「教養としての投資」読書メモ

著者:奥野一成さん
タイトル:教養としての投資

投資についての良書でした。
ギャンブルのような投機などではなく、しっかり考えた上での長期投資について、またマインドセットの変え方など、非常に丁寧かつ分かりやすい内容でした。ビジネスをしっかり考えた上で投資をすることなど、改めてしっかり考える良い内容です。

テーマは株式投資のノウハウに関するものではなく、「投資をすることがビジネスパーソンにとっていかに大事であるか」というものです。

短期的な売買を行うような投機ではなく、投資にはさまざまな知識を総動員して結果に結び付けていくプロセスが必要であり、ビジネスと同じです。

著者は「投資は知の総合格闘技です」と言っています。

【1時限目】投資家の思想が人生を成功に導く

労働者2.0を目指せ。

働かされている、と感じたり、いつでも指示待ちで受動的な対応をする働き方をしている人が労働者1.0で、自分の時間と才能という自己資産を切り売りしているタイプです。稼ぎは「時間×時給」分しかありません。

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資本家やオーナー経営者は、「他人の才能と時間を利用」して、他人に働いてもらいます。物事を構想する力があり、自分で課題を見つけ、変革する力を持っています。

とはいえ、一足飛びに労働者1.0から資本家を目指すのは難しいので、提案として、「労働者2.0を目指す」というものです。

自分で主体的に働き、コミュニティも広がっていき、自社の中でも他部署と横断的に人脈を持ったり、業界全体に広がっていけば、仮に自社が倒産しても転職が容易であったり、起業といった選択肢も出てきます。

貧困は遺伝する。
一番の理由は、貧困な親は相当な確率で「労働者1.0」であり、その親が子供に「労働者2.0になれ!」などは普通教えない。
また欧米では私立大などの教育エリートの学費はとても高く、その教育を受けられない人はなかなか富裕層になりにくい状態である。
とはいえ、日本は欧米よりも公的教育のインフラが整っていて、教育は受けられやすい。ただ、学校の教師がお金の話を子供にしない、ともすれば投資で稼ぐのは悪者の考えだ、などの価値観がある。

労働者2.0になり働き方が変わると、視野も変わります。
広い視野で世の中のビジネスに目を向けることで、自分自身が働く以外にも収入を得る術があることに気づきます。働き方のマインドセットを変えるのと同時に、資産形成に投資を組み入れることによって、資本家に一歩近づきます。

また、「投資なんて不労所得を得るためのろくでもない考え方だ」と批判する人がいるが資本主義を理解していない人です。投資家は額に汗はかかないかもしれないが、脳みそは常に汗をかいています。とにかく考えて考え抜いた上で投資判断をしています。

投資の考え方
・日本電産の株を変えば、日本を代表する経営者の永守さんに働いてもらうことができる、と思って株を買う。(実際そう)
・大事な資金を投資するのだから、投資先がどういう会社で、どういう売上構成で、業績はどうか?競合他社に比べて利益率は?などしっかり把握するべき。
・大事なのは、「考える」ことで、自分なりの仮説など立てて検証するなどしっかり考え続ける。
・ポイントは短期投資ではなく長期投資でしっかり考えること。

【人生100年時代の選択肢】
昭和の時代と違い、定年後の人生も長く、企業年金なども減っていて、少子高齢化が加速している日本においては、自分でしっかり考える必要があります。

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また、「高齢者になってからも働くことが大事」などと言っている人もいるが、これには異論を唱えたいです。なぜなら、歳を取ると若い時より生産性は下がってしまいますし、イノベーションが必要な業界などでは役に立たなくなってしまう可能性もあります。

その解決策は2つです。
①22-55歳までの収入を増やすこと。そのためには自己投資で自分の才能を伸ばす。
②投資によって、他人に働いてもらう。自分より優秀で、稼いでくれそうな自分以外の仕組みにお金の一部を投じること

「時間」という有限なリソースを有効に配分する。

時間が有限な人生において、「自分が働く」だけではなく、投資などで「自分以外を働かせる」という考えは重要です。
投資では、複利効果もあり、時間の経過とともに資産も増えやすくなります。退職金からの運用では複利効果が生かせません。

時間という限られたリソースをたくさん持っている若い人たちは、いろいろなことにチャレンジできます。
若い時期は、お金を貯金するよりも、自己投資などで自分の能力や価値を上げていく方がリターンが多いですし、見聞を深めるための様々な体験も良いです。
世界のビジネスエリートは「自分の言葉で語れる」ことが不可欠であり、それには多くのビジネス体験、人生の経験を自分ごととして捉える主体性が最も重要です。

株式投資は他人にも働いてもらうことなので、時間の有効活用にもありますが、株式投資をすればすぐにリターンが得られるのではありません。
どんな企業でも企業価値を高めるのには時間がかかりますし、実際やると自分以外の仕組みを働かせることはリスクも伴いますし、そんなに簡単ではありません。

