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掌編小説【まだまだ】♯毎週ショートショートnote

お題「グリム童話ATM」

【まだまだ】(410文字)

「タケオ、やれ」
アニキに命じられてタケオは機械を叩き壊した。
中からは札束がワンサと…
出てくるはずだったが、出てきたのは七匹の子ヤギだった。

「メェ」
「何がメェだ。叩き殺すぞ、テメェ!」
アニキがすごむが、相手は子ヤギである。ぷるぷる震えるばかりで話にならない。
「中にあるんじゃないスかね」
タケオは、子ヤギかわいいなと思いながらもアニキにささやいた。
「探せ」
タケオは壊したATMをのぞき込んだが札束はない。いったん頭を出して、ふと機械の正面を見ると、貼り紙に気づいた。
『グリム童話ATM…これは自動語り手機械です。お好きな時にいつでも童話を語ります』

その時、妙な唸り声が機械の奥から聞こえた。ゾッとする声だ。
「アニキ、グリム童話の『七匹の子ヤギ』って…、たしか狼も出てきやす」
震えあがった二人は一目散に逃げた。

しかし中から出てきたのは、ロバ、犬、猫、雄鶏だった。
「まだまだいけるな、俺たち」
『ブレーメンの音楽隊』は健在であった。


おわり

(2023/4/9 作)

『たらはかに』様の4/9~4/15のイベントに参加させていただきました☆
ATMが、Automatic Teller Machineの略だとはじめて知りました。
べんきょうになるなー…(;・∀・)

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