今後の証券モニタリングの方向性

5月8日、金融庁から、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)が公表されました。
https://www.fsa.go.jp/news/r1/shouken/20200508-2.html

また、同日、証券取引等監視委員会から、「今後の証券モニタリングの基本的な考え方」(案)が公表されました。
 ⇒ https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2020/2020/20200508-1.htm

今後、証券モニタリング手法が大きく変わろうとしています。

■公表内容の概略

現在、証券取引等監視委員会が所管する「金融商品取引業者等検査マニュアル」は、「態勢編」と「業務編」の2編で構成されていますが、今後においては、「態勢編」は金融庁が所管する「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」へ引き継ぎ、また、「業務編」は廃止され、結果、「金融商品取引業者等検査マニュアル」全体が廃止されることになります。

■今回の改正に至った背景

平成30年10月、金融庁から公表された「コンプライアンス・リスク管理基本方針」には、次の考え方が示されています。

「金融機関は、従来からも、適切な内部管理態勢を構築・整備する努力を続けてきた。それにも拘わらず、既存の法令には直ちに抵触しないものの、利用者保護や市場の公正・透明の観点及び金融機関に対する社会的な要請に照らし不適切であり社会的批判を受ける等、金融機関の経営に重大な影響をもたらし、またその信頼を大きく毀損するような事例が発生している。
これらの不祥事の多くにおいて、その原因として、経営陣の姿勢、ビジネスモデル・経営戦略、企業文化等、経営の根幹そのものに関わる問題が関係していると考えられる。」

上記の不祥事件は、「スルガ銀行事案」や「野村證券事案」を指しているものと考えられますが、法令違反の有無を形式的に確認したり、また、個別事案の部分的な事項の事後検証に焦点を当てた従来の検査(証券モニタリング)では、「今後も起こり得る経営の根幹そのものに関わる問題を防げない」という行政の危機感の表れでもあります。

■今後の証券モニタリングの方向性

1.法令等に基づき適正に業務を行っているか、引き続き厳正に検証される(従来通り)。
2.既存の法令等には直ちに抵触しないものの、経営陣の姿勢、ビジネスモデル・経営戦略、企業文化等の全体像の把握を行い、将来において問題が発生する蓋然性の有無が検証される。

上記2.については、検査官と金融商品取引業者の各階層(経営トップから役員、本部職員、営業職員、社外取締役)との双方向の「対話形式」を中心に行われるものと考えます。

・「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)
・「今後の証券モニタリングの基本的な考え方」(案)
については、6月8日(月)までの意見募集後、施行されることになりますが、今後の証券モニタリングに、どう備えるのか?

社内での議論を開始していきましょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
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