている事項の一つとして出てくる「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等」も含まれます。いわゆるビフォー・アフターの症例写真ですね。ただし誤認させるおそれがあるような虚偽や誇大はNG。たまに術前はスッピン、術後はメイク盛り盛り&すんごい加工した写真を載せてる人がいますがこれは誇大広告でNGなんですよ。ついでにいうと、体験談は限定解除の対象外です。とにかく広告に体験談は載せてはいけません。

載せてはいけないと言ってんだろーが!!

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Instagramでクリニック名を出して体験談を語りまくるインスタグラマーなみなさん。山田先生、やり過ぎです。

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「インスタ見たと言ったらいいことあるよ」だの# pr つければいいと思っている皆さん〜! そろってまとめて怒られてください。

また、美容クリニックが運営するアカウントでもガイドラインに抵触するものが多すぎてキラ子はクラクラしました。症例写真を載せながら「○%オフ」といったり限定解除が足りなかったり、「絶対失敗しない医師」などと言いだす始末です。せっかくの症例写真を自ら台無しにしていくスタイル。

症例写真を掲載する場合、限定解除の項目は同一ページ内への併記が原則となっています。これも過去に一部の美容クリニックが注意事項やリスクといった表記を極小フォントで書いたり、Webページでも目の届きにくいリンク先に書いてあったりして苦情が殺到したからです。また治療に関してざっくりした費用だけが書かれていて、術後のケアに必須の薬剤の使用料金は含まれておらず想像以上に高額になったという事例などもありました。医療広告ガイドラインでは、治療にかかる費用は全部わかりやすいところに明記せよといっているわけです。また治療に伴うリスクや副作用についてもきちんと表記することが求められています。消費者目線で普通に考えれば当たり前の話ですが、それができなかったから医療広告ガイドラインが生まれたともいえます。

医療広告ガイドラインを「患者さんが求めているから」とあえて無視してゆく医療関係者

ガイドラインをちょっとくらい無視しちゃってもPRしたい、という医療関係者の気持ちはわかるんですよ。ドクターが自分のウデを自慢したいのもわかるし、それを求めている人がいるのもわかる。だがそれをやってやりすぎた結果として、事故・クレームが多発し医療広告ガイドラインが改正されたという大前提を忘れないでほしいんですよ。本当は症例写真を載せるのは全NGになるところを各関係者が「それだと治療を受けたい人が選ぶときに困る」と揉めに揉め倒して、限定解除つきでやっとOKになったんです。それが守れず無法状態が続くのなら次の改正で改めてSNSでの投稿や症例写真の全面禁止、あるいは罰則強化に繋がることだって考えられるんですよ! 

医療広告ガイドラインというものはそれだけでは法律とまではいきませんが、医療法に紐づくものであり法的拘束力があります。ガイドラインに抵触することで是正の勧告がなされ、それから1ヶ月以内に修正しなければ最悪懲役から罰金までの罰則もあります。忘れないでほしいのは、ガイドライン違反をすることで迷惑を被るのは医療機関だけでなく、ほかの医療関係者やきちんとした治療をできるだけ安心して受けたいと願う、真っ当な感覚をもった人たちだということです。
これは医療系PR案件を引き受けたインフルエンサー、美容家、アフィリエイターなども責任を問われます。ステマなんてもってのほかです。
思い出してください、あのペニーオークション騒動を……。あのとき罪にこそ問われなかったものの、ステマを引き受けた芸能人が軒並み干されたことを!

そう、すでに世の中はステマにとっても厳しい時代です。特にペニオクは、ステマと詐欺の併せ技だったこともあり世の中の激しい怒りを買いました。

そもそもステマというのは誠実にビジネスをしたい人を嘲笑ってチート行為をしているものであり、景品表示法でも禁止されている行為です。いつもキラ子が突っ込んでいる、どこぞの面白髪色社長がホラ吹きながらイキりちらすのとはわけが違うのです。

それなのに医療関係者、はっきりいうと医師のみなさんは(ステマの件に限らず)「医療広告ガイドラインは厳しすぎ。なんで医療だけ目の敵にされるの?」などと思っているようです。正気かな? すでにここで医療者と医療を受ける側の意識の乖離を感じざるを得ません。高い税金払ってるのにまだ法律にガチガチに縛られるなんてやってられん、という発言も目にしたことがあります。非医療従事者からすると、医療広告ガイドラインは厳しすぎるどころか「性善説にのっとったゆるふわガイドライン」と受け取られています。もっと厳しくせえ! くらいに思っています。
飲食店等の広告に比べて厳しいと感じられるのは、医療だからに他なりません。ガイドラインにもしょっぱなに書いてあります。(第1 広告規制の趣旨−2 基本的な考え方)

