在明の別れ

つれなくみえしわかれよりうきものにおもひはてにしありあけのそらはかりかはらぬかたみにて
まちいづるなかつきのくれはましていひしばかりのかたみたにむしのねとともによはりはてぬる心地するを

<意訳>
振り返りもせずに去っていった人を見送ってから、
夜明けの月を見るたびにあの人を思い出す。
あの短い夏の夜に聞こえていた虫の声がすっかり聞こえない季節になっても、
私はまだあの人を待って夜明けを迎えてしまうらしい。
またねっていう一言にどれだけ期待をしながら、
私は今日も夜明けの月を眺めているのだろうか。

あの人は今どこで何をしているのだろう。
あとどのくらい待てばあの人は会いに来てくれるのか。
本当はもう会えないこと、知ってる。でも認めたくない。

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