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薬剤師の検査値読めない問題

私も検査値を読めていると思っていない。
でも、それで問題ないと思っている。

なぜなら、
その患者の病気や薬に関わる検査値を
見て、確認することができているから。

ここでは、
薬剤師としての検査値の見方について、
私の考えを共有したいと思う。

1. 薬剤師が検査値を確認する目的

主に3つの目的で私は検査値を確認している。
①投与量の適切性を判断するため(主に腎機能、肝機能)
②薬剤の効果判定や病状の評価(HbA1c、LDLコレステロール、TSH、Hb、BNPなど)
③副作用の確認(電解質、AST/ALT、BUN/SCrなど)

医師は診断や全身状態の把握のために、
検査値を読めないといけないかもしれない。

一方で、薬剤師が上記目的を達成するためには、
検査値は読めなくても良いと思う。
必要なのは検査値を“意図的に”見て、“確認する”ことなのだ。

2. “意図的に”見る検査項目

やりがちな間違いは、
異常値(検査結果のHやLのマークがついている)を見ること。
これは異常値を探しているだけで、
見ているとは言わない。
大切なのは、正常値も含めて意図的に必要な検査値を見ること。

そのためには、
ルーチンで見る項目を決め、
それ以外は病気と薬に合わせた項目を確認する。

ルーチンで何を確認するかはそれぞれの薬剤師が働いている環境(病院か保険薬局か、門前の診療科、患者の年齢層)によると思うが、
私がルーチンで確認している項目は、以下の通り。

  • 総タンパク、アルブミン(Alb)
    普段接している患者は高齢者が多く栄養状態を確認するため

  • 尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(SCr)
    腎機能評価、脱水の有無を確認

  • トランスアミナーゼ(AST、ALT)
    肝機能障害を早期に発見するため

  • 電解質(Na、Cl、K、Ca)
    高齢者は電解質異常が起きやすく、電解質に影響する薬剤を飲んでいることが多いため

その他は、薬剤や既往歴・現病歴に合わせて確認している。以下はその一例。

  • 糖尿病あり:HbA1c、GA、1,5-AG、尿アルブミンなど
    (メトホルミン内服中であれば副作用確認のためにビタミンB12も)

  • 脂質異常症あり:LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪など
    (スタチン内服中であれば副作用確認のためにCKも)

  • 心不全あり:BNP、NT-pro BNP

  • ループおよびサイアザイド利尿薬:電解質(特にNa、K)

  • 抗アルドステロン薬:血清K値

  • RAS系阻害薬(ACE阻害薬、ARB):血清K値

  • 活性型ビタミンD製剤:血清Ca値

  • 酸化マグネシウム:血清Mg値

  • 鉄剤:Hb、血清鉄、フェリチン、TIBC

  • チラーヂンS:TSH、FT4

3. “意図的に”見た検査項目の確認方法

“意図的に”見た検査項目が基準値内か否かという確認方法は正しくない。
なぜなら、基準値は、健常者の検査値の分布に基づき設定されており、特定の疾患や病態、さらには治療の目標などを考慮して算出されていないからだ。

例えば、
LDL-コレステロールは基準値が、65〜139mg/dLであるが、
1次予防でも高リスクの患者では120未満、2次予防であれば少なくとも100未満が推奨されている。
したがって、基準値内であってもコントロールが不十分な可能性があることになる。

糖尿病や脂質異常症など患者数が多い疾患や
自分が関わることが多い疾患に関しては、
基準値ではなく、治療目標値を把握しておかなければならない。

そして、異常値に関しては、
異常か否かではなく、前回と比べて、どのように変化しているのか(悪化傾向、横ばい、改善傾向)を確認する。

特に電解質、AST/ALT、BUN/SCrなどが前回と比較して、
基準値を超える範囲で変化していれば、
薬剤による変化ではないかを処方歴から推測することが重要となる。

まとめ

薬剤師として目的をもって、
必要な検査値を“意図的に”見て、“確認する”ことが重要である。

「検査値が読めない」、「検査値を見るのが苦手」と思っている方は、
ぜひ上記方法で検査値を見て欲しい。
繰り返し見ているうちに、検査値への苦手意識がなくなり、
むしろ検査値を見ることが楽しくなってくる。

そうなれば、
あなたの薬剤師ライフはよりキラキラしたものになるはずである。

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