「つくられた格差」読書メモ

ちょっと興味があったので読んでみました。
主にアメリカの税制関係の話なので、そのまま日本に当てはまらないにしても、なるほど!と納得できる部分もあったので、その辺のメモです。

アメリカ人の平均所得。75,000ドル(780万ぐらい)。裕福ですね。

ただ、これは平均なので、これを人口4つのグループに分けます。
①労働者階級(所得階層の下位50%) 1.22億人
②中流階級(その上の40%) 9,800万人
③上位中流階級(その上の9%) 2,200万人
④富裕層(上位1%) 240万人

①の労働者階級の2019年の課税前所得は18,500ドル(200万ぐらい)しかもこれは税引き前の給与。
②の中流階級は75,000ドルで平均と一緒。
③の上位中流階級は220,000ドル。(2,400万ぐらい)
④の富裕層の平均は1,500,000ドル(1.6億ぐらい)

①の労働者階級がどれほど報われていないのかが際立ちますね。これは移民や教育を受けられなかった人たち、貧困の連鎖が続いている人たちなのでしょうが、明らかにバランスがおかしいですね。アメリカの物価水準と公的サービスの少ない自己責任社会で年200万では到底足りない、、、

所得は労働か資本かに分けられる。
例えば、「家」はそれだけで住宅サービスを提供する(労働を必要としない)ので、資本集約的。一方、ビヨンセが公共の場でアカペラで歌を唄う場合は労働集約的。一般的に、エネルギー・機械系などは資本集約型で、レストランやホテルなどは労働集約型です。

で、この資本と労働に振り分けられる所得の割合が、だいたい労働75%、資本25%というのが長年だったようです。

ところが、それが1980年から2018年にかけて、労働が受け取る所得が75%から70%に減り、一方の資本が受け取る所得は25%から30%に増加しています。

これは、経済のグルーバル化によって、労働がどんどん安い地域に流れていくことや、テクノロジーの発展などが要因だと感じます。

所得が「労働」から「資本」に割合が移っている一方で、税金に関しては「労働」の税率が上がり、「資本」の税率が下がっています。

なぜか。

税金を高くすると企業が税金の安い国や、安い地域に逃げてしまうから、企業の税金も下げざるを得なくなり、なかなか国から逃げない労働者の税金をあげるしかない。ということのようです。(ひどい、、)

タックスヘイブンなるものができ、税率が安いから、大企業はそこに逃げていきます。これを防ぐには、国際協調でのタックスヘイブンを禁止、とか、大企業への適切な課税をする、といった政治が大事なのですが、うまくできません。(いろいろやっていたみたいですが)

タックスヘイブンになっているところは、基本的に小国です(アイルランドやケイマン諸島、、ルクセンブルクとか)

そうなると税率を下げても、大企業がきてくれれば、絶対金額が大きいので国としては嬉しいです。大国だと税金100必要でも、小国だと税金10入ってくれば良いから、税率を下げられる。

じゃあ国際協調でちゃんと消費した国で金額計算して、課税しようとかの動きもありますし、実際そうしているみたいですが、ズル賢い頭の良い人たちはうまく法の隙間をついた節税やってくるみたいです。

例えば、Googleの子会社をアイルランドに作って、そこにアメリカ本社がグーグルテクノロジーのライセンスを売る。そうなるとアイルランド子会社の利益が大きくて、アメリカの本社の利益が少ない、などになり、税率の低いアイルランドで払う税金も少なくなります。
またこういったテクノロジーの金額というようなものは、いくらが適正化という証明が難しいので、アメリカでもっと課税しようとしてもうまく行きません。

そうなると、大国としても離れられてしまうと困るので、法人への税金も安くする。。。といような循環です。

そうすると税収減るからその分労働者から取る。。と。
この構図は日本も一緒ですね。

一方で、エリート労働者のような人や個人事業主などのグローバルエリートは、税率低いところに移住などもできますが、普通の国から出られないような大多数の人は負担が増えても受け入れるしかない。。。

国境を超えたグローバルな経済が政治を包摂しているような状態では、こういった帰結になるしかないのでしょうか、、、結果、格差も拡大します。

アメリカの配当税は1990年は40%だったのが今は20%です。一方で、社会保険料など労働者の税金は上がっています。日本でも社会保険料はここ15年ぐらいで着実に上がっていますね、、、

そしてこのグローバルエリートへの不満が逆に保護主義などを生み出し、トランプ現象などにも繋がります。

結局、この本でも解決策は富裕層への課税強化とか再配分をもっと、ということなのですが、それが難しいことは歴史が証明しています。再配分を行う国は、国境という限りがある一方で、大企業は国境などを無視してグローバルに広がったり、移動もできたりします。

なかなか難しいな〜と思うような内容ですが、やはりその中で生き残るには下記のようなやり方がいいと個人的には思っています。

・資本家側になるための、株購入(低コストETFの長期・積立投資)
・個人事業主・一人社長法人などでの搾取される側からの脱却
・同時に、資本主義から離れても生きられるような自給自足・足を知る者は富む、といった暮らしへの移行

どうやら、この資本主義が政治よりも強い状態は、ある程度の揺り戻しがありつつも当面は続くんじゃないかと思っているので、どうやって自分が居心地の良い状態を作っていくのかは考えないといけないですね。


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