① 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。
② 医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。

他人の身体を物理的にいじくっているわけです。
医療者であれば、あの人にはよかった治療がこの人には向いていなかった、ということなどざらにあるとよくご存知のはずです。けれども、それほど知識の多くない普通の人は、えらいお医者様が言ってることだから、あの治療なら絶対誰でも同じように治るのでは? と思い込みがちです。誰しも皆、高いお金と多くの時間をかけて医療の知識を得ているわけではないからであり、それを知識不足だと医療者が言うのは思い上がりも甚だしい。
このご時世は特に、正確な医療情報をもった医療者が、正確な情報をガイドラインに沿って発信してゆくことはとても大切なのです。昨今も唐突に「イソジンデウイルスガー」などと言いだしたどっかの知事に振り回された医療関係者も多かったことでしょう。ガイドライン違反とかそういうレベルじゃなかったにしても、似たようなことをしているインフルエンサー、美容家が多いのも事実なんですよね。それなのになぜ医療関係者が率先して医療広告ガイドラインを無視したPRを頼むのか、ホントに理解に苦しみますよ。

もっとも、こういったPRを医療関係者が率先して行っているわけではない……と思いたいところです。上記にあげたaクリニックも東京中央美容外科さんも、どこぞのPR会社だか広告代理店の口車に乗せられているだけという可能性もあるわけです。キラ子が接してきた感じ、皆さんあまりネットというかマーケティングには強くないんですよね。バカにしてるわけではないのですが、SNSをやってるから自分はネットに強いと思っているような方もいらっしゃるくらいです。バカにしてないですよ! 皆さん忙しいのは存じておりますから。打ち合わせに4時間待たされたことを根に持ったりもしていませんから!(上記に出てきたような医療機関の方の話ではありません)
ただ、SNSのパスワードの管理だって、セキュリティをどこかに置き忘れてきたかのような適当管理だったりするのだけは勘弁してくださいと思うんです……。

で、マーケティングまで踏み込んで詳しいとは言いがたい医療関係者に対し、広告代理店やPR会社が盛んに営業をかけているのもキラ子はよく知っています。昨今ではインフルエンサーマーケティングに留まらず、「MEO」なる単語を使って巧みに医療機関から金を取ろうとする輩なども増えていると聞きます。これもあんまりやりすぎると医療広告ガイドラインのみならず、Googleマイビジネスのガイドライン違反になるになる可能性が高いそうですね。またガイドライン違反だー。とにかくもう医療広告はいろんな法律、各Webサービスのあらゆる制約を受けているものです。

医療広告ガイドラインは無視してはいけません(当たり前)

あまり表沙汰にはされていませんが、2018年6月から改正された医療広告ガイドラインは適用がはじまりました。で、一応こういったガイドライン違反は我々一般人でも通報できるシステムも整えられており、またきちんとガイドラインを守れているかを監視する事業者も存在します。
昨年度までの結果については公表されています。

ネットパトロール事業について(令和元年度)によると、昨年度はこんな感じだったそうです。

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通報件数はかなり増えました。これはガイドラインが周知されたこと等も関係あるでしょうね。

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ほとんどの施設において怒られた医療機関は修正対応しています。そりゃそうだ。

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各医療広告においてガイドライン違反の多い治療もこと細かくまとめられています。
これがどういうことかわかりますでしょうか。要するに、ガイドラインに抵触すると通報され、ネットパトロール事業者から改善するよう指導のお手紙が届くということです。誰でもアクセスできる環境で広告を展開している以上、逃げ切れるわけがないのです。おわかりいただけましたでしょうか?

結 医療広告ガイドラインはまだまだ進化をやめないッ

ちなみに「医療広告ガイドライン」に関わった「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」では今も様々な議論を行っており、今後のガイドライン改正についても話し合われています。議事録も全て公開されていますが、最近は「医師の働き方改革について広告しても良いか」といった今風の話題から、血液クレンジングやGLP−1ダイエットのようなエビデンスのない治療法に関する広告は制限すべきではないかという話題まで持ち上がってきています。GLP−1ダイエットについては糖尿病学会まで出てきて「やめて」と言っているので、この先なにがしか盛り込まれるかもしれませんね。これも一時期、インスタグラマーがよくステマってましたからねえ。これについてはキラ子も積極的に滅ぼしていきたい派なのですが、その理由について書くとさらに5,000字くらい必要なのでやめておきます。

とにかく、今回もキラ子の言いたいことは一つのみ。

皆で守ろう、医療広告ガイドライン!

ここまで長々とおつきあいいただき、ありがとうございました。

〜参考リンク〜