全血縁がカルト信者の話 その3

・全血縁がカルト信者だとどんなことになるのか ~小学生編~

 相変わらず時間があれば施設に連れていかれます。記憶がある前からの習慣なので何も疑問に思うことはありません。
 この宗教は「研修」を受けることで初めて儀式を行う側になれるのですが、「研修」を受けるとネックレスみたいなものが貰えます。このネックレスを通して「御光」(笑)を借りて「神の御業」(笑)を代行します。とても重要なものです。なので取り扱いには、
・水に濡らしてはいけない
・足の着く場所に接してはいけない
・胸より高い場所に保管する
・自分以外素手で触ってはいけない
・触る前には必ず専用の石鹸で手を洗う
などのルールがあります。みんなめちゃくちゃ大仰に取り扱います。
 無論、「研修」を受けている血縁どももこのネックレスをまるで文化財かのように大仰に取り扱います。ちなみに血縁どものネックレスに触れるとバチクソ怒鳴られたりゲンコツ食らったりします。

 普段から触れるなと厳しく教育されるようなモノ…どんなに価値のあるモノだろうと小学生男児なら必ず思うでしょう。河原で拾った賢者の石や空き地で見つけたバスターソード、自分の持っている何よりも価値のあるモノに違いありません。当然欲しくなりますよね。ということで小学四年生になる春休み、わくわくいっぱいの心で「研修」を受けに行きます。「研修」にはいくつかの段階がありますが、最初の「研修」は3日間の座学です。好奇心が強い方であった私はクソ真面目に講義を聞き、ノートを取ります。
 内容は宗教の教義や体験談みたいなもんです。詳細を知りたい人は聞いてくれれば教えます。まあまあ電波です。

 晴れて「研修」を終えてネックレスを手に入れた私。平日休日問わず毎日身に着けます。不思議と学校からは何も言われませんでした。なんでだろうね!!そういえば担任がよそよそしかった気がするなあ!!
 そんなわくわく期もつかの間。羨ましさから手に入ったものって時間とともに価値が分からなくなっていきますよね。取扱いに多くの制約なんてあろうものなら猶更です。めんどくさくなった私は小学校を卒業するころには完全に興味を失い、全く身に着けなくなりました。
 
 

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