若い時には、まず自己投資をしましょう、「自分が働く」という最も着実な土台を整え、将来の選択肢を獲得することを優先しましょう。そして余ったお金は株式投資で自分よりも優秀な人や、自分が勤める会社よりも素晴らしい企業に稼いでもらいます。その投資中もほったらかすのではなく、投資先企業の事業性や産業について自分ありに考えるようにしましょう。

そうすると、ビジネスパーソンとしての思考力が格段にアップして、「自分が働く」という投資にも良い影響が現れ、相乗効果が生まれます。

【2時限目】私の投資家人生

著者のエピソード部分で割愛します。

【3時限目】日本人はなぜ投資が苦手なのか?

・日本はこれからもどんどん貧しくなっていきます(詳細数字は割愛)
・日本は資産の半分以上が現預金で、日本企業が生み出す利益がほとんど伸びない状態では株価も上がるはずもなく、個人金融資産が増えないという現状になっています。
・これから後期高齢者などが増え、約1,800兆円ある個人金融資産の取り崩しが始まるとより日本が貧しくなることを実感するのかもしれません。

そして、「貯蓄から投資へ」と国も推進しているのに、なぜここまで広まらないのでしょうか。
2つの点で日本人の資本家マインドを喪失させたと考えています。
①第二次世界大戦後の財閥解体によって、資本家としての成功体験が失われたのではないか?(海外では、ロスチャイルド、ロックフェラー、モルガンなどがある。)
②焦土と化した日本で生きていくためには、労働者として働かざるを得なかった。そのため全員が労働者1.0になってしまったからではないか?

そのため日本人は投資が嫌い、とか日本人は投資が苦手なのではなく、敗戦で、資本家マインドを得る機会を失ってしまったまま今に至っているというのが本当の姿だと思います。

楽して儲かることなんて絶対ない

投資教育、金銭教育をしていくうえで重要なのは「楽して儲かることはない」ということをきちんと伝えることです。残念ながらそれを伝えているコンテンツがほぼなく、投資が曲解されてしまっています。

FXなどは勝った人がいる裏で負けた人がいて、「億トレーダー」の裏側には大勢の参加者が大損を被って泣いているわけです(宝くじ当選者と一緒ですね)

世の中の美味しい話はほぼ全て「投機」か最悪の場合は「詐欺」です。

投資で収益をあげるのは、脳みそに汗をかくことであって、それは体を使った労働でお金を得ることと同等に大変なのです。

「美味しい話」はほぼ「投機」か「詐欺」で、投機の場合の勝率は良くて半々のギャンブルだと理解しましょう。詐欺は100%持っていかれます。
仮に本当に美味しい話があるとしても、それをあなたに漏らす人は常識的にいません。

資本家になることは日本人としての責務である。

近代社会における最大の発明でもある資本主義の仕組みを通じて、投資には文明を進歩させる力を持っています。世の中を少しずつ良くする力を持っているのです。その力を行使することは、金銭的に余裕のある先進国の国民としての義務でもあります。

【4時限目】投資と投機は違う

農地にたとえてみます。
みなさんは自分が農地に持つとしたら、そこからどのような収益を得ようと思って買うのでしょうか。

おそらく大半の人は、農地に作物の苗を植え、それが育ったら刈り取って販売し、売上を得ようとするでしょう。
したがって、ここで大事なのは、その農地からどれだけの農作物が取れるのかということです。これは投資です。

一方で「この農地は今安い値段でかえる、だから今のうちに買って、来年値上がりしたら売ろう」と考える人もいます。こっちが投機です。

前者は農業という継続的なビジネスが成功するかを前提にして農地を選択しているのに対して、後者は単にその農地が値上がりするかどうかだけを考えています。

農地なら多くの人が前者の考え方のはずなのに、なぜか株式になると変わってきます。

つまり「その企業が行っている事業から、どれだけの利益が得られるのか」(投資)を考えて株式を買うのか、「この株式を買うことでどれだけの値上がり益が得られるのか」(投機)を考えて株式を買うのか、の違いです。

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尻尾がついた動物に例えると、利益は胴体であり、株価は尻尾と考えることもできます。尻尾は常に動いているので気になりますが、大事なのは本体である胴体です。

なぜ日本には投機が多いのか?

