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【秋の和歌・ほっこり選歌集⑤〜万智ちゃんと晶子ちゃんの織りなす現代編〜】


じゃじゃーん、さて秋の歌をご紹介したほっこり和歌集3日目の今朝は現代編です。こんなの3日前の初日の朝日記に全部書こうなんて無謀だった。ホント段取りとか見通しとか苦手だわ。

(初日は一回で書き切ろうとして解説が書き終わらず、後半解説なしで単に和歌を並べただけになり、再編集して後から3日に分けて全部解説し直した)

和歌に興味がない人も、現代和歌なら今少しとっつきやすいかもしれませぬので、今日でおしまい、もう少しだけお付き合いくださいませ。

秋の日は さびしせつなし 部屋の棚 あらゆる花を もて飾れども
(夏より秋へ・与謝野晶子)

→まぁ単純にその通りだな、と思う歌。夏より秋へ、という歌集は秋の歌がたくさんありそうだな、と歌集ありきで紹介したかった歌。

ついでに言えば、せつない、という現代っぽい言葉がこの時代にすでに成立していたんだな、果たして現代とニュアンスは同じなのかな?という日本語変遷についての個人的な興味がうずく歌。(フェチ)

君死にたまふことなかれ、で有名な晶子ちゃんだけど、恋の歌人としても超有名。和歌の師匠をめぐる弟子同士の恋の鞘当てがそのまま歌として数多く残ってる(しかも晶子ちゃんはその恋に破れた)…湯原王の解説にも書いたけど、恋の遍歴がずっと残る和歌ってすごいヤバイツールだな、と。(しみじみ)

秋分の 日の電車にて 床にさす 光とともに 運ばれて行く
(帰潮・佐藤佐太郎)

→これ今回の現代和歌の中でたぶん二番目に好き。一番はこの後紹介する長塚節さんのヒゲの歌なのだけど。秋分の日、というお彼岸を連想させるワードも良い。

秋分の日=お彼岸=誰かのお墓参りに行く粛々とした気持ち、(私の中では勝手に夭折した親しい友人の墓参りになっているのだけど)、そんな心とは裏腹にほのぼのと晴れて、優しく美しい秋の光とともに運ばれていく。少しずつ友の死を受け入れていく、そんな物語を勝手に歌の向こうに見つける、余情あふるる歌。

昨日紹介した紀貫之のかざし、の歌とも好対照な。明るいながらもずんと心に残る、とても存在感のある歌だと思う。素晴らしい。

馬追虫の 髭のそよろに 来る秋は まなこを閉じて 想ひ見るべし
(長塚節歌集・長塚節)

→ひげのそよろ、大好き!!なんという視点の繊細な!!と感動する。秋は何処に宿る、と平安歌人も数多(あまた)詠んでいますが、虫のヒゲとは恐れ入った。aikoのカブトムシに女心を例えた歌(カブトムシ)に長い音楽番組MC人生でたいそう驚いたというタモさんの気持ち。私の中で秋の現代和歌ナンバーワン。

スイッチョンスイッチョンで有名な馬追の長い長いヒゲ…まなこを閉じて秋の美しい虫たちの競演に耳を傾けたくなる美しい歌です。私の中では一番ヒゲがそよろなのはツユムシだけれども、鳴き声がジジって地味だからなぁ。見た目は青くて可愛いけど声はキリギリス系なんだよなぁ。(昆虫好き。香川照之さんも大好き…昆虫すごいぜ!)

もみぢ照り あかるき中に 我が心 空しくなりて しまし居りけり
(赤光・斎藤茂吉)

→しまし=しばし。しましが好きすぎる。大和言葉はまろやかな優しい響きのものが多くて、失われつつあるその言葉を後世に残しておきたいと切に思いますです。しばし、よりもしまし、の方がまろやかで好きだなぁ。

斎藤茂吉といえば垂乳根の母ですが(茂吉にはある意味罪のない枕詞への恨みがこもっている)、茂吉らしい哀愁のある歌。明るい風景とのコントラストがますます哀しみを増す、というまるで「ひろしです」や石川啄木のような茂吉ワールド。同じように秋を詠んでもネアカな湯原王とは違う…歌には性格が出るなぁ、と思う。

秋日ざし 明るき町の こころよし 何れの路に 曲りて行かむ
(卓上の灯・窪田空穂)

→茂吉と打って変わって(ヒドイ)明るい歌。秋晴れで清々しく楽しい秋の街、どこへ寄り道しようかしら、という溌剌とした少女のような気持ちを歌った一首。これを詠んだときは空穂ちゃんは御歳70を越えていたはずだけど、さすが若々しいなぁ、という。

