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FGOハロウィン2022のためのざっくり水滸伝解説②呼延灼って誰?

ジャンプ漫画を読んでると「アニメ化したら二クールくらいやった後ここが劇場版になるんだろうな」って超盛り上がるバトルがあるよね。無限列車編とかレゼ編とか。
水滸伝のその部分が呼延灼戦だ!


梁山泊にもキャラの濃い面子がたくさん揃い、ついに国が放置しておけないくらい組織がデッカくなった。度々気に入らない役人を沈めてバラしてBBQとかしてる蛮族集団なので討伐は妥当。
強者揃いの梁山泊を討つために司令官として選ばれたのが双鞭・呼延灼だ。

建国の英雄の子孫で、彼自身も国に厚い忠誠を誓う、腐った屑ばかりの宋国では珍しい誠実な将軍だ。
経歴からして登場時点で結構な高齢だがめちゃくちゃ強い。

ちなみに彼の先祖の名前は呼延賛。ここからわかる通り、呼・延灼ではなく「呼延」までが名字だ。「呼将軍」って呼ばれてる作品がたくさんあるけど? 本当は全部それ間違いだよ!

歴史上でも漢の後にできた王朝に呼延という名前の軍人がよく出てくる。趙というモンゴル系の民族に建国された国だ。
この後すぐに書くけれど、呼延灼が騎馬戦で超強いのも、騎馬民族の血筋とするとしっくりくる。


呼延灼は騎馬隊と、頼れる副将ふたりと、別に頼れないがこの時代では実用化されてないレベルの火薬を使う大砲撃ちを連れて梁山泊を攻める。未来人かな。

中でも百八星を苦しめたのが、呼延灼が指揮する連環馬。
重装備をして足を鎖で繋いだ馬に乗り、機動力を捨てた代わりに圧倒的な重量でガンガン攻める作戦だ。
敵を撹乱して分散させる戦いが主流の盗賊たちにとって、決して乱れない騎馬隊はすごい強敵だった。

fgoで実装されるならライダークラス以外ないだろと思ってたけど、アサシンだったね。しかし、宝具はちゃんと連環馬。とりあえず皆殺しにすれば巻き込まれた標的も殺せるのを暗殺とは言わんだろ。

fgoでの呼延灼は超自然的な存在とミックスされている所謂幻霊。
くっついてるのはエンプーサだ。ギリシャ神話で冥界の女王に仕える片足は青銅、片足ははロバの怪物。重金属の装備と馬脚で皇帝に仕える呼延灼にはピッタリかもしれない。

悪戦苦闘する梁山泊だが、前章でのトラブルメーカーが名誉挽回したり、一度は分かれた各地の仲間たちが次々と加わったりで形成を逆転する。
打倒連環馬の特攻武器を造ってその後特に活躍のないひとも来る。可哀想。
ここら辺も劇場版っぽくてかっこいいし楽しい。

ついに捕虜となった呼延灼は、盗賊だが礼節を尽くして自分たちを持て成す梁山泊に感銘を受ける。騙されるな!
国を守りたいだけなのに官僚たちに邪魔をされたりと腐った政治の向かい風を受けていたこともあり、彼は梁山泊に入山する。

以降は百八星のひとりとして活躍するが、梁山泊が朝廷に仕える軍になった辺りからどんどん影が薄くなり、最期は皇帝の親衛隊となったが異民族との戦で殉死したことがサラッと語られるくらいだ。

fgo呼延灼が褒められたい・叱られたくないと常々口にするのは、国への忠義はあまり報われず、一度は自ら国を裏切った後ろめたさもあるのかな。


九紋龍こと史進含め、水滸伝には華々しく登場したのに後がパッとしない面子が結構いる。最初から最後まで活躍したのなんて林冲くらいじゃないか?

それは前回のざっくり解説で話した、水滸伝の人気の講談や物語をどんどんぶち込む成り立ち故かもしれない。
専門家でもないファンの憶測が多く挟まるので参考までに。

まず、呼延灼は水滸伝の大宋宣和遺事の頃から登場する。名前は呼延綽だけど、鉄鞭という異名もあるし、たぶん元ネタでいいだろう。

でも、そこでの呼延灼はそんなに目立たない。
彼に近い人物が活躍するのは水滸伝と同じ頃人気だった講談・楊家将演義だ。

楊業という建国時代の英雄の話で、これに呼延灼の祖先が登場し、水滸伝の彼と同じ武器で活躍しまくる。

著作権などない宋国だ。「鬼滅めっちゃ人気だから呪術廻戦にも炭治郎出しちゃおうぜ!」みたいなことをしてもお咎めなし。

ついでに岳飛伝という本の忠臣・老将などの要素も取り込み、「強くて忠義に厚くて鉄鞭二刀流のジジイ」という呼延灼が完成したようだ。

強いキャラを作ろうとしたというより、人気キャラ要素を取り込んだから強くなったという、ソシャゲのコラボイベントキャラは性能良くせざるを得ない感じに近いのかもしれない。

そして、呼延灼像に影響を与えた楊家将演義のメイン人物・楊業の子孫も水滸伝に登場する。

名家の子孫で作中最強キャラと幾度も互角に戦う剣士だが、殺人と二度の公務バックレを行う面白い男、名前は楊志。
鬼軍曹すぎて部下がついてこなかったため晴れて盗賊に栄転する。その短気さならマジで天職だと思うよ。百八星最推しです。

楊志も大宋宣和遺事から登場する古参だけど、そっちの彼は梁山泊結成に大きく関わるエピソードが複数あったりとほぼ主役格だ。

楊志は水滸伝の成立に欠かせないだから、彼の先祖と共に戦った英雄の末裔である呼延灼も生半可な奴にはできない。
ちょっと複雑だがそういう絡みもありそうだ。

水滸伝で優秀じゃないのに無駄に待遇がいい奴を調べると、他の講談から引っ張ってきた人気キャラだったりすることがたまにあるので。

楊志が梁山泊に入山するきっかけは呼延灼戦だし、ふたりの一騎打ちもある。
彼らの先祖の講談が好きな当時のひとたちには嬉しいファンサだったかもしれない。

こんな風に様々な要素を掛け合わせて生まれた呼延灼や燕青など水滸伝の好漢たちは、精霊などを掛け合わせるfgoの幻霊と相性がいいかもしれない。
イベントは続行中なので新たな情報が楽しみ。

時間と余裕と話すことがあれば、九紋龍エリザにくっついてる史進の話もしたい。

水滸伝を読もう!
この調子で林冲、楊志、武松、公孫勝、魯智深、花栄あたりも実装されないかな……。李逵はアップルの審査通らないから無理。

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