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落語ベストナイン①

    宇野功芳さんという音楽評論家のかたが、その著書のなかで、「交響曲のベストナイン」という面白い文章を書いておられました。

    数ある交響曲の名曲のなかから9曲を選出して、野球のベストナインよろしく、トップバッターから、クリーンナップ、ラストバッターまで、打順のように並べるという企画の文章です。宇野さんはクラッシク音楽をとても愛しておられる一方、プロ野球の近鉄バファローズの熱烈なファンであったことから、このような企画を思いついたのでしょうか。
    ベートーヴェンの「第9」を四番に据えて、ブルックナーやモーツアルトなどの交響曲の名曲を、「瞬発力がある」「スイッチヒッターのようだ」「いろいろなピッチャーが打てるはず」などと寸評を加えながら、打順1番から順に交響曲のベストナインメンバーを並べていく、実に楽しい一文です。
 
 これの真似をして、古典落語の演目でベストナインを作ってみたらどうだろうか・・・ということで、小生が選ぶ「落語演目ベストナイン」を披露させていただきます。どうぞお付き合い下さい。

 選出の条件を次の3つとしました。面白い噺であること(実力)、寄席や落語会でしばしば高座にかかる噺であること(人気と知名度)、野球の打順や守備位置による役割と噺の内容を関連づけて、この打順になるという選出理由(根拠)をつけること。

【 1番    ライト   「大工調べ」  】

    それでは、先ずは1番バッターを考えましょう。トップバッターは俊足巧打のリードオフマン。チームの顔ともいえる位置づけの選手です。実はこのとっかかりから考え込んでしまいました。数ある落語の演目のなかでトップバッターにふさわしい噺はなんだろうかと。
    野球のトップバッターで、皆が真っ先に思い浮かぶのは、やはりイチロー選手ではないでしょうか。イチロー選手の向こうを張るようなスーパースターは、落語の世界では、はたして誰だろうか・・・、何の噺だろうか・・・と思い悩んだところで、はっと思い付きました。いたのです、人気実力を兼ね備えた落語界のスーパースターが。野球が「イチロー」なら、落語は「ヨタロー」。我らが「ヨタロー」で決まり ・・・って、名前が似ているだけか。(イチローさん、ごめんなさい。)

    ということで1番は与太郎噺から選ぶことにしました。数多くあるだろうと思ったら、「道具屋」を初め前座噺は多いけれど、大きな噺で与太郎がでてくる噺はあまりありません。与太郎噺の大ネタといえば、まずは「大工調べ」、その次は「錦の袈裟」でしょうか。そこでトップバッターは「大工調べ」としました。
 溜めた店賃が一両二分と八百だからといって、打率が1割2分8厘ではよろしくありません。本場の川越の芋でも食べて、頑張ってもらいましょう。短気で威勢が言い「大工調べ」のこと、見送り三振した時に主審に「(今の球がストライクだと!)何を言ってやがんでえ、このベラ棒め!」から始まって、打席で大あぐらひっかいて延々啖呵を連ねて主審に毒づき、退場を喰らうのは勘弁してもらいたいですね。

2番バッターは、すんなり思い付きました。これはまた次回。

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