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マンガ10作品を選んだのに人柄が分からない

 マンガが好きです。
 X(ツイッター)にて #好きな漫画10個あげると人柄がバレる  を見つけてツラツラと眺めてました。よくありますね。人柄が分かるっつってね。
 こういうの眺めながら酒飲むの好き。人のポスト見るのめっちゃ面白い。
 「はいはい!!なるほどなるほどー!良いよねぇ(ニチャア」

 ところで、好きを並べるのも気持ちがいいものです。富士山は甲斐で見るより駿河いいっつって。さっそく自分でも並べてみます。

 んで、並べても人柄が分からない。最近ちょっとこれを考えるんです。僕には漫画読みの師匠にあたる方がいまして、その人に導いてもらったところがかなり大きくてですな。その方の審美眼と僕の好みがごちゃごちゃになってるんですね。
 だからちぐはぐな感じがするというか。好きになる「条件」が自分でも言語化できてないせいか、人と熱く語れないような気がしているんですね。
 自分でも不思議なので今回それに挑戦してみますまず、それぞれの作品をみていきましょう。

マンガタイトル
・ジャンル(僕の偏見)
かんじたこと

へうげもの
・茶の湯
発音はひょうげもの。
「(男の子の)かっこいい」を教えてくれる。戦国時代に茶の湯で見出されたわびすきの価値観(作中の、という意味です:フィクション)が、現実の現代日本になじみすぎているので「ん?このエピソードと解釈って史実ですか?それともフィクションですか?」ってなる。それくらいスジが通り過ぎてて感動を覚える。
史実ならなおすごい。
利休切腹の見開き4pで漫画表現のあらたな地平を開いてくれた。

スキップとローファー
・高校生
「この子、描き方によっては嫌な子になってしまう」そんな子が、作者の透明なレンズを通すと愛しくなる。つまり、人を毒気なく見るレンズを貸してくれる。
我が名はアシタカ、まこ×ゆづ、ナオ×ミカの民として男性不要だったのに氏家×八坂が尊い。あと迎井も良い。どうすればよい!?

僕の小規模な生活
・エッセイ
自身のさらけ出し方、内臓よりも深いところを商業誌で見せてくれた福満先生は稀有な存在。鬼才。あと文才もすさまじい。あとがき秀逸、まいど腹がよじれるかと思う。

ワンピース
・大長編ファンタジー
100巻を超えられるのは、人気が落ちないから。ストーリー漫画の商業誌掲載で少年の心を20年以上つかんではなさない真の天才が連載している姿、刮目して見るべし。
「海賊王に、おれはなる」ワンテーマで100巻超。意味わからん。

宝石の国
・ディストピア、または文学
宝石が葛藤したり絶望してる。感情がぐじゃぐじゃになる様や、反転して悟りの境地にいく様が克明に描かれる。常に一筋の光があるため、読者は続きが気になるの。
ポップな表現を多用するため、かえって絶望感が浮き彫りになるのは分かっててやってる?
表現が洒落てる、とても良い。

かの人や月
・いくえみ綾
もはや作者名がジャンルになるほどの名手。ただ、いくえみ先生の作品は行き止まりの恋愛が描かれることもある中で、この作品が特に印象に残るのはとても前向きだからかも。登場人物たちは結婚に向けて動き出していく。明るく希望に満ちていて、とても良い。

ブルージャイアント
・ジャズ
子どもの頃、アニメ映画を一本見た時に味わった感動がある。
「なんだか分からないけど大人の仲間入りをした」
未知なる温度を教えてくれる感じ。言葉にすると陳腐になってしまうようなことが描かれているので、僕には言語化不能。

チェンソーマン
・女の子
ジャンル分け不可、女の子がいちいち最高。それだけなのかな。それだけなのかもしれない。
いや、なんかちがう気もする……でも女の子が最高なんだよおお。
1.パワー、2.ナユタ、3.コベニ

