Roppongi Passion Pit 📻2021/01/01OnAir（ゲスト/大森美香さん）書き起こし　その2

D: BOSSことDEANFUJIOKAさん
Y:三原勇希さん
O:大森美香さん

Y:ではここからは､BOSSが五代友厚役でお茶の間に広く知れ渡るきっかけにもなった､2015年の大森美香さん脚本の朝ドラ｢あさが来た｣についてもお話を聞かせてください
O:ありがとうございます
｢あさが来た｣っていうのを改めて振り返りますと､明治を代表する女性実業家･広岡浅子さんをモデルに描かれていて､実在する歴史上の人物もたくさん登場するという､朝ドラには少し珍しい脚本だったのではないかと思うんですが
O:そうですね
Y:はい、これ手掛けられてみて､改めていかがでしたか?
O:そうですね､あの朝ドラ史上一番､あの､昔から始まったというか､あの､今までこの､明治から描いた作品はあるんですけれども江戸時代から描いた作品というのがなくて､その､朝から丁髷を見ていいのかとか
D:そうだ
O:そういうところから最初話し合っていたんですけれど､はい､そういう面でもけっこうチャレンジャーな作品だったんですね､はい｡で､私もこう､原作があって、あの、古川先生の原作(注:古川智映子『小説土佐堀川』)があって、それを元にさせていただいたんですけれども､あの､1冊の本だったので､あの､朝ドラにしていくにあたって､いろいろたくさん膨らませていただいて､それで作りましたね｡白岡あさちゃんという名前に､主人公をさせていただいて｡でも､そんななかで実名で出たのが五代さんだったという｡
Y:ねえ､おもしろいですね｡
O:そうですね､はい｡
Y:ええ､その､そうですね､どこから聞こうという感じなんですけど､膨らませる上でどこをいつも大切にされてるんですか?
O:そうですね､やっぱりこう､私が物語を作るときはやっぱりキャラクターが大事で､主人公がこういう性格だったら旦那さんにはこういう性格の方、その周りの家族にはこういう方がいいなっていうふうに作っていっているので､で、特にこの五代さんというのはそこに急に現れる方っていうところだったので､キャラクター作りがすごくこう､チャレンジングなところがあったなぁと思いますね｡なので､その原作の本には五代さんはワンシーンしか出てこないんですね｡で､あの主人公の広岡さんに､これからお商売を続ける上での､こう､ヒントを与えて､もう亡くなるちょっと前の晩年にお会いしているっていうシーンがあるんですけれども､あの､そこだけだったんですけど､やっぱりこう､大阪経済を描くには五代さんを膨らまして書いたほうがよいだろうということをNHKさんとお話をして､そこはいっぱい膨らませて､あの､五代さんのことを勉強､その原作本とは別に､五代さんの勉強をしてから執筆をしておりましたね､はい｡
Y:もう､あの､その時は五代さんがほんとに日本で知れ渡り､ディーンさんと共に話題になりましたけど
O:はい
Y:あらためてBOSS､この役を振り返っていかがですか
O:どう…いかがでした?(3人笑い)なかなか私もこう､聞く機会がない…
Y:今の考えを､こう… 
D:そうですよね。その､もう僕にとってはですね､恩人みたいな存在ですね｡お会いしたことがないですけど｡やっぱりこう､大阪に仕事で戻ったりすると毎回､あの北浜の取引、証券取引所の前のところを通って、車停めて､なんかお墓参りみたいな感じですよね､もう｡
Y:挨拶に行くみたいな
D:そうそうそう｡ちょっと､そうそうそう､あの､顔見せに行くじゃないけど
Y:はい
O:それは喜んでらっしゃると思います､五代さん｡
そこがやっぱりこう､ディーンさんとなにかがこう､なにかの部分がシンクロしたんでしょうね｡
Y:ううん､そうですよね｡ほんとにあの､印象深くて､この撮影のエピソードとして､五代さん､当初は2015年の年末の放送日で亡くなる予定（大森さんの笑い声）だったのが､あまりの人気から脚本を書き換えて寿命を延ばしたっていう話が…
O:これは､これはねぇ､嘘です｡
Y:あ､嘘なんですか⁈(3人笑い)
O:これはね､ちゃんとあの､五代さんのスケジュール、それこそディーンさんのスケジュールとか役者さんのスケジュールとかがあるので､亡くなるタイミングというのは､もうなんかね､最初に26週分かな?こう､立てるんですけれど､そこからね､変えたらいけないんですよ｡
Y:あ､そうなんですか!
