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こねこねこ

「お前に仕事を与える」
突然に、ボスからそう言われました
ツインレイであるボス。

最近の私は、ボスに従順です。

「はい、なんでしょう?」

「仔猫、来るから。受け取ってやって」
「…………はい」

仔猫を引き取ろうとしていたことは知っていた。ブロックされてるなりにTwitterをチェックしていたから。
私は自称ストーカー。

「明日の午前中、猫が来るはずなんだ。俺は今日の営業がどんな風になるか読めないから、寝過ごしてしまうかもしれないし」
「はい」
ボスのお店は日によってまばら。
金曜なのに空いてたり、月曜から混んでたり。
かと思えば木曜も混んでいる。
空いてる日は本当に、波打ったように誰も来ないんだけどね。
「それから。バイト代出すから、ケージ買ってきて。組み立てて。仔猫用に」
「はい」
簡単にこんな風なやつ、と説明を受ける。
ホームセンターで売ってるやつ。成長を見越して2階建て風であること。トイレもそこに納めるから、買ってくること。
留意点を確認して、お金を受けとる。
ケージか。。非力だけど、持ってこれるかな。そして、組み立て出来るかなぁ。。
ちょっぴり不安を抱えて、でもボスに頼まれ事をされたせいで、浮かれていた。

無事にミッションをこなし、ボスに披露して、一時間半かけてケージを組み立てる。
部品をはめるのに思いの外、力が必要で、手首が痛くなっちゃった。万年腱鞘炎なのに。

時々ぶつぶつ呟いたら、ボスが背中で言った。

「私語は慎むように」


その日は、仕事をした対価の1つとして、半出禁中にもかかわらず、お店で遊んでいっていいことになった。やった!そしたら、仲良しがいっぱい来て、朝の3時まで遊んでしまった。

猫の受け取り、きっと私なんだよなぁ。。

翌日。
案の定、仔猫を引き取るべく、officeに出勤。
私はいつも11時に登場するけれど、今日は10時だ。家族のお弁当を作ったから、起床は7時半。4時間くらい眠っても足りない私は、ぼんやりしながらofficeでイスに横になる。
連絡を待ちながらうとうとしていた。

11時。スマホが鳴って、はじめまして、から始まる文面を確認した。ボスが私のLINEIDを送っていたのだ。やり取りの後、officeに連れてきてくれることになった。
30分後、外で聞きなれない声がした。
猫がピーピー鳴く声。「!!!」
これだ、と玄関を飛び出して、声をかけた。
「あの!」
officeに入ってもらって、少しだけ話した。

保険屋さん風の女性。人当たりが良さそう。

会話の端々から、彼女が友人から今日預かってきたようだ。元々の保護者は別にいる。
仔猫がお腹を空かせて鳴いているので、買ってきてくれたミルクをいただくことにした。
「……………」
缶を手に取って、私は固まった。
…………離乳食じゃないか。
どう見ても、うちの子達と対面したときより小さい。ピーピーと鳴く声が幼すぎる。
生後1ヶ月未満。

推定生後2週間だろうか。

なんでミルクじゃないんだろう。と思いながら、仕方なくそれを多めのお湯で解いた。

猫に牛乳はご法度。目の前に出せば飲んでしまうけど、猫には分解できない乳糖が含まれているからお腹を壊すのだ。特に仔猫はだめだ。

落ち着いたらあとで買い出しかなぁ。

私は悪い予感を抱いていた。

この子は3時間おきにミルクを飲むんだろう。そしたら、ボスには面倒みきれない。じゃあ誰が面倒みるのだ??

彼女との出会いから10分あまりで、私の未来が垣間見えた。

この子の世話をするのはきっと、私だ。



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