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彼女の中指
私は今、公園のベンチに1人で座って朝の8時に作った学校で食べる予定だったお弁当を食べている。
目の前にはさっき自転車に跨って通り過ぎて行った女の子がブランコに1人で乗っている。
左側のベンチにはUVERの配達員が座ってスマホを触っている。
彼女はひたすらに、ブランコを漕ぎ続けている。
年はきっと私と同じぐらい。
上空の雲が少しだけ流れて、葉の影が濃くなった。いちょうの葉は見ればすぐに分かるのに、私はずっと、自分が分からない。
帰ってお昼寝しよう。そう思って顔を上げると、ブランコを漕いでいた少女が中指を立てていた。
私は視力が両目2.0あるのでしっかり見えた。
彼女は中指を立てていた。
表情はきっと、今の私と同じ顔で、手先だけが攻撃的に、でもブランコの上でさわやかな風を浴びているせいで全てを攻撃できないように私には感じられた。彼女は私を見て中指を、立てたのだろうか。
彼女の中指を見てると、今日のことがどうでも良くなり、遠い親戚に言われた小言がどうでも良くなり、私もブランコの上に乗っているようなさわやかな風を感じた。
頬の冷たさはやがて乾き、何事も無かったかのようにまた、彼女はブランコを漕いでいた。
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