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安くて美味しいワインの選び方

ワインほど、とっつきにくいお酒はありません。

世間一般になんだかお高くとまったお酒、お金持ちのお酒、といったイメージが強く、ワイン好きでも、他人に「好きなお酒はワインです」と言うと気取り屋だと思われそうで、なかなか言えない雰囲気すらあります。

最近はコンビニでも、1,000円〜程度で美味しいワインをたくさん取り扱ってますし、もっと浸透しても良いと思うのですが、まだまだ日本人はワインに抵抗があるみたいです。

映画『ゴッドファーザー』の中で、登場人物がキッチンの棚に置かれたワインサーバーから、無造作にワインをコップに注いで飲むシーンがありますが、本来ワインなんてものはその程度の気軽さで楽しむべきお酒なのです。

ワインの何がとっつきにくいのか。
その原因の一つは、”無数にあるのに選び方がわからない”点にあります。

レストランでもスーパーでもコンビニでも、何を選んだらいいのか全くわからない。
500円のワインと3,000円のワインでは何が違うのか、皆目見当がつかない。

ワインに親しんだことのない人はみんな選び方を知りません。
ワインエキスパートの資格を持っている筆者でさえ、飲んだことのないワインに関しては生産国や品種からなんとなく味わいを想像することはできるものの、半分賭けのような気持ちで買い物カゴに入れることになります。

今回は難しいワインのお話は置いといて、その辺のスーパーやコンビニでワインを買ったり飲んだりするときに、美味しいワインを選ぶコツをご紹介します。


コツその1.ヨーロッパ以外のワインを選ぶ

ワインと言えば、フランスやイタリアというのが常識とされています。
生産量のランキングを見ても
1位 イタリア
2位 フランス
3位 スペイン
となっておりますし、高額なワインといえば大抵フランスかイタリアです。

 ちなみに、我々がイメージするそれら昔ながらのワイン生産国を『旧世界』と呼びます。

一方で「ワインはチリが安くてうまい」「新世界のワインはコスパが良い」なんて話を聞いたことがある方も多いと思います。

『新世界』というのは、ざっくり中世以降にワイン造りが始まった国を指す言葉で、ニューワールドと呼んだりもします。

ヨーロッパの国は旧世界、それ以外の国は新世界、と覚えておけば大体OKです。

我々のような市井しせいのワイン飲みが覚えておけばいいのは
「とりあえずヨーロッパ以外の国のワインを選ぶ」
ただそれだけです。

乱暴なことを言えば、チリや南アフリカ、ニュージーランドの1,500円〜3,000円のワインを買っておけば、大体間違いないです。

日本人がブランドに弱く、ワインといえばボルドーやブルゴーニュだと思っているのをいい事に、あまり美味しくないフランスワインが日本の小売店には蔓延っています。

その点、上記の国々のワインは、ブランド力が使えない分、実力が認められて輸入されるワインが多いのです。

また、味わいの傾向としても、これらワイン新興国のワインは、果実味たっぷりで開けてすぐに良く香り、飲みやすいものが多いです。

コツその2.品種で選ぶ

ヨーロッパ以外の国のワインの良いところは、大抵エチケット(ラベル)に葡萄の品種が書いてあるところです。

これが、ワインを選ぶ第2の基準になります。

ワインの味わいは品種によるところがとても大きいので、代表的な品種の特長をおさえておくことは、ワインを選ぶ上でどうしても避けて通れません。

味わいとしては、ざっくりこんな感じです。
とりあえず赤白4種類ずつ覚えておけば、なんとなく気分や料理に合わせて選ぶことができるようになります。

赤ワイン
カベルネ・ソーヴィニヨン(&メルロー)
→渋い、キシキシする、森の香り、深みのある味わい。メルローはカベルネの渋みを少しふくよかにした感じ。違いが分からなくても怒られない。
ピノ・ノワール
→軽め、華やか、いちごや花の香り。鶏肉や豚肉に。
シラー(シラーズ)
→重め、スパイシーな香り、カベルネ・ソーヴィニヨンより果実味がある。牛肉やジビエにぴったり。オーストラリアではシラーズと呼ばれる。
ジンファンデル(プリミティーヴォ)
→果実味たっぷり飲みやすい、中重口。お肉にもイタリアンにも。イタリアではプリミティーヴォと呼ばれる。

白ワイン
シャルドネ
→色々なタイプがあるが、甘やかな樽の香りがするものが多い。お高い白ワインは大体シャルドネ。
ソーヴィニヨン・ブラン
→草原や柑橘の香り、すっきりしていて魚介にも合う。夏にぴったり。
リースリング
→酸味があって梨っぽい。石油のような香りがあったりなかったり。
甲州
→さっぱりすっきり軽やか。和食にぴったり。

暴論ですが、上記以外でラベルに品種らしきものが書いてある場合、大抵果実味があって飲みやすいものだと思っておけば大丈夫です。

コツその3.値段で選ぶ

ワインは、値段が高ければ高いほど美味しいお酒ではありません。

日本酒やウイスキーならば、傾向として高ければ高いほど万人が美味しく感じられるものが多いのですが、ワインに関しては高ければ高いほどより複雑で難しい味わいになります。

なので、ワインを飲み慣れない人が接待で”オーパスワン(お高いカリフォルニアワイン)”を飲ませてもらったりすると、なんだか渋くて美味しくなかった、なんて感想が出てきます。

