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ナディアがビリー・アイリッシュに見えてくる ー『西への出口』モーシン・ハミッド著 藤井光訳
舞台はイスラム式の礼拝が行われる南アジアの国。ナディアとサイードは出会い、恋に落ちて、ふたりで国から脱出します。脱出前が全体の半分近くで、関係なさそうな土地のエピソードが差し込まれ物語はまっすぐに進みません。(この辺、最後まで読むと伏線!)
ふたりが出会ったのは社会人向けの夜間授業で、教育を受けられる経済力と向学心があることがわかります。サイードは両親とともに暮らす敬虔なイスラム教徒。ナディアは未
隣国の文学者の見るコロナ19-72年目の4月3日に寄せて
今日は済州島4.3事件蜂起の日。韓国の文芸誌『済州作家』2020年春号の巻頭言を、編集主幹のキム・ドンヒョン先生より共有します。
済州4.3事件は、私が定義づけるのもおこがましいのですが悲劇と分断の歴史だと考えます。作家たちは分断を乗り越えるため、悲劇を忘れないために創作を続けてきました。隣国の文学者が、どのようにコロナ19を見ているのか、ヒントになれば。
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花は今年もたがわず咲いた。どう
これは「愛」なのか―『中央駅』キム・ヘジン
『中央駅』キム・ヘジン著 生田美保訳 (彩流社,2019)
ソウル駅を思わせる駅前で野宿をする若い男性と、若くない女性の半年ほどを描いた小説です。ホームレスになりたての男性と、酒をやめられずそのせいで病気を抱え、おそらくは先の長くない女性の、この二人の関係を何と名付けたらよいのかずっと考えています。
人目もはばからず「肌を重ねた」二人の関係を、愛と呼ぶのは簡単でしょう。一人ならやりなおしがきくは
『コメント部隊』チャン・ガンミョン
チャン・ガンミョン(장강명)作家の『コメント部隊(댓글부대)』を読みました。(未邦訳) 『クソリプ部隊』って感じかな?と思いましたが、そういうわけでもなかったです。
新村のオフィステルに同居する3人の青年が、謎の機関から依頼を受けます。仕事内容は、リベラル派の人間の集まるインターネットの掲示板を荒らして閉鎖に追い込むこと。依頼主は掲示板を通じてリベラル派が連帯し、力を持つことをそうとう警戒してい
「男もすなるフェミニズム文学」イベント後記と、著者来日イベント
2月9日田原町のReadin'Writin'BOOKSTOREで『韓国が嫌いで』をめぐるトークイベントが行われました。
当日は2階席まで、たくさんの方に集まっていただきました。
(2階席の写真はないのですが、2階席から撮った写真を)
フェミニズム小説ということで、私なりのフェミニズムの定義を。私の考えるフェミニズムは次のふたつ。女も人間ですよ、男と同じです、わかってます?というお知らせと、女
『韓国が嫌いで』チャン・ガンミョンより日本の読者へ
先ごろ出版された『韓国が嫌いで』(ころから)について、思うことを翻訳者から発信します。男性作家の書いた隣国のフェミニズム小説から、今私たちにできることを考えてみませんか?
日本ではあまり盛り上がらないフェミニズム。「ツイフェミ」という言葉からは、フェミニストの顔が見えていないんだな、と感じます。
今回『韓国が嫌いで』の著者、チャン・ガンミョンさんから日本の読者にメッセージをもらってきました。