O:ただ､あの､もちろんやっぱり視聴者さんの声が聞こえているので､あの､より華々しく亡くなっていただこうとか(BOSS弾け笑い)そういう気持ちにはね､もちろんなりましたね｡はい､そうですそうです｡
Y:それはやっぱり､その､台詞をその後考えたりとか
O:そうですね｡台詞とか､やっぱりこの主人公のあささんとの関係性とか､そういうところをどういうふうにしていこうっていうのは､ええと､細かいところはどんどん書きながら決めていくところがあるので｡一番最初に書いてる時はまだ､それこそディーンさんがやるとかも決まっていないし､あの､役者さんがほとんど決まっていない段階で
Y:なるほど!
O:それこそ､主人公のあささんもまだオーディションだったので決まってない状態で書いているので｡あの､どんなふうな絵になるかっていうのが空想できていなかったのが､いろんな方がキャスティングが決まると､それ､その声とかね､お姿でこう見えてくると､｢あ､このお2人が一緒に映っているところは見ていると素敵だな｣とか｢声の2人のバランスが素敵だな｣とかそういうようなことで､こう膨らませていったりっていうのもありますね｡
Y:そうだったんですね…そして昨年は大森さんにとって､そんな初めての大河ドラマとなる｢青天を衝け｣の脚本をご担当されました｡
O:初めてでした､大変でしたね｡(笑い)
D:2年間
Y:2年間も
O:やっぱり原作が今回なかったので､こう､調べる量がものすごくて｡もちろん､その､主人公である渋沢栄一さんについても膨大な資料があるのでそれも調べるけれど､出てくる登場人物1人についてもやっぱりそこの背景とかそこの時代背景とかをいろいろ調べるんですよ｡たとえばペリーさんが出たらペリーさんの著書をやっぱり何冊か読んでいったりするので｡なんかね､あの､果てしない作業をずっと続けて､たぶん書いてる時より本読んでる時のが長いですね｡
Y:きっとそうですよね｡やぁ､そうですね｡もうやっぱり､歴史好きの方も多いですしね｡
O:そう､そうなんですよ｡やっぱり､ね､見て｢違う、そうじゃないぞ｣とかいう方もきっといらっしゃるでしょ?だからなんか､ちゃんとこういう説がありますからっていうのが､あの､歴史好きの方にも納得して面白いと思っていただけるものを届けたいっていうふうに思ってたので､はい､チャレンジングでしたよ｡
Y:はい｡そんな中でもひとをリアルに描いているところがすごく反響があったのではないかと思うんですが
O:ありがとうございます
Y:｢あさが来た」と時代背景が重なる部分もありましたよね
O:そうですね｡でも一番重なってたのは五代さんね｡一番重なってたのは五代さんですけど｡
Y:そうですね
O:時代…あのお､栄一さんが生まれたのが1840年であささんが生まれたのが1849年とかなんですね｡だからほんとに時代が被って､でも渋沢さんのが先に生まれて後で亡くなってますけれども｡はい､そうなんです､まる被りなんです､だから時代背景としては｡そうでした｡だから一回調べたこともベースにありながらまたプラスして調べてっていうようなことをしてましたね｡
Y:そのなかで､五代友厚役を｢あさが来た｣に続いて再びBOSSが演じることっていうのはすごく話題になりましたね､始まる前から｡
D:いやもう､びっくりだよね｡
Y:このキャスティングはどうやって決まったんですか?
O:（笑い）このキャスティングは､もう渋沢栄一さんを題材でやるって決めた時に､あの､｢それでしたら五代さんはディーンさんでお願いします｣って
D:いやぁ､ありがたい
O:その時からもうお願いしました｡
Y:あ､大森さんが!へぇえ!