水は海に向かって流れる
・邦画
親子関係のトラウマと向き合う二人。立場や年齢差が取り払われて、徐々に男女になっていくところヤバい。なんだろう。なんかなまなましいんだ。
思い出して胸が苦しくなってきた。だがそこがいい。

花もて語れ
・朗読
百合(百合じゃない)……過去のトラウマを克服して人と関係を築いていくことの尊さを教えてくれるスポ根マンガ。超熱血。
ただし、一見ほのぼの文系マンガの顔をしている。そこが良いのかもしれない。この絵柄でブルージャイアントに匹敵する温度帯にいるのでいかれている。


 どうです。共通点ありました?
 僕にはわかりません。
 そこで、ここからが深掘りしていきたいと思います。

 ブルージャイアント花もて語れでは温度帯について触れていました。
 登場人物の感情の温度が、瞬間的に高くなる作品はけっこう好き。そこにたどり着く過程が克明に描かれているのを好みます。超高温マンガ。
 その点かの人や月水は海に向かって流れるはそこまで高温にはなりません。が、感情の流れについて芸術点がとても高い。なめらかできれい、分かりやすい。それがいいんでしょうな。
 なるほど。スキップとローファーも友情や恋愛感情が芽生える瞬間をコマ撮りしているかのようです。解像度のたっかいカメラみたい。かつ登場人物の温度も高め。これは好きになりますよ。
 さて、感情の流れのコマ撮り、解像度高めといえば福満先生(僕の小規模な生活)です。男の子のしょうもないところを(なぜか)率先して暴露して笑いに換えてくれたおかげで、しょうもない男が許される空気を生んでくれました(生まれてない)。なにより主人公が一発逆転して幸せになる物語は読んでて気持ちが良いです。読んでて幸せな気持ちになるんだ。明日も頑張ろうつって。
 じゃあ宝石の国はどうなんだ、と。あれだけ絶望を描いているわけで、いったいこれまでの「幸せなのが良い」の話はどこに行くんだろう、と。
 これまでの展開では鉱物生命体(宝石)である主人公が「苦悩」「葛藤」「悲しみ」「赦し」「慈悲」を会得して、作中ではそれが「人間の残滓」「神」と呼ばれるようになった。
 作者から読者へ「人間とは?」という強い問いかけがある。僕はそれに胸をうたれている。いわゆる人間賛歌の作品に心が動くのだと思う。
 さあ。
 そうなると説明がつくのがチェンソーマン。デンジ君の欲望を一つ一つ肯定する過程で「人の欲とは」が読者に問われている。
 「で?それが叶ったら君はどうなるの、満足するの?不足なの?」
 「しかも手に入ったものを失って苦しむなら、最初から欲望なんてなかった方がいいんじゃないの?」
 毎回鋭い問いかけだと思う。そのするどさに舌をまいている。
 ではワンピースは。
 無頼漢のルフィが成り上がる面白さでしょう。普段意識しないけど構造はピカレスクロマン。その本質はこれまた「欲望の肯定」「自分の肯定」。
 そしてチェンソーマンと違ってこっちは問いかけがない。
 「知らん、俺はやる、みとけ」
 二十年かけて四皇にのぼりつめたし、これからもさらに昇っていくところが見れる予定になっている。まだ期待させてくれるの……?すごいエンターテインメントだと思う。
 最後にへうげもの。こちらもまあ「欲望」をテーマにしています。もう少しテーマが複雑妙味で、本人の欲望のみでなく「何を美しいと感じるか」や「何に笑いを見いだすか」といった「反応」の方に焦点を当てています。ものすごく高度なテーマだと思います。よくこんなテーマを取り上げて読者をうならせたな。

僕が好きになる作品。
・人物の感情の温度が高い
・人物の感情の動きがなめらか
・読者への問いがある
・人間の欲を肯定する内容である
・高度だと感じるテーマを綺麗に扱う


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