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金魚の肺呼吸

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泳ぐこと詠むこと。 水の中から見える世界は狭いか広いか。
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2017年3月の記事一覧

花摘

どちらから来ましたか。
「あの山のむこうに在る田の畔です。」

そうこたえたのは
土筆だったか、蓮華だったか。

風のすきなひとだった。
花摘の横顔は、老婆とも少女とも
年輪と瑞々しい頃を併せ持つ。

あの山のむこうに在る田の畔を知り。
あの山のこちらを吹いている。

月はまるくないほうがいい。
つるんと



盗まれてしまわぬよう空に
引っ掛かけておく。明日も

会えるといい。
月がまるくなってしまう日は少し


怖くなる。不知夜に待つキボウ。

花は割くもの

花は割くもの

浮氷に咲く花の不沙汰に問ふこと勿れ
思ひ連ねて割いたまで

色は匂へど散りぬるを

然うして浮氷に至ります

愛は主観と思ふ。


すれ違うだけのようにみえて、
それは行きかふこと。

辻に留まる流動はなく、
だれも競争者ではない。



能動のはじまりとおわりにあるもの。
愛は主観と思ふ。

怒濤に無みするものあり。のちに
漣に果無むものあり。


僥倖の先にあるもの。
奇禍の先にあるもの。

しとねの端に寄せては返す波のようなもの。



一蓮托生、波は還るもの。それならばと
白波も仰向く。