O:はい､私がお願いしました｡
D:ありがとうございます
O:あの､やっぱり書き方がね､朝ドラと全然違うので
D:そうですよね
O:全く違うものを作るという意識がすごく強かったんです､同じ幕末を扱っていても｡全く違うけれども､ええと､その､全く違う中でも時代が同じなんだよっていうことが､ディーンさんに演じていただいたらそこがなんとなく見ている方、たまたま一緒､両方見ていた方には地続きになるんじゃないかなっていうところはすごくこう､ロマンチックかもしれないなぁと思って、あの､ありましたね｡でも出てくれるかはわからないなぁと思っていたけれど､はい
D:改めて、ありがとうございました｡
O:とんでもない、とんでもないです、はい。
D:なかなかその、役者のお仕事で、違うプロジェクトで同じ、あの、しかも歴史上の実在した人物を演じる機会って、自分はもちろん初めてですし、話、そういうの聞いたことない
O:聞いたことない
D:ですよね
O:私ももちろん初めてですし
Y:すごい
D:だから、よくこうなったなっていう。それこそ朝ドラと、あの、大河で全く違うプロジェクトを作ろうって、きっと大森さんもだし、他の方もみんな
O:皆さんもそうですね
D:そう思ってたと思うんで。そんな中で全く同じ、自分が行くっていうのがすごい、こう逆説的な感じになってるんですけど、でも今の、あの、お話を聞いてすごく納得しました。
O:そういっていただけると。でもなんか、あの、それが発表された時の、あの視聴者の方の反応とかを伺っていると、やっぱりこう、そこをロマンチックというかね、喜んでくれる方がやっぱりたくさんいたんだっていうのは、あのとても嬉しい
D:ですよね
O:ことだなぁと思いましたね。たぶんでも、五代友厚さんという人自体を、大阪の方はみんな知ってるんです。大阪の方は知ってるけど、全国区でそんなに知らなかった中からいうと、やっぱりこう、イメージがね
Y:はい
O:こう、1つになるっていうのは見てる方にとっても、こう、心が入りやすいところもあるのかなと思ったりしました
Y:そうですよね。ほんとにそうだと思いますし、また違った視点でその人物を見られるっていうのは大きなところでしたよね、今回は。
O:そうですね、はい。
Y:BOSSは五代さん、この2015年の五代さん、に演じた五代さんと違う五代さんになっていたと思うんですが。同一人物なんですけど、
O:そうですよね、また違う…
Y:ねえ。どういうふうにこう演じ分けられたんですか？
D:0からやり直しみたいなところがあったよね。あの、「青天を衝け」の時ってもっとこう…どういう言葉が正しいのかわからないんですけど、もっとこう、男っぽい感じですよね、簡単に言うと。
O:そうですよね
D:そう、だからなんかそこが「あさが来た」の時のちょっとこう、「あしながおじさん」的な
O:ん、そうですね！あささんにとっての素敵な先輩というようなところが大きかったから
D:やっぱり最初から印象が違ったので、そこが…
Y:最初、悪役っぽかったですもんね
O:（笑い）
D:あー、まあ立ち位置的にね。対立する関係にあったから。
O:でもね、それも面白かったですね。やっぱりこう、ああこの暗躍しているとかいうのが。で、絶対にこう、見ていても、絶対に根が悪い人じゃないことはわかってるじゃないですか。
（3人笑い）
O:ねぇ、それもあって、こっからどう関わってくるかなっていうのを、なんか私も楽しみに見てましたね
D:なんか、だから自分がこう、五代さんをこう違う角度で2回、役者として突き詰めていった中で、やっぱりこう、その、演技の仕事で映像作品の中で必要とされる、なんかエネルギー以上のものが生まれ､て、しまい
O:なるほど、うーん
D:五代さんが夢に出てくる、なんか夢に立つ、枕に立つみたいな
O:ああ、そうですか
D:あの、ちょっとこう、啓示を受けたような体験をしたんですよ。
O:えええ！
D:こういうの初めてで。五代さんが窓の外を見て、窓の外に川が流れていて、そこでなんか迷子になってる人がいて、みたいな、なんかその、要は簡単に言うと曲を作ったんですね。君はこういう曲を作りなさいって言われた、みたいな啓示を受けて
O:へぇええ
D:で、「Hiragana」っていうタイトルつけて。別に誰に頼まれたわけでもないんですけど。なんかそれだけこう、自分の中で、やっぱこの2回の“五代さん経験”は
O:はいはい
D:ひとつの、こう、thresholdみたいなものを超えたんですよね。そう、それで何か残さないといけないみたいになって、で、五代さんを筆頭に当時、その、明治維新前後
O:はい
D:あのぉ、まぁ新しい日本を作るために
O:はい、たくさんの
D:当時の日本の先輩方が、あの、偉業を成し遂げていった、そのなんか、もちろんこういう大河ドラマであったり朝ドラで描かれていたりする部分もあるんですけど、そういうところに出てこない、なんもしてない日常の、ふと、ひとりで休憩してる時の、“ふっ”ってなんか、窓の外の景色見てる時によぎるような情感みたいなものを曲にするべきだと思って
O:へぇええ
D:それで自分の中では勝手にその、「明治維新のテーマソング」みたいな、五代さんのテーマ曲みたいな感じで作ったんですね、この「Hiragana」っていう曲を。
O:そうですか、はい。
Y:では、ここで一度、そのDEAN FUJIOKAさんの「Hiragana」という曲、聴いていただきましょうか。
O:嬉しい、ありがとうございます。