読書メモ:『イリアス』(ホメロス著、岩波文庫)①

 『イリアス』は、古代ギリシア世界のトロイア戦争を描いた一大叙事詩としてとても有名です。アガメムノン、アキレウス、オデュッセウスといった人物が登場し、大活躍するこの英雄物語は、ギリシア神話の一部として日本でも親しまれています。
 『イリアス』は、トロイア戦役の途中から物語が始まり、途中で終わるという構成になっています。『イリアス』は、戦役終盤の時期、ギリシア軍の主力である主人公アキレウスが戦線を離脱するところから始まります。そこから色々あって、アキレウスは戦陣に戻り再び活躍します。ついには、親友パトロクロスの仇である敵将ヘクトルを打倒し、彼の遺体をギリシア軍陣地に持ち帰ります(『イリアス』には戦士の遺体を奪い合うシーンがよく出てきます。)。夜になって、トロイアの王であるプリアモスが、アキレウスを陣屋を訪れ、息子ヘクトルの遺体を返してほしいと懇願します。アキレウスが遺体の返還に応じ、プリアモスによってヘクトルの葬儀が行われて、物語は終わるのです。
 戦役の原因となる「パリスの審判」も、トロイア陥落を決定づけた「トロイの木馬」作戦も、『イリアス』には描かれません(トロイの木馬については、続編である『オデュッセイア』にて描かれます。)。それは、トロイア戦役という大きなストーリーが持つ物語としての魅力で読者をひきつけ、英雄の活躍と心理描写に焦点を当てて描くというホメロスの意図によるものだったと思われます。
 岩波文庫の上下巻を最近ようやく読み終えたので、感想などを投稿していく予定です。

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