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映画「えんとつ町のプペル」は3つの"難しさ"をもつ映画だ

映画「えんとつ町のプペル」を鑑賞してきました.
映画通でもないですが一人で映画館に足を運んだために感想を共有できる相手がいなかったので,今の気持ちをnoteに書くことにしました.
どうしても少しは内容に触れないと説明できないので映画を完全にネタバレなしで見たい方は以降の文章を見ないことをオススメします.

映画を見終わった私の率直な気持ちは「自分の予想よりもっとずっと難しかったな」というものでした.
それゆえにモヤモヤ感があり,30分程度ぐるぐると頭の中で映画を振り返っていました.

①物語の導入を飲み込むのが難しい

私は原作の絵本を読んでいません.そのため映画の設定で知っていたのは,
「煙で閉ざされた世界でごみ人間と少年が禁じられつつも空にある星を目指す」というものでした.

しかし,映画がはじまって冒頭の20分程度で疑問符がつく展開が次々とやってくるのでそれを整理するので大変でした.大きなネタバレにならない程度に書くと

・HIDEさんの楽曲が流れるシーン
・ごみ人間という存在に対する一貫性のないえんとつ街の住人の反応
・次々と現れる新しい登場人物

などが一気にやってくるので,各シーンで出てくる疑問を飲み込み物語を読み進めることが私には必要で,よく分からないまま映画が進むということが続きました.

②取り扱うテーマが難しい

原作は絵本であることから伝えるメッセージはシンプルで「他人から馬鹿にされるような夢でも信じ続けることで未来が切り開かれる」ということが主なテーマだと思います.

基本的にはこのテーマに沿っているのですが,この他にも

・閉ざされた世界の同調圧力
・貨幣経済に対する問いかけ
・悪人とされる人物にとっての正義

など大人に対する強烈なメッセージが数多く含まれていたと思います.
特に「悪人とされる人物にとっての正義」が主人公ルビッチが星をみにいくという行為に対する正当性を弱くしてしまったと感じました.

西野さんはディズニーを倒すと公言されていますが,ディズニー映画は「悪に打ち勝つ」という子供向けなシンプルなテーマなので映画を見終わったあとのスッキリ感が得やすいですが,「えんとつ町のプペル」は悪側にも正義があるというディズニー映画とは異質なものになっています.

そのため,たくさん詰め込まれた大人向けテーマのことが私の頭に強烈に残ってしまい,映画を見終わった後に主題であるはずの「夢を信じ続ける」というテーマの印象が薄くなってしまいました.

③110分に収めることが難しい

①,②でも取り上げたように「えんとつ町のプペル」は様々な設定,メッセージ,演出,心理描写を盛りもりに詰め込んだ映画でした.その反動からなのか110分という枠の残り時間で,物語のクライマックスまでのまとめ方があっさりしてしまったように感じました.例えば

・突然やってくる船
・すぐ手に入る爆弾
・あっさり解決できてしまう空に旅立ってからの障害

などです.ここの盛り上がりが私にとっては今ひとつでした.
感覚的には立ちはだかる壁がハードルくらいの高さだったみたいな感じです.

最後に

結論,映画「えんとつ町のプペル」は私にとってはスタンディングオベーションが起きるようなものではありませんでした.
しかし素晴らしい点もたくさんありました.

芦田愛菜ちゃん,窪田正孝さんの演技
特に芦田愛菜ちゃんのルビッチは素晴らしかったです.少年の幼さや勇気,立ち向かう力強さがとても感じられました.いい意味で愛菜ちゃん感を感じさせない演技でした.窪田さんも別人じゃないかと思うほどプペルという役に入っており俳優さんの凄さを感じてしまいました.

美麗なCG,挿入歌を交えた演出
「天気の子」とやや似た設定でもありますが,クオリティも「天気の子」と同様に高いと思いました.登場するキャラクターは3Dタッチで表現されているのですが,今まで私個人としては3Dタッチのアニメーションに違和感を感じることが多かったです.しかし「えんとつ町のプペル」は特に違和感なく3Dのキャラクターが溶け込んでおり.3Dが映像を更に良いものしていると思いました.
また挿入歌と共に映像が進む部分(この部分の演出も天気の子と近いものを感じました)は映像にグイグイ引き込まれました.

様々な感じ方ができる映画
否定的に書きましたが,多面的な要素を含んでおり見るたびに抱く感想が変わる映画なのかなと思います.そのため皆一律に同じような感想をもつのではなく,映画を観た後にもそれぞれの感想を語り合える,そういった楽しみ方もできるなと思いました.
また主題歌,挿入歌においても有名なシンガーでなく,新しく出てきた方を起用されているので,それぞれがどんな人なのかというのも個人的には楽しめるポイントかなと思います.(粉ミルクさんはYouTubeで活躍されてた方かな?)


ディズニーに勝てるかというと正直厳しいのではないかと感じてはいますが,ウルッとくる場面もありましたしロングランで徐々に伸びてくるのかなと思います.また,エンドロールで「西野亮廣」と出たときはやはりグッとくるものがありました.
今後の展開を含め,出てくるであろう皆さんの感想などを楽しみにしたいと思います.


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