いつも患者さんがいてくれた。
③平成12年・総合病院169床・千葉県(その10)
あっという間に3ヶ月過ぎてました。久しぶりの白衣を脱ぐです。
この3ヶ月の間にも、現職の訪問看護の利用者様で何名か旅立たれた人がいます。その中に、透析が必要な状態だけど、透析を受けずに亡くなった方がいらっしゃいました。
透析は、治療ではなく、延命・・・
腎機能がとても悪い状態だったので、シャントという透析を受ける為に必要な血管を手術で造っており、いつでも透析を始める準備はできていたのですが、高齢で認知症もあるということから、結局、透析を始める事無く、亡くなられました。
透析をやらない、ということは、死を受け入れるということでもあります。
私は、この決断をしたご家族が後悔していないといいな、と思っています。
受けないと死んでしまう治療を拒否することは、見捨てるということではなく、尊厳を守ることでもあると思うからです。
さて、透析看護師として修行が始まった私。
めちゃめちゃキビシい先輩ナース、つっけんどんでコワいドクター、ある意味ナースやドクターよりキビシい患者さん達に見守られながら、透析の事を勉強しました。
腎不全の勉強、透析治療の勉強、患者さんたちの採血データと、今行われている治療や服薬が正しいのかどうか、医学書や参考書、ネットで調べたり勉強会に参加したり・・・・
透析って本当に特殊だなあと思うのですが、採血データを読み取って、服薬や注射を変更するのを考えるのって、看護師がやる事が多いんです。
他の科だと、看護師が医師に口出しするなんてとんでもないんですが、それがまかり通ってるのが透析。
採血データが出る日には、医師が回診に来るまでにデータを読み解き、今使ってる薬の種類や量に変更が必要かどうか考えます。
データが悪くなってたら薬や注射の量を増やす。
良くなってれば減らす。
効きが悪ければ、他の種類の薬を試す。
日常生活の変化もデータに影響が大きいので、患者さんとも話をして様子をみて大丈夫なのか、薬を変えた方がいいのかも考えます。
この辺りまで看護師が考え、医師は回診でそれらについて報告を受け、流れ作業で処方箋を書く。
さささーっと30分くらいで回診を終えて去っていく医師。
「医者の方が楽じゃん」って思ってました。怖いもの知らずですね・・・・
データを読み間違え、薬の変更を忘れた時には、先輩ナースに申し送りでめちゃめちゃ怒られました。
泣きながら申し送りしたことも何度もありました。
でも、少しづつデータが読めるようになって、患者さんの変化に早く気付けるようになると、患者さんとの話も弾むようになりました。
先輩に怒られる時も、先生に怒られる時も、穿刺を失敗した時も、患者さんはいつも見ています。見られています。
そして、先輩に怒られながらも負けないでがんばったり、先生に怒られてもくじけず自分の意見を言ったり、穿刺を失敗したあと、患者さんに謝りに行って血管のケアをしたり、難しい血管の患者さんの穿刺が上手く出来るようになったり・・・・
そんな日々の成長も、患者さんはいつも見てくれていました。
「泣かなくてえらかったじゃない」とか、
「穿刺上手くなったね」とか、
「あなたが来てくれると安心するわ」とか、
「あなたの説明、わかりやすかったわ」とか。
自分ががんばればがんばっただけ、患者さんとの関係も良くなりました。
一日一日、成長を感じられるのは看護師として働き出してから初めての経験で、透析の仕事を好きになっていったのでした。
どんなに悔しくても、悲しくても、辛くても、そこにはいつも患者さんがいたから、がんばれたのです。
外来の患者さんは一期一会です。
入院の患者さんも良くなれば退院するし、様子を看に部屋に行く時しか一緒にいません。
でも、透析室という特殊な場所では、いつも患者さんと一緒でした。
あの、みんなが1つの空間に居るという特殊な場所が、私を看護師として成長させてくれたんだと思います。
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