米国に比べて利益が増え続ける会社が圧倒的に少なく、企業価値の向上をベースにして株価が右肩上がりで上昇するということが起きにくい、ため。

株式投資を考えた際に会社の見るところ、
一番大事なのは会社の利益であり、その利益を守り増やしていくための参入障壁がどれだけ高いのか、ということを常に考えています。

ここで考える利益の定義は、「お客さんにとっての課題を発見し、その課題を解決することで得られる対価」だと思っています。

それが利益となり、多くの人が抱えている課題・問題を解決するということは、ちょっとずつかもしれないが社会全体が良くなっていることに繋がります。投資家はそういう会社を見つけてその株式に投資します。

経営者・起業家はゼロを1にする人で、投資家は1を100にする人です。

【5時限目】売らない株を買えばいい

強靭な構造を持つ会社を選ぶことで、株を売らずに済む会社を選ぶことができます。強靭な構造とは、3つの要素に支えられています。

「高い付加価値」「高い参入障壁」「長期潮流」の3つです。

「高い付加価値」
本当に世の中にとって必要か?ということです。会社の存在意義です。
例:ディズニーというコンテンツや、施設、キャラクターなど

「高い参入障壁」
今更その人たちの向こうを張って勝負しようとは思わないほど圧倒的に強いか?
例:今更ねずみキャラクターで世界中のミッキーをひっくり返そうとする日tはいない。

ただ、参入障壁は色あせしやすいので注意。グーグルは同じような検索エンジンを作ろうとする人はいないので参入障壁は高いが、フェイスブックのSNSは代替される可能性もある。ウーバーやリフトも参入障壁は低い。

「長期潮流」
中短期でのブームや予想とは違い、もっと普遍的で不可逆的なものです。
例えば、人口動態でいずれ90億、100億となる事実。それがあるとディズニーの映画やテーマパークにいく人は間違いなく増えていく。

長期的な投資テーマなどのようなものより、「不可逆であると言い切れるもの」つまり元には戻れないものということです。

日本市場は人口が減少するのは間違いないので、日本国内のみをマーケットにしている企業には長期潮流の観点からは明らかにマイナスです。

そういった中で実感として、長期潮流に乗っている日本企業は上場している中で5%程度であり、市場全体を買うインデックスファンドは日本株に限れば全くの無意味です。

もし永久に利益を出し続けられる企業があれば、永久に持ち続けるべきですが、現実にはそういった会社を発掘するのは非常に難しいです。
そのため、高い参入障壁を持っている会社をみつけて投資したら、あとはその参入障壁が失われていないかどうかをチェックする必要があります。

参入障壁がある限りは保有して、もし参入障壁がなくなったと判断した時は売るタイミングです。

【6時限目】ファンドマネージャー流、株式投資で成功するコツ

オーナーになっても良いと考える企業や事業を選ぶという視点で株式投資を行うので、単に株価をトレードするスタイルの人には役に立たないかもしれません。

・テクニカル分析は意味がない
・PER、PBR、売上利益などは過去のもので、未来を語るものではない
・大事なのは利益が増え続ける上で必要な参入障壁はなんなのか?を仮説を立てながら探っていくこと
・単なる情報ではなく、自分で考えること(下図)

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・PERよりもその逆数で計算される「株式益利回り」を使ってみる。
 1株あたり純利益が30円の会社が株価600円だとしたら、PERは600÷30円=20倍。株式益利回りは30円÷600円=0.05=5%

もしこの会社が30円という利益を出し続けられるなら、投資家は5%の利回りを楽しみ続けることができ、20年で投資した元本を回収できるということ。

保有株を売却するときの判断基準

①見立てが間違っていると投資したあとで気づいた時。(参入障壁が思ったよりもなかったなど)
②より面白い投資機会が出てきた時。
③株価がフェアバリュー(適性価格)対比で上がりすぎた場合。一旦売却して利益を確定させ、株価が適性になったと判断した際は買い直す。

【補講】資産形成で失敗しないために

①長期投資ができる仕組みを作る(天引きでのiDecoやつみたてNISAなど)
②年金は破綻しないが、受け取る予定の年金が減るから
 ※賦課形式(仕送り型)なので、破綻はしないが少子高齢化なので、受け取るものは減るのは間違いない。
③長期投資をするのであれば、会計に関する最低限の知識はあった方が良い。
④高配当株はタコ足(タコが自分の足を食べている状態)の可能性が高く、気を付ける。
⑤日本のインデックス型の投資信託(TOPIXなど)はやめた方が良い
⑥アメリカのS&P500など入れ替わりがあり強い会社しか残らないようなインデックス型はあり

最後に、投資は知の総合格闘技です。
「楽して短期的に儲けようと思うな」ということはしっかり心に留めてください。

長期投資とビジネスは完璧な相乗効果を発揮します。
旺盛な知識欲と実行力で邁進していった先に、見たことのない新しい景色が見えてくるのです。

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良書でした。しっかり考えた上で、長期でやっていこうと思います。
このコロナショックでアマゾン株を売ってしまい(落ち方が怖すぎて利益確定してしまった)、あのまま持っていればという後悔がある僕としては、この本の通りにしっかり考えて投資していれば売らなかっただろうに、という反省をしつつ、学び直していきたいと思います。




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