こないだ朝の情報番組(たぶん朝イチ←写真で確認したらスッキリでした…失礼💦)で、89歳のエアロビトレーナーの「タキミカさん」という方が取り上げられていたけれど、この方、自宅トレーニング用の大五郎2リットルボトルの中身は「そりゃアタシが飲んだわよ」と呵呵大笑。豪快な女性でした。

高齢でますます元気なおばあちゃん、元気なおばあちゃんが増えればそれだけで日本が元気になる気がします。大事にしようお年寄り。それはそのまま未来の自分に帰ってくることだから。(策士)

で、お気づきの方もいたと思うのですが、「空穂」という言葉の響きから、勝手に女性だとばかり思っていたのだけど、もしかしたら、とさっき調べたら男性でしたね、空穂ちゃん(でもちゃんづけ)。写真を見るにダンディーな方でした。

「君に届け」が連載当初から大好きで数年追いかけたもので、作者の椎名軽穂さんと名前が似ていたので混ざりました。気をつけよう、作家と性別。ちなみに鋼の錬金術師で有名な荒川弘さん、結界師の田辺イエロウさんもずっと男性だと思っていました。まぁ作品が素晴らしければどちらでも構わないっちゃ構わないのだけれどもね性別は。


やわらかな 秋の陽ざしに 奏でられ 川は流れてゆく オルゴール
(風のてのひら・俵万智)

地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない
(チョコレート革命・俵万智)

→こちら俵万智は2首続けて対比しながらの解説です。チョコレート革命の俵万智はいつもながら凄味があってちょっと怖い。後半酔っ払ってるのが字面で分かるってすごい技巧だなって思う。

対してオルゴールの歌は同じ人が詠んだとは思えないほど優しく穏やか(失礼)。私は毎日通勤で川の横を通るのだけど、この歌のお陰で川の流れに音が聞こえてくるようになった。優れた感性に触れると、その作家のフィルターを通して鮮やかに見える景色が、日常をすっかり変えてしまうことがよくある。良くも悪くも。

こうして沢山の美しい作品に触れることで私の感じ取れる秋の景色がどんどん美しくなってゆく。私の目にする令和の景色に千年前の美しい景色が重なる。我が身ひとつの秋にはあらねど、だわホントに。

対してチョコレート革命の方は不倫の恋、という賛否両論あるテーマの歌集だけれども、本人も言っているように「心の揺れ幅」こそが歌人に歌を紡がせるのだとしたら、心の揺れ幅としては最大値を記録したであろう壮絶な恋の日々を歌ったこの歌の連なりは本当にすごい。凄すぎて鳥肌が立つ。生まれてきたお子さんには幸せになってほしいと心から思う。

万智ちゃんは子育ての歌もたくさん詠んでいる。今まさに子育ての只中にある私たちの心にとても響く歌が多い。秋の歌ではないのでここでは取り上げないけれど、良かったらリンク先を読んでみて、ひととき癒されてほしいと思う。

(癒されたい人はチョコレート革命のリンクは飛ばして最後のたんぽぽのリンクだけ見てね。チョコレート革命は癒されません。圧倒的に癒されませんのでご注意を。)

■生まれてバンザイ
https://bookmeter.com/books/669833
(レビュー欄でいくつか読めます。この2つがとても好き。「バンザイの姿勢で眠りいる吾子よそうだバンザイ生まれてバンザイ」「泣くという音楽があるみどりごをギターのように今日も抱えて」 )

■チョコレート革命のうた
http://book.vegefulpocket.com/iikotoba/2013/09/16/post-170/

■ 与謝野晶子みだれ髪チョコレート語訳の挑戦
http://www.for-you.co.jp/tour_sakai/akiko/arekore/tawara.htm
私が替え歌を作るときの気持ちにも似てるなぁ、と。

■子育てはたんぽぽの日々
https://hugkum.sho.jp/148631

 いやーー、タマコ祭りに続き、今日は万智ちゃん祭りになってしまったのだけれども。すごい歌人だ。ベストセラーになるだけはある。

最後にほっこりはんの自作最新3首。
■秋深しちぢにものこそ思いけれ名峰モンブランを腹に収めつ

■鮮やかに定時退社を焼き付けてブラインド越しに夕陽が帰りぬ

■食べすぎてまろみをおびた腹を見て「秋が来たな」と今年も思う
(そよろのヒゲならぬまろみ腹で秋を痛感)

#写真…世にも美しいイケメンの流し目とか
https://twitter.com/kirakiramamama/status/1326864590446104578?s=21

#歌とか…今日はお友達のSNS投稿で知ったUruさんの【振り子】を。。。いいなぁこういうしっとりした声に憧れるんだよ(ないものねだり)
https://m.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=4muxe8YRwPE

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