私と先生。生きると死ぬとは。


出会いは最悪。

「これから数Aの授業を担当します。よろしくお願いします。」
生徒だった私にとって、教師には拒絶感があった。
でもこの先生は…
目が…死んでる…。

そう特に教師と呼ばれる中でも目がめちゃくちゃ死んでいた。
「この先生か…。きっと赤点とるな…。」

元々の拒絶感より、増して拒絶感があった。

徐々に埋まる距離。いつしか信頼に。

「あのー、ここ教えてもらえますか?」

赤点をとることだけは勘弁!!
この先生に怒られるの絶対怖いし。
いや、聞きに行くのもハードル高い…。

そんな風に思っていた当時の私。
それは大きな誤解に過ぎなかった。

「あーここね、これはこうで…」
(え、この先生、めっちゃわかりやすい。)
「どう?わかった?大丈夫?」
(え、目が輝いてる…。しかも優しすぎる…。)

それから私はこの先生とともに過ごすことになる。

一緒に過ごした一年。距離が遠くなっても会いに行くように。

「せんせー!元気?ちょっと相談があって…。」

それからというもの相談に乗ってもらうように。
笑いながら答えを出してくれる時もあれば、
「なるほどなー。」と考えることも。

私のために何時間も割いてくれていた。
その中で私が先生に直球で質問したことがある。

「先生、死にたいって思ったことある?」

「うーん」先生の返答は少し止まった。

「あー、でもあるかな。今すぐ死にたい、はないけど、もうすぐ死にますっていう状況はある。」

(???)

「なんかね、いろいろ考えるのよ。今死ねますか?ってなった時に『いやいや待ってください!まだやりたいことあります!!!!』ってなるんだよな。」

返答がよくわからないけど先生の答えは続いた。

「結局、やりたいことやり遂げるまで生きてるんだよ人間って。俺はそう思う。」

そんな先生が夢で語った生と死。

「絹ー」
夢の中で先生は海の中にいた。

「どこにいんの!?こっちに来て!!」

「俺はやることやったし、もう行くわ!」
「やりたいことやるんだぞー!それまでは絶対死ぬな。俺と約束なー」
「やりたいことやったらもうお前の自由だ。死ぬも生きるも自由。」

「生きてるうちに何があるかはわからん。でもやりたいと思ったことだけは諦めるな。死ぬまで悩んでもいいから諦めるな。」

「死はいつでも近づいてくる。負けるな。負けていい時はやり遂げた時だけ。頑張るんだぞー。」

そういって先生は海の奥に沈んでいった。
私に何を伝えたかったの?

今を生きる。ただそれだけを伝えたかったのかもしれない。

今を生きて。ただそれだけを伝えたかったのかもしれない。
海に沈んでいく先生を見て私は死を考えた。

やり遂げることの大切さ。そして死は突然やってくること。
それまでにやり遂げることが人生の幸せにつながるということ。

先生は私に生と死の課題だけを残して海に沈んだ。
今を生きることが果たして正解なのか。

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