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「スッキリ中国論。スジの日本、量の中国」読書メモ

図書館で借りて読みましたが、面白かったです。

中国の人と仕事をする、している人は必読だと思いますし、中国人旅行者などがまた戻ってきた際に関わるような人も読んだ方が良いですし、純粋に読み物としても、へ〜、なるほど!と思う部分もあり、ためになる面白い本でした。

日本人と中国人の考え方の違いを説明してくれていますが、隣国で今後も深く付き合っていくであろう中国人の考え方の傾向が非常によく分かります。

常に規範を重視し「こうあるべき」を目指す理念追求型の日本人、
現状に即した臨機応変な合理性を重視する現実主義の中国人。

ひと言でまとめるとこういうことのようです。なるほど。

例えば、、、

通路で4−5人の中国人の従業員が立ち止まって談笑しているケース。

スジ論の日本人の考え
「通路は通るためのところであって、立ち話をするための場所じゃない」
という「べき論」「そもそも論」

中国人従業員の考え
「今ここで仲間と話したい」という欲求が出た時に考えることは、
①ここで話した場合、他の人が通れるか通れないか
②他人の通行に影響を与えているか、いないか
③影響を与えているとしたら、それはどの程度の影響か

を考えるので、十分に他人が通れるスペースを確保しておけば、そこで話すこと自体は問題ない、と考えて立ち話をする。とのことです。

どちらが良いとか悪いとかではなく、そういった考え方をするクセ、傾向があるとのことです。面白い。

なので、日本のスジ論でいうと、判断基準は揃うのですが、臨機応変に考える中国では、判断基準はバラバラになります。ただ、日本はこうあるべきとなってしまうと、融通が効かない、変化しにくいなどのデメリットがあります。

スジで考える場合と量で考える場合のメリット、デメリット。

「スジ」で考える場合
メリット
・行動が計画的になる。
・仕事の「前始末」をするので、スムーズに進むことが多い
・行動後の問題の発生率が低い
デメリット
・決断に時間がかかる
・前例にとらわれやすい、変化しにくい
・心配過多で杞憂に終わることが多い、結果的に無駄がでる。
・「万一の事態」を先回りするので、製品やサービスがオーバースペックとなり、過剰品質になりやすい
「量」で考える場合
メリット
・決断が早い
・現状の変化に対応し、臨機応変な行動をする
・(結果的に)効率的である
・現実に問題が出た時、初めて対応するので、うまくいっている間は無駄な行動がない
デメリット
・規範性が低い、人によって、状況によって言うことが変わる
・継続性に乏しい。1つのことを続ける根気に欠ける
・ものごとの本質を追求する姿勢が弱い
・同じ失敗を繰り返しやすい

なるほど。

順調に経済が成長しているような時代は、日本のスジ論での仕事や判断が有利な感じです。一方で、変化が激しい時代においては、中国の量で考えるようなスピーディーさ臨機応変さが有利な気がします。

今は変化スピードが速く、先も読みにくいと思うので、そういった場合は中国人の考えのクセをうまく取り入れつつやって行った方が良いようにも感じますね。

そのほかにも、

・食べ残しの料理を下げてしまう中国人従業員と、それに対して思う日本人の客。

・列に割り込む中国人は怒られたらどうするか?

・犯罪の重さも「量」で考える中国

・「日本人は買わない客にも丁寧!」と驚く中国人

・「社会を良くすること」は統治者の仕事。

・稼ぐなら「投資」の中国、「仕事」の日本。

などなど、スジ論か量で考えるのか、で、なるほどー!そういうことか!と思えるエピソードが満載です。

どちらにも良い点も悪い点もあるので、良い点は見習って、悪い点は改善する、というのが良いのでしょうが、そもそも歴史的や文化的な背景もあり、そういった思考のクセがある、というのを考えるのはとても良いですね。

「量」を基本とする思考は、自分自身の力で世の中を渡っていくための論理だ。己の能力や人間関係、そしてチャンスを見極め、リスクを避けるセンスに信を置く。それは国や企業といった、社会組織を信用しないからこそ生まれたもの、でもある。「自分は自分で生きてい。国や人様のことは偉い人が考えればいい。オレの知ったことではない。」言ってしまえばそういうことだ。

統治者に対する考え方も日本とは随分違います。

いわゆる民主主義の日本では、統治者は国民の代表、自分が選んだ代表が国の方向を決めたり、管理をしたりしている(ということになっている)ので、社会がうまく行かないのは管理者を選んだ自分たちの責任でもある、という大原則があります。

一方で中国の社会では、古代から今まで常に「支配者」がいて、民草の意思とは無関係に「自分たち」の都合で統治を行なっています。そのため、社会を統制して良い世の中にするのは、「偉い人」の仕事であり、自分たちにはあまり関係がない、という考えのようです。

これだとうまく行っている時は良いのでしょうが、国民に不満が溜まりすぎると、最後は革命というようなところまで行ってしまいそうですね。

中国古来の考え方で、易姓革命というのがありますが、辞書によるとこういうことのようです。

易姓革命
中国古来の政治思想。天は徳の高い者を天子として万民を治めさせ、子孫相継ぐが、もしその家(=姓)に不徳の者が出た場合は、その命をあらためて(=革)別の家の者に変える(=易)とする。

コワイ。。。うまくいかなくなったら革命して、指導者引き摺り下ろして、違う人にすげかえる、、、と。。。

そう考えると、中国の統治クラスの人たちのプレッシャーとかものすごそうですね、、、14億のパワーって、想像を絶する。。。

などなど、いろいろなエピソードがあり、このスジ論なのか、量の考え方なのかを、傾向として知っておくと、無駄な衝突とか、不毛な争いも減っていくような気がしますね。

日本の隣国ですし、今後仕事をする上でも、中国で仕事をするにしろ、インバウンドで迎えるにしろ、この傾向を知っているというのはすごいプラスになると思うので、この本はお勧めです。



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