1万円以上するようなワインを飲むのは、1,000円〜3,000円のワインをいやと言うほど飲んで、ちょっとワインに飽きてきたなぁくらいの時がちょうど良いです。

これまたざっくりですが、国ごとにこれくらいの値段のワインを選んでおけば8割方大丈夫、といった基準を書いておきます。

□新世界
チリ 1,000円〜2,000円
南アフリカ 1,000円〜3,000円
アルゼンチン 1,000円〜
アメリカ 1,500円〜3,000円
オーストラリア 1,500円〜
ニュージーランド 1,000円〜
日本 2,000円〜5,000円

□旧世界
フランス 2,000円〜4,000円
イタリア 1,500円〜3,000円
スペイン 1,000円〜
ドイツ 1,500円〜3,000円

ワイン好きには怒られそうな基準ですが、大まかにはこんな感じです。
上限を設けているのは、その価格帯を超えると、複雑な味のワインが占める割合が増えてくるためです。
(もちろん、この価格帯の中でも伝統的で複雑な味わいのワインづくりを目指しているワイナリーも沢山あります)

太字がおすすめの国です。
割合とっつきやすくて、ワインを飲み慣れない方でも素直に美味しいと感じられるワインに出会う可能性が高いです。

おわりに

かなり雑な分け方をしましたが、おおむねこの基準に沿って選べばハズレワインを引くことはそうそうないでしょう。

勿論、国や品種だけではなく、気候や土壌、造り手や製法によって全く別物のお酒になるのがワインです。

しかし、◯◯という造り手が云々とか、シュール・リー製法が云々とか、典型的なボルドースタイルが云々とか、そのあたりのややこしい話は飲んでいくうちに覚えれば良いことです。

というか、そんなものは一切覚えずとも美味しいワインは美味しいし、まずいワインはまずい。

ちょっとお高いワインバーなんかに行くと、ベストの胸元に金色の葡萄バッヂを付けて、髪をオールバックに撫で付けた紳士風の男性が
「こちらのワインはかなり個性的な作り手さんで、敢えて格下のAppellation Bourgogne  Controleeとしてボトリングされたワインとなります。ビンテージとしては云々」
などと語り始めることがあります。

こちらは気軽に楽しみたいのに、なんだか雰囲気的に、したり顔で頷かなければいけないような気分にさせられます。

ワインの説明も含めて彼らの仕事ですから、とやかく言うことではありません。
ですが、件のソムリエも、自分で説明したワインをブラインドで飲んだとしたら、造り手もビンテージもわからないのが普通です。

それは当たり前のことで、皆わからないなりにワインを楽しもうとしているだけであって、その点において我々とは何一つ変わりません。

何が言いたいのかというと、ワインとは一切身構える必要のないお酒だということです。
人類史の中で宗教から経済までさまざまな影響をもろに受けて、気づけばおかしな地位を獲得してしまっただけのお酒がワインなのです。

『きつね森の山男』という絵本の中で、山男が木のウロで仕込んだ葡萄酒をふろふき大根と一緒にホクホク楽しむ場面が出てきます。
私は、ロマネ・コンティか山男の葡萄酒どちらかを飲ませてやると言われたら、どうしたって山男の葡萄酒を飲んでみたい、そう思うのです。

おまけ.がっかりワインたち

近年は安くても美味しいワインが多くなったので、あまりハズレを引くことも少なくなったのですが、だからこそハズレワインを引くとなんとも悲しい気持ちになります。

そんな時は、コルクを開けた状態で1時間ワインを置いておき、それでも口に合わなければサングリアや赤ワイン煮込みにしてしまいましょう。
(モノによっては、時間が経つと香りが開いて味わいが丸くなります)

全てがハズレとは言えませんが、ハズレの可能性が高いワインの見分け方をおまけとして記しておきます。

ボルドーの数百円ワイン
このクラスのボルドーワインを飲むのなら、チリのカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを飲みましょう。薄くて渋いだけ、という恐ろしいワインが隠れていることがあります。

ブルゴーニュの一千円ワイン
これもあまりいただけません。酸っぱくて薄いやつが9割です。だったらもう500円奮発して、ニュージーランドのピノノワールを飲んだ方が良いです。

二千円のバローロやバルバレスコ
バローロというのはイタリアワインの王様と呼ばれるワインです。(ちなみにバルバレスコは女王)

品種や産地の制限があるのでおいそれと名乗れるモノではないのですが、逆に言えば条件さえクリアすれば名乗れてしまうので、安いものは本当に美味しくないです。

私は、遠い昔に出張先のワインバーで初めてバローロを飲んでからワインが大好きになったせいか、スーパーでもワインバーでも”BAROLO”の文字を見かけると飲まずにはいられない病気を抱えています。
それが災いして二千円のバローロに手を出した結果、愕然としました。香りが貧弱すぎて、コロナに感染したのかと疑う程でした。
バローロに手を出すならば、小売価格4,000円が最低ラインと覚えておきましょう。

オーガニック一千円ワイン
最近流行りのオーガニックワインも、たまにハズレが潜んでいます。
オーガニックとかナチュラルとか書いておけば、粗悪なワインでも売れてしまうからでしょう。
個人的には、オーガニックワインに手を出すのは色々なワインを飲み慣れてからで良いと思います。
また、オーガニックワインから入ってしまい、亜硫酸塩を使ったワインを一切飲まなくなる人がたまにいますが、これはかなり勿体無いことです。
亜硫酸が添加されているワインを飲むと頭痛がする、なんて人もいますが科学的根拠はありませんし、そもそも亜硫酸はオーガニックだろうとなんだろうと、発酵の過程で自然発生する物質です。
まずは先入観に捉われず、ワインそのものを楽しむことをおすすめいたします。


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