今週のkinologue【7/25-31】
7月最終週だった今週、コロナ感染拡大中でかなり身近なところまで迫ってきていることを感じ、不穏さ漂う東京の空。感染してからの顛末を聞くと、それでも病院を頼れず重症扱いじゃないのか〜という怖さがありながら、もうどうしようもないじゃん!これ以上どうしろっていうのさ!と半ギレもしたくなる。とどのつまり、毎日ぬか漬けとか発酵食品食べて、ゲラゲラ笑って、免疫力アップ!な防衛策しか持ち合わせていない非力さよ。。。
29日(金)で閉館した岩波ホール。もう神保町に言っても岩波ホールはないのだ(建物としてはあるけれど)。言うまでもなく、ミニシアターの歴史は岩波ホールから始まり、1980-90年代の隆盛期も2000年代以降の衰退期も、「岩波ホールで岩波ホールが選んだ映画を観ること」を楽しみにしているお客さんの顔が見える稀有な劇場だった。それは、配給者にとっては有難い。と言いながら、kinologueどころか20年以上の配給キャリアで一度もお世話になったことはなかった(会社は関わったけど自分は担当しなかったというニアミスも含め)。いかに「岩波ホールらしい映画」と無縁だったのか、よくわかる。苦笑。縁遠い分、たまに試写室でお会いした岩波律子支配人やスタッフの方々がとても眩しく見えたのを覚えている。しかし、観客としては幾度となくお世話になった。地下鉄の駅から上がった瞬間にそびえる大きな看板に「今日はこれを観るんだな〜」と確認し、エレベーターから降りて入口を抜け、ロビーや場内の異空間はどこにも変え難い温かい緊張感がある。一人で観に行った想い出がたくさん残っている。中でも、当時『幸福』(私の中では最高のホラー)などの旧作にどハマりしていたアニエス・ヴァルダの新作『落穂拾い』を観て大いに感激したが、それから15年程経って、また同じ劇場で観られたことは奇跡だった。昔の自分を追体験できる劇場は、東京から随分となくなってしまったから。残された劇場の中でも一番なくならないと勝手に思っていたのが岩波ホールだった。そんなノスタルジーは上げればキリがないが、配給者にとって「岩波ホールらしい映画」を上映して貰える場がなくなってしまったことのインパクトはとてつもなく大きい。そして、それを待っていたお客さんたちも、一体どこに受け皿を求めればよいのだろうか。そのままいなくなってしまうとは思いたくない。
と、仕事で関わってないにも関わらず、どよんとしてしまった今週、何より勇気づけられたのはジョニ・ミッチェルの復活。ニューポート・フォーク・フェスティバルにサプライズで登場し披露した歌声やギター(病気で弾けなくなっていたところを覚え直したとか)を奏でる姿に涙がとまらなかった。
音楽に疎いので、大概のきっかけは映画から。 ジョニ・ミッチェルとの出会いは、宣伝を担当していた『ラブ・アクチュアリー』のエマ・トンプソンのシーンで流れる "Both Sides Now"。また出会えて嬉しかった。岩波ホール最後のツイートには「また、どこかでお会いしましょう」とあった。ジョニ・ミッチェルがまたきっと会えると思わせてくれた。そんな夏の日。
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