天国はどんなだ
家から少し行ったところに、道の両側が見渡す限りの茶畑がある。必然、霜除けのプロペラも見渡す限り立っている。
墓場のようだな、とここに来る度に思う。
遮るもののない青い空と、淀んだ魂を空に送るプロペラ。そんな絶望的に澄みきったイメージ。
家の近所には柿の畑がある。
柵で囲われた敷地には低く育てられた柿の木と足元に沢山の小花が咲き乱れて、まるで天国みたいだなと思う。柿は誰にも収穫されることなく、ぼとぼとと落ちていく。
若葉の頃に散歩すると青々とした葉っぱや朝露できらめくタンポポ、飛び交う蝶々なんかが見られて、このまま全てが終われば良いのに、とぼんやり立ちすくんでしまう。
春から夏にかけては、こんな美しいものがそこかしこにあるので、いなか暮らしは大変だ。その度にこんな完璧なものが見られたんだからもう後悔はない、全て終わらせよう。と思ってしまう。
いつでも、散歩中の犬にせっつかれて我に返るので、犬は私の命の恩人と言えるかもしれない。
また4月になったら、私は犬と天国を散歩する。
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