ニュースの見出し

3日朝、息子から「きのうの飛行機事故、お父なら、どう見出しを付ける?」と質問があった。
「そら担当ページによって違うからなぁ」
「一番メーンので」

「まず、3日付は休刊日明けだ。加えて発生が夕方で、皆さんテレビやネットで視てる。興味があるのは379人脱出だが、新聞の”記録性"では衝突炎上を主にしないといけない」
「そうなんか?」
「阪神日本一かて皆さんテレビで視て知ってたが、阪神日本一て書いた新聞を記念に置いとくやろ。これが”記録性"や」
「ふんふん」
「横に太いので”炎上379人脱出”とやって、前に細く”羽田で日航機・海保機衝突”といく手なんだが、休刊日明けだし。だが大事故の記録性だと、こういう産経風ヨコタテより、クラシックな横ズドンが欲しい」
「んで?」
「いま言うた新聞の記録性や、速報性や社会的関心がバラけて、付け難いネタやな」
「お父でも困るんか?」
「これ難しいで、379人無事脱出も言われへん」
「なんで?」
「そやで、無事ちゃう、けが人いてはる」
「あぁ、言われへんのか」
「間一髪に言い換え……こら中面やな」
「うーん」

「それに、1当と2当が居る。ニュースとして大きいのは客乗ってた日航やが、日航を見出しにすると、悪くないのに晒すことになる、海保を見出しにすると、文句ゆうてくる奴がいる。テレビで視た後、原因が未確定、大事故。コレあんがい難しい見出しやで」
「お父、苦しんでるwww」

「いっそ羽田を主語かな、正月で混雑してて影響大だし、滑走路で当たること自体が異例や。羽田で衝突炎上」
「なるほど」
「答え合わせしてみよか」
「うん」

「まずは業界の優等生………わちゃぁ”接触"使うとるわw」
「燃えとるがな!w」
「何でも接触にせぇ言うてくる上役ようおるねん、俺も言われたわ、JRとか」
「死ぬがな!」
「あぁ、そのうち”ロシアがウクライナに接触”になるぞ」
「そんなアホな」
「何でもクレーム入れて、何でもクレーム聞いて、何も書けんようになるんや」

「次は劣等生。おぉ、羽田衝突事故にしてるわ、流石やな。詳報では日航海保併記、大づかみは羽田主語、主語の定位がしっかりしとる。ここは自民党以外のネタはあんがい良いのよw」
「言うた通りやな」

「次は業界のジャイアン………何やこれ、羽田航空機事故てwww羽田航空て会社あるんかよ」
「え?」
「ええか息子君、世の中には”何の話か分かる地名”があってだな。大津市といえばいじめ」
「そや!それ以外ない」
「鈴鹿といえばサーキット、羽田といえば飛行機や。羽田の後に航空機と付けるセンスが信じられん。webはバイトで回してんかプラウダよ」
「………」
「次は老舗。日航が主語か。客の居る方で行ったが杓子定規かも」

webを見たので実際の紙面はまた違うでしょうが。見出しの実務、こういう感じで胃を痛めるのです。

追記
新聞見出しに求められる記録性・速報性・社会的関心・(今後)分析について、中坊に記録性を説明したくだりは新人教育に使ってもらって良いかも。

あと有ったほうが良いテクとして。
来てる原稿以外に、ネットなどをリサーチして今後の展開を予測、後日ハシラ(事件名)を修正しなくても良いように作っておく技術も要る。
そこまで考えてると、取材記者と対等に立ち、取材記者をアシストする整理になるんだと思う。
時間や分量で出稿部要望を拒否するのが対等な整理じゃないからね。それは組み屋だ。
「ここ、スキッと言い難いんだけど、どうなのよ?」と一緒に方向性つくっていかなあかん。









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