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「生きる」

今年のゴールデンウィークに、とある美術館に行った。パイプオルガンがあり、ゆったりとした時間が流れる美術館。

その美術館には、2人の画家の作品が飾られていた。どちらの作品も素敵だったのだけれど、中でもアウシュヴィッツの獄中で監視の目を盗みながらも作り続けた1人の画家の作品に虜になってしまった。

正直、私はこれまで戦争が関わるものは避けてきたと思う。この世に生を受けた以上、知らなくては、見なくてはならないとは思っていても、少し触れるだけで自分では抱えきれない感情にのまれて押しつぶされそうになる。それに耐えられず、耐えられると思えずについ目を逸らしてきた。

そんな中で出会った作品たち。洗濯物にまぎれこませて収容所の外に持ち出されたという版画達は、小さくも「生」に対する希望で溢れていた。"いつかこの場所から出たなら"と誰もが願った世界をうつした版画に対して、色々な感情が溢れたのもそうだが、そこに添えられている作品の解説の言葉もとても素晴らしいものだった。選ばれている言葉が素敵だっただけでなく、読むことで一気にその作品の物語が鮮明に流れ込んできたことが衝撃だった。

そんな衝撃を受けながらも、また家でゆっくり画家や作品、解説について調べて作品を読み込もうと美術館を後にした。

と思ったらびっくり。この時代にここまでヒットしないことがあるのか、と固まってしまうくらいその画家や作品、解説についての情報に出会えなかった。今やネットで調べれば何でも出てくると思っていた自分が恥ずかしい。
いや、しかし逆に燃えてきた。見たい。何としてでもまたあの作品と解説の言葉に触れたい。

そんな数少ない情報の中に、唯一希望が持てた物があった。
それはその美術館の展示資料と書かれた1冊の本。ある古本屋のサイトにあった本の写真を見て、恐らく私が求めているであろう事が詰まっている予感がした。しかし売り切れと書いてある…せっかくまた触れることが出来そうだったのに、出来ない。いや、でもそれでも諦められない。

ということで美術館に電話をした。出ない。時間を変えて3回。出ない。嘘!?あ!!!美術館のサイトにお問い合わせフォームがある!私の想いを全力で打ち込んだ。送信!!しかし返事がこない…!1ヶ月迷惑メールフォルダをシュッて読み込み続けたけど返事は無い。まだ諦めない。私はタチが悪くて諦めも悪い。よし。次は手紙だ。手紙ならいけるかもしれない。郵便ポストあったっけ…?いや、無かったら尚更直接郵便屋さんが届けてくれるか!!!!

みっちり3枚書いた。気合い入れてシーリングスタンプとかしちゃった。1番お気に入りの切手を貼って祈って手紙を出した。

そして手紙を出してから9日の今日。ヘトヘトで仕事を終えてみたスマホに、美術館からメールが来ていた。声が出た。恐る恐る開くと、絶版状態にあったその本が、先月倉庫の奥から在庫が出てきたと。定価で販売することができると!!!
こんな嬉しい奇跡があるのか。もちろん購入させていただくに決まっている。あまりにも楽しみだ。また、またあの作品たちに触れられる。興奮が止まない。

という倒れてしまいそうな幸せな勢いで書いたnote

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