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若手プロに知ってもらいたいこと④ なぜプロ団体がこんなに多いのか【後編】(文・黒木真生)

【誤解と噂話の怖さ】

 人間はすぐ誤解するし、誤解した状態で他者を恨んでしまう動物です。
 誤解をする理由の1つは「ちゃんとコミュニケーションできていないケース」です。これは理解力の問題というよりは「勝手に話を追加したり変化させる」ことが原因となります。最初から悪意や偏見を持って相手の発言に臨むとそうなりやすいので気を付けましょう。

 もう1つの誤解の原因は「間違った噂話を信じてしまうケース」です。噂とは他人の無責任な話であって、だいたいはねじ曲がって伝わります。麻雀界の中だけでも、「噂話」が原因で多くの誤解が生じて、それが理由で辞める人がいたり、軋轢が生じたりしてきました。
 誤解を防ぐためには「知る」ことです。
 噂などの誤情報に左右されないためには、当事者同士が直接話すことです。
 おかしいなとか、疑わしいことがあれば、納得いくまで聞けばいいと思います。 
 それでも「この人のことが嫌だ」とか「これは相いれないから一緒にはできない」と思うなら仕方がないと思いますが、だいたいはそうなりません。
 いさかいのほとんどは誤解が原因だからです。

 日本麻雀機構設立後、日本プロ麻雀連盟との間に深い溝ができたのも、もしかしたら「誤解」が原因だったのかもしれません。

【対局中禁煙を決めるはずの理事会で】

 私がプロ連盟に入った頃は、対局中にタバコを吸うのは当たり前でした。むしろ吸わない人の方が珍しかったぐらいです。
 今では考えられないのですが、当時はそれが常識でした。

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 日本麻雀機構設立に際してプロ連盟を辞めた理事たちが参加した最後の理事会で、対局中禁煙について決をとりました。

 すでに千代田区の路上喫煙禁止条例が施行されてしばらくたっており、普通のオフィスビルでは禁煙だったし、モンドでの対局収録も禁煙になっていました。
 
 その前の理事会で対局中禁煙にするかどうかが話し合われており、次回決をとるという話で散会となっていました。

 私は理事ではなく幹事という役割で役員会に参加していました。
 当時の私は愛煙家でしたが「ついにそういう話題になってしまった」というのがホンネでした。本来、もっと早く禁煙にするべきだとは思っていましたが、自分が吸いたいから自分からは言わなかったのです。ただ、誰かが言い出したら賛成しようと思っていました。私は、そういう自己中心的なずるい人間なのです。

 正直な話をすると、当時の私はプロ連盟のために何かしようという気があまりありませんでした。
 何かをしても見返りはないし、プロ連盟だけじゃなく業界全体で頑張らないと意味がないとも思っていました。
 麻雀企画集団バビロンの仕事だけで手いっぱいというのもありましたし、当時の若手理事の多井隆晴プロ、河野高志プロらが頑張って積極的に意見を出したりしていましたので、理事ではなく幹事である私が出しゃばってもしょうがないとも思っていました。
 
 彼ら2人を理事に推薦した森山茂和プロも、選手としての活躍や理事としての頑張りを評価していて、次世代のプロ連盟は彼らが担っていくのだろうと、そう考えていたと思います。そして私もそう思っていました。

 ところが「彼らは辞めてしまうのだろう」という状態で迎えた最後の理事会で、ちょっとしたいざこざが起きてしまったのです。

 「対局中禁煙ルール制定」に賛成の方。反対の方。

 それぞれ挙手をして決をとります。

 機構に行きそうだと思われていた人の多くが「タバコOK」の方に手を挙げました。

 しかし、私や滝沢和典プロなど、愛煙家だけど「しゃあないなもう」と「禁煙するべき」の方に手を挙げた人間が多かったので、この時点で決をとれば「禁煙ルール制定」で決まりでした。
 つまり、以降、プロ連盟では対局中禁煙となったはずでした。

 しかし、ここで当時副会長だった森山さんが異議を唱えます。

 「ちょっと待ってください。いま幹事も挙手していてそれを数えていましたから無効だと思います」

 そうでした。私や滝沢は幹事でした。議決権は理事にしかないので、手を挙げても意味がなかったのです。
 
 たぶん、そのままスルーしても良かったのでしょうが、森山さんはそういうスルーができない性格なのです。
 
 そして森山さんは言いました。
 
 「これから辞める予定の理事の方も、最後まで連盟の理事としてまっとうな判断をしてもらえると信じています。もう一度決をとりなおすので、ちゃんと判断して挙手してください」

 要するに「禁煙ルール制定」って言うのが常識的な判断なのに、わざわざ「タバコOKのままでいいじゃん」と主張するのはおかしいでしょと。しかも、もうすぐ日本麻雀機構設立のために辞めちゃうんでしょと。立つ鳥跡を濁さずって言うでしょうと。

 森山さんは、そういう意味で、ふたたび採決を要求したのでした。
 
 しかし、結果的には「タバコOKのまま!」となりました。
 先ほど「タバコOK」に挙手した人は、変わらず「タバコOK」だったので、幹事がいなくなった分、「禁煙にするべき」と「タバコOK」が逆転したのです。

 結果、プロ連盟の対局は半年間だけ「タバコOK」が続きました。

 森山さんが机を叩いて怒りました。
 「よくわかった。キミらの考えがよくわかったよ」

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