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一生好きだった人

人生でいちばん好きだったな、
この先これ以上人を好きになることはないな、

あなたにはそんな風に思える人がいますか?


私にもそんな人がいました。

きっかけは好きなバンド。
友達の紹介で意気投合し、お互い好きになるのにそれほど時間はかからなかったと思います。交際が始まるときもどちらからという訳でもなく、なんとなく始まりました。

学生なんてやることがないし、お互い連絡を頻繁に取りたい性格だったので、家にいるときはほとんど彼とのLINEを開いてたと思います。

彼はものすごく私のことを好きでいてくれて、私への好意を永遠と伝えてくれていました。

暫くして慣れてきたのか、頻繁に喧嘩するようになりました。それも原因は些細なことで、ほとんど私が不満をぶつけるところから。今考えれば素直すぎるくらい彼に全てをさらけ出していたと思います。
若気の至りですね。

お風呂に浸かりながら、彼と画面越しに喧嘩する。
電話で喧嘩することはありませんでした。
きっと言ってはいけないことまで言ってしまう、と無意識に自制が効いていたのかもしれません。

「ごめんね」
「嫌なことがあったらお互い伝えようね」

この二言が合言葉かのように、そこで喧嘩は終わります。そして何も無かったかのように彼が、好きだよ、と伝えてくれました。

でも、そんな日々も長くは続きませんでした。
受験が近づきお互い忙しくなり、喧嘩する暇すらなくなり、夜中の長電話もめっきりなくなりました。彼の声が聞けない夜は寂しくて、電話しちゃおうよ、と送ろうとして躊躇った夜が何度あったか。

それでも彼は私に昔と変わらず好意を伝えてくれていたので、不安になることはありませんでした。
でも、彼に好きと伝えたいと思うことが減っていきました。理由は分かりません。彼は付き合ったときからずっと同じ量の愛情を私にくれていました。それがしんどくなってしまったのかもしれません。

お互い進路が決まって、私は彼と別れることを本気で悩むようになりました。友達に相談したり、彼にこの先どうしたいかと聞くこともありました。彼は変わらず、このままずっと一緒にいて、結婚しなくても2人で居たい、と言ってくれました。

何日も何日も悩んだ結果、私の答えは彼とのお別れでした。

彼にはそんな素振りを見せず、デートの約束を取り付けました。と言っても私の家で過ごす、いつものプラン。

だらだらしてゲームしてYouTube観て笑い合って。
私はいつ本題を切り出そうか、ずっと考えてたと思います。
外が薄暗くなってきた頃、「話さなきゃいけないことがある」と彼に告げ、お互い向き合って座り、彼はただ私を不安そうに見つめていました。

言葉が詰まり、その代わりに大粒の涙が零れました。やっぱりまだ、という考えがよぎったりもしました。

でも、ここまできたのだから、言わないと。

あなたには私よりも相応しい人がいる
お互いまだ幼いからこれからもっとたくさんの素敵な人に出会う、そのときにお互いの存在が邪魔になってしまうのは嫌だ
別れたい

今思えばありきたりで意味の分からないことをつらつらと並べていたと思いますが、そのときの私には、私の感情を説明するにはこの言葉しかなく、丁寧に言葉を選びながら、涙で言葉がなかなか出なかったので、ものすごく長い時間をかけて、彼に伝えました。

彼は驚いたような寂しいような、そんな顔で私を見つめていました。1度は彼の口から、別れたくない、という言葉が出ましたが、私の気持ちを汲み取ったのか、彼も長い時間をかけて、そうだね、と受け入れてくれました。

もう外は真っ暗でした。
最後に彼は私を抱き締めてくれました。
止まっていた涙がまた溢れ出して、もうこれ以上泣けないというくらい、彼の胸でたくさん泣きました。もうこれも最後なんだと思うと、私から別れを告げたはずなのにどうしようもなく寂しくなりました。

それから友達に戻るとか、そういうのも全くなく、連絡を取ることはなくなりました。でも数ヶ月は彼のことを考えて、彼の好きなバンドの曲を聴いて、たまに泣いたりもしました。

時が解決するとはまさにその通りで、一生未練が残るかもと思っていたことさえも忘れるくらい、彼のことを考える時間はなくなりました。

それから何年も経って、色んな恋愛を経験して、恋愛観も変わって、もうあの頃のような恋愛は今の私には絶対に出来ないけど、彼との日々をたまに思い出しては、楽しかったなあ、としみじみしたりします。

好きな人を、人生を捧げてもいいと1度でも思えた人を、無理やり忘れる必要はないんです。

彼を早く忘れたくて連絡先も写真も消したけど、今になって後悔しています。
でもそれは未練とか復縁したいとか、そういうのでは全くなく、ただあの頃のことを思い出として振り返りたいからです。

死にたいと思うほど人を好きになれた、好きでいてくれた、そんな素敵な人をたまに振り返って、懐かしいなあ、と思うことも素敵なことだと思います。


元恋人へ
私の人生の大恋愛はこれまでもこの先も、あなただけだと思います。
たまにあなたの噂を耳にしますが、楽しく過ごしているみたいで嬉しいです。
あなたに降りかかる様々が、あなたの都合の良いものでありますように。

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