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現役高校家庭科教師の金融教育奮闘記①

現役高校家庭科教師の金融教育奮闘記①
2022年度から高校の家庭科で金融教育が行われることとなった。1年前から準備し、昨年2022年に実践してみた。結果、もどかしさが残っている。
そのことを吐き出したくてnoteのアカウントをとり、ここに初投稿する。

1 大量の資料と研修会の案内

学校に届く教材や資料の一部


上の画像を見てほしい。高校の家庭科教員のもとには様々な機関から金融教育に関する資料や教材や研修会の案内が届く。1年前の2021年から2022年まで、すがる思いで自分からリクエストして手に入れた資料もある。書店の本も何冊か買った。ただ、最近は量が増え過ぎて消化不良を起こし始めた。学校教育用の資料については、目を通すと内容はほぼ同じ、ということにも気づいた。
教職に就いた28年前から数年前まで、投資関連はゼロに等しく、大方は消費者保護、つまり詐欺や問題商法から身を守る内容であった。
そこに、2022年度からの新しい学習指導要領を見据えて、投資関連の資料が多く含まれるようになった。金融業界が高校家庭科に並々ならぬ関心を寄せていることが伝わる。

2 どんな所から届くのか


金融庁、金融広報中央委員会、日本証券業協会、全国銀行協会、生命保険文化センター、日本損害保険協会、日本取引所グループ、投資信託協会、日本クレジット協会、日本ファイナンシャルプランナーズ協会、消費者教育支援センター、国民生活センター
また、民間の金融機関各社もウェブサイトに高校生向けの動画を掲載している。さらに民間のファイナンシャルプランナー会社が家庭科の教員と面会したいと営業に来る。

3 金融庁と業界の狙い


①(民間金融機関にとっては)若い新規顧客を獲得する好機を逃すまい
②国はもう国民の老後の面倒は見きれませんから、自分自身で資産形成してください
③これからの若い人には投資によって日本経済を支えてほしい

「18歳になったら自分一人で契約できる生徒の目の前にいる家庭科の先生には、ぜひしっかり金融教育に取り組んでもらいたい」

大量の資料や教材を作り、研修会やセミナーを開催する国や金融業界の思いが垣間見える。

4 授業準備の前に途方にくれる

大量の資料や教材、研修会のレジュメを目の前にして途方に暮れた。
①どう取捨選択して授業にしていくのか
②授業時間数は何時間確保できるのか
③そもそも自分自身の金融リテラシーは足りているのか
悩んでいても始まらない。実際に授業をする1年前の2021年秋から行動を起こした。どんな行動かは次回以降。

5 なぜ1年も前に始めたか


仕事は家庭科の授業だけではない。
①家庭科の別科目も複数担当
②学級担任や面談、部活顧問、分掌、行事の業務
③家事労働
準備にさける時間が極めて少ないのはわかっていた。

6 派遣講師に依頼しない

家庭科教員に金融教育はできないだろうと世間一般からは思われている。なぜなら、金融業界から届く資料や学校に来る営業には、派遣講師の案内が多数含まれているし、ネット界隈にもそのようなコメントが目立つからだ。
確かに付け焼き刃の知識で授業をする、あるいは時間数が足りないことを理由に教科書をサラッと読んで終わりにする(←つまらない授業確定)、

教科書の関連ページ


あるいはそもそも授業で扱わないことにする家庭科の教員に比べたら、専門家に授業してもらう方が生徒にとっては有益である。しかし、私は付け焼き刃でも自分で勉強して授業することにした。その理由は

◆交渉、手配、日程調整、謝金支払などの事務手続きが煩雑だから
(同じ授業を全クラスで実施するのに、行事や休日が入ると1週間では終わらないことがままあり、クラスごとの進度調整が困難になる)

◆自分が授業した内容でないと、テスト問題が作りにくいから

◆自分で授業をした方が、後々、生徒は私のことを身近なお金の相談役として認識してくれるのではと考えるから

そして何より
◆勉強したら自分で授業したくなってきたから

7 初めての授業を終えて


1)改善の余地あり

投資の本質は伝えたつもりである。しかし、生徒の理解は不十分だった。テストの結果からわかる。教えたい内容を精選できず、盛りだくさんだったのかもしれない。
また、数字やパーセントを見ると拒絶反応を起こすタイプの生徒にとっては苦痛に感じたかもしれない。授業方法にはまだまだ改善の余地がある。

2)生徒が一番知りたいことが伝えられない

授業を終えて最も不本意なことは、生徒が一番知りたいと思っていたことを、単刀直入に伝えられなかったこと。詳しくは